ふんわりシフォン -55ページ目

FULL MOON 夜を駆ける 45

ふんと顔をそむけたスンホンの父親は、こちらを嘲笑うかのように首を振った。

「おらぁあんたを見損なったよ。子供がどうにかなっちまったのに捜しにもいかねぇ。そのうえ何だい虎なんか庇いやがって。そんな畜生、ぶっくらわしてくれらぁ」



拳で卓を叩く鈍い音が、部屋に響く。子供ならこんな脅しにだってびくびくと首をすくめるだろう。

小さくなったスンホンが、言われるがまま父親に従うのが見えるようだった。



ドンと鈍い音が足元からおきる。父が床を棒で叩いた音だ。

「お前ばかりが父親だと思うなよ
スンホンばかりが子供だと思うなよ」


あきらかな怒りの滲む声音に身がすくむ。父の怒る姿を見たことはなく、怒りの矛先が自分でないことが解っていても、やはり恐ろしい。




「俺だって父親だ。近くに住むスンホンだって、自分の子供みたいに面倒を見てきたつもりだ。
お前さんはスンホンが居なくなって初めて騒いでいるが、生きていた時はどうだ動物みたいにスンホンにあたっていたじゃないか。

スンホンは優しい。優しすぎて母親のホンサムを取りに行って帰れなくなったのだよ。知ってるのか、スンホンがそこまで思いつめていたことを。

スンホンが居なくなったのには、お前さんの責任もあるだろう。家を顧みないお前さんのために、スンホンはよく手伝っていたじゃないか。夕餉の支度をするために薪を集めたり、食べられる山菜を集めていただろう。

お前さんがどれだけスンホンのこと…ほかの子供のことを知っていると言うのか」


父の怒りは、そばにいる あたしにも ちくちくとして針のように刺さる。



「御託を並べていやがる。お偉い先生みたいじゃねえか。ふざけやがって」


「ふざけている…だと」


ぴくりと父の片眉があがる。ずっと鼻水を吸ってスンホンの父親が話をつなぐ。


「ホンサムなんてスンホンは持ってねぇよ…遺体んとこにはなかった」


「子供がそんなに簡単に見つけられる訳ないだろう。大人でさえ見つけられないのに…ホンサムを見つけに行く以外に子供の群れから離れる理由なんてなかった。ハンはいい兄で果実や茸をよく見つけるし、独り占めなんてしない。スンホンにも十分に分け与えたはずだ」



知っているのかと問われて、スンホンの父親は鼻じらむ。



「おらぁ見てねぇことは信じねぇ」


「なら聞けばいい。ハンもソウニャも嫌とは言わんだろうよ」

「へっ あいつらの何が信じられるって言うんだ。そいつら、うちのスンホンを見捨てやがったんだ」

ぎりぎりと父が歯を食いしばっているのを感じる。放っておいたら危険なほど怒りを放出している。

ナナカマド

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お話の中にナナカマドをあげていますが、探していたら見つけたのがこの木(笑)

冬の空に赤い実が綺麗です。


幹の陰に、鳥除けの風船がぶらぶらしています。落ちていた実を貰ってきたのですが、その日は凄く硬くて、実が硬いでいいかな、実際ネットでもそう書かれていたし…と思っていましたが、いくつか見るうち、鳥が食べるとあったので、よほど食べ物がないのね、皮だけでも食べたいのかなと思っていました。



書き出して数日。
ふたたび実を触ってみたら、柔らかくなっていました。水分が飛んで熟したのかもしれません。この状態なら鳥も喜んで食べることでしょう。



北海道の旭川では市の木にもなっているナナカマド。
真っ赤な実に 積もる雪はまたとても映えるものですねo(^-^)o

FULL MOON クリスマスまでに 2

抱えられて歩いていくと、だんだん家のない方へと向かっていく。


「珍しい物を見つけたんだ。気に入ると思うよ」


朔也の見上げた先には、真っ赤な木が見えた。紅葉の終わったこの時期に赤い……



それは赤い実をブドウのように房にした木だった。葉っぱは落ちてしまって、赤い実だけ木に残っている。


「キレイでしょ」

『ナナカマドね』

「ずっと見たいと思ってたんだ。東北や北海道では街路樹にも使われるし、紅葉情報でも出てくるから北のほうでは普通に山にも生えているんだよね。どこか近場にないかと思っていたんだ」



木の大きさは5メートル、幹の直径も30センチメートルはあった。

木を見上げていた朔也が、くすりと笑った。



「この木もクリスマスバージョンみたいだね。見つけた時には、こんな飾りはなかったんだ」

梢の近くで風に揺れているのは、鳥除けの黄色い目玉だったし、銀と赤に塗り分けられた鳥除けテープが、キラキラと光を弾いていた。



『ナナカマドの由来は俗説だけど、七回竃にくべても焼けのこるくらい硬いからついたんでしょう。鳥が食べたりするの』

朔也が屈んだので、あたしは腕から擦り抜ける。屈んだ朔也は、落ちていたナナカマドの実を拾って、あたしに見せてくれた。



一粒、指でつまむと、赤い皮を破って黄色い果肉があり、茶色い小さな種を何粒も抱えていた。

「もっと固いかと思ったけど、意外に柔らかいね。実は渡り鳥が食べるそうだよ。ネットで調べてみたら、実が固いとしているものと、木材にした際の木が燃えないとしているものがあったから、辞典を見てみた。辞典では、木材が硬くて腐食しないため細工物にする、とあったよ」

『鳥に食べてもらえなかったら、こんなに実をつけても意味ないものね』

クリスマスカラーである赤、緑、白にはそれぞれ意味がある。

赤は愛情
緑は常緑樹のモミの木に代表とされる、永遠の命
白は雪のような純潔



普通の恋人たちの訪れる、ロマンチックなツリーやイルミネーションではなく、ナナカマドを見せに連れて来たのも朔也らしかった。
人目につく場所で猫に話しかけていたら、変な人だと思われるだろう。あたしも普通の猫のふりをしなくちゃいけないから、話すことができない。


ふいに朔也があたしを抱きあげる。

「ナナカマドの花言葉は「慎重」「用心」「私と一緒にいれば安心」なんだ」

ギュッと抱きしめた耳元でボソリと言った。



「街に飾られるでっかいキラキラしたツリーも、ライトアップされる木々も大好きだけど、ここでなら…二人でいられる。本当の自分でいられる。

ずっと一緒にいよう。オレが絶対守るから。そう思うのはお前だからなんだ。他の誰かじゃダメなんだ」



どんな顔をしているのか気になるけれど、強く抱きしめられていて見ることが出来ない。触れている耳があつい。

『あたしが先に前の地の守護者に会ったのよ。先にこの生き方を選んだのは、あたしよ』

「うん」

朔也は首筋に顔をうずめてキスをした。

「この姿も好きだけど満月の時のほうも好き…今日は満月じゃなくて残念」

かあっと体が熱くなる。満月の時だけ、あたしは本来の人間の姿に戻れるからだ。

『満月じゃなくても いい。一緒なら』



「じゃあ次の満月まで待ってて。どれだけ好きか体全部に教えるから」

『うん』







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この話だけでも、読めるようにしたつもりですが、FULL MOON 朔也×黒猫の短編でした。最後は恋人同士らしく……なったかな。家族で恋人達で過ごすクリスマスは人との繋がりを感じる日ですね。

メリークリスマス

そしてハッピーバースデーキリスト様。世界で一番祝福されるお誕生日です。

キリスト教ではありませんがお祝い申し上げます。