君にアイスを買ってあげるよ JOY
森田さんが難しい顔をしている。眉間にしわが寄っているので、商談が難しいのかもしれない。
機嫌の居所の悪い人はそっとしておくにかぎる。そそくさと側を通り抜け、席につくと、森田さんから声がかかる。
「ひどいぞ橋田。俺が落ち込んでいるのに、スルーするなんて」
「そっと見守っていただけです。森田さん『負けないで』」
「橋田は真矢みきじゃない。励ましてくれるんなら、理由を聞かないか」
机に片肘をついた森田さんが、椅子ごと体を向ける。悔しいけど格好良く見えるのは言わない。容姿が良くて業績もいいのに、僕に対しては意地悪だからだ。
「はい聞きます。どうしました」
「あっさり言うなよ。橋田、食器を洗う洗剤、あれ何て言う」
「台所洗剤…とか」
自信がなくて、上目遣いになる。対して森田さんときたら、顔の前でブンブン右手を振る。
「違う、こう何か、商品名とかで言わないか」
「えーと…キュキュット?」
ばん、と森田さんが机を叩く。
「このエセ平成人め~ギリ昭和なくせに」
「別に平成生まれなんて言ってません。なに聞いときながら文句付けてるんですか」
森田さんはぐっとうなだれる。机の上の手はぐぐっと握られてかすかに震えている。
「平成生まれは、食器洗剤のこと、ジョイって言うんだよ」
「どこ情報ですか。それ」
「総務の川嶋さん。川嶋さんとこの子は、そう言うんだとさ」
ふと意地悪がしたくなる。
「森田さん、なんて言ったんですか」
「あーーーチャーミーグリーン」
それじゃ森田さんが落ち込んでいたのは感覚が古かったからなんだ。
なんだかおかしくて、僕は大声で笑った。
「橋田め覚えてろよ」
森田さんは手当たり次第、まわりに声をかけはじめた。
「食器洗剤のこと何て言う?」
……………………………………
会社で昨日流行ってました(笑)
チャーミーグリーンのCMかわいくて好きでした。あとママレモンというのもあったのですが、最近見ていなかったのでもう売っていないのかとドラッグストアに寄って見てみました。
そうしたら、ありました!黄色いボトルで600mlくらいの大容量。価格お高め348円。いつの間にか高級品になっていました。
機嫌の居所の悪い人はそっとしておくにかぎる。そそくさと側を通り抜け、席につくと、森田さんから声がかかる。
「ひどいぞ橋田。俺が落ち込んでいるのに、スルーするなんて」
「そっと見守っていただけです。森田さん『負けないで』」
「橋田は真矢みきじゃない。励ましてくれるんなら、理由を聞かないか」
机に片肘をついた森田さんが、椅子ごと体を向ける。悔しいけど格好良く見えるのは言わない。容姿が良くて業績もいいのに、僕に対しては意地悪だからだ。
「はい聞きます。どうしました」
「あっさり言うなよ。橋田、食器を洗う洗剤、あれ何て言う」
「台所洗剤…とか」
自信がなくて、上目遣いになる。対して森田さんときたら、顔の前でブンブン右手を振る。
「違う、こう何か、商品名とかで言わないか」
「えーと…キュキュット?」
ばん、と森田さんが机を叩く。
「このエセ平成人め~ギリ昭和なくせに」
「別に平成生まれなんて言ってません。なに聞いときながら文句付けてるんですか」
森田さんはぐっとうなだれる。机の上の手はぐぐっと握られてかすかに震えている。
「平成生まれは、食器洗剤のこと、ジョイって言うんだよ」
「どこ情報ですか。それ」
「総務の川嶋さん。川嶋さんとこの子は、そう言うんだとさ」
ふと意地悪がしたくなる。
「森田さん、なんて言ったんですか」
「あーーーチャーミーグリーン」
それじゃ森田さんが落ち込んでいたのは感覚が古かったからなんだ。
なんだかおかしくて、僕は大声で笑った。
「橋田め覚えてろよ」
森田さんは手当たり次第、まわりに声をかけはじめた。
「食器洗剤のこと何て言う?」
……………………………………
会社で昨日流行ってました(笑)
チャーミーグリーンのCMかわいくて好きでした。あとママレモンというのもあったのですが、最近見ていなかったのでもう売っていないのかとドラッグストアに寄って見てみました。
そうしたら、ありました!黄色いボトルで600mlくらいの大容量。価格お高め348円。いつの間にか高級品になっていました。
FULL MOON 夜を駆ける 35
うだうだと考えていても、一向に解決なんてしない。
相談出来る相手は父しかなく不在だ。もっとも父にしても、あたしが虎になったと気づかない場合も有り得る。
こればかりは会わないと解らない。
スポテッドフォーンの言葉が解ったように、あたしの言葉も解ってほしい。
虎の体では家事など何も出来ず、ただしっぽが自分の意思で動くのを眺めていた。
ゆらり ゆらり。
かなり意識がぼんやりしていたんだと思う。
戸の開け閉めの音がしたのに、警戒心をおこさずに、あたしはまだ床に寝そべっていた。
軽い足音がしてソウニャが顔を出すまで…あたしはまだ自分の状況を飲み込めなくて、ぽかんと見つめあった。
先に動いたのはソウニャのほうで、悲鳴をあげながら後ずさる。
「きゃああああっ」
ソウニャが抱えていた笊が落ち、茸が飛び散るのが、酷くゆっくりに感じた。
茸が床に落ち、弾けるまでの間にあたしは身を翻して裏口から外に跳び出した。
相談出来る相手は父しかなく不在だ。もっとも父にしても、あたしが虎になったと気づかない場合も有り得る。
こればかりは会わないと解らない。
スポテッドフォーンの言葉が解ったように、あたしの言葉も解ってほしい。
虎の体では家事など何も出来ず、ただしっぽが自分の意思で動くのを眺めていた。
ゆらり ゆらり。
かなり意識がぼんやりしていたんだと思う。
戸の開け閉めの音がしたのに、警戒心をおこさずに、あたしはまだ床に寝そべっていた。
軽い足音がしてソウニャが顔を出すまで…あたしはまだ自分の状況を飲み込めなくて、ぽかんと見つめあった。
先に動いたのはソウニャのほうで、悲鳴をあげながら後ずさる。
「きゃああああっ」
ソウニャが抱えていた笊が落ち、茸が飛び散るのが、酷くゆっくりに感じた。
茸が床に落ち、弾けるまでの間にあたしは身を翻して裏口から外に跳び出した。
