ふんわりシフォン -34ページ目

言葉

言わないからって

気持ちがない訳じゃない

現わさない

気持ちは

形を変えて

君へとつながる

Focus 1

照明が熱いくらいの室内で、シャッターが切られ、一瞬が焼き付けられていく。



シャッターごとにポーズを変える彼女達に光を送るのが、オレの役目。

媚びを売るような女らしさが溢れるかえる。



「いいよー玲奈ちゃん達、衣装直してもらって」

毎月発売されるファッション雑誌には何点もの写真が掲載される。雑誌編集者とスタイリスト、ヘアメイク、カメラマンのチームで片っ端から写真に挙げていく。オレはそのカメラマンの助手をしていた。流行り廃れはあっても食いっぱぐれないカメラマンとして。



「礼治さん、お疲れさまです」


タバコを探して胸ポケットに伸ばした手を止めて、オレの差し出したコーヒーを口にする。

上目遣いにオレを見てコーヒーを啜るこの人は、オレのボス。

癖のある黒髪が、外人のように掘りの深い顔を覆っている。



「ここ禁煙だっけ」

「今やどこも禁煙ですよ。止めるって言ってませんでしたか」

「気のせいじゃない。言ったっけ」

仕方ないと言うようにコーヒーを啜る。

「やだなぁ。コーヒー飲むと吸いたくなっちゃう」



とんとんと指は灰を落とす仕種をする。



「そんなこと言ったってダメです。すぐに衣装変えて撮影ですよ」

「はーそこんとこツライ。給料あげてくんなくちゃやってらんない」

「礼治さん、女の子の扱い得意でしょ」

「そんなことないさ。玲奈ちゃんも結月ちゃんもオレよか一回りも違うんだから。おぢさんは相手になんかされないんだから。圏外だから、いいんだって」



そう言って、また紙コップからコーヒーを啜る。
この軽いとも言えるそぶりが、モデルに警戒心を与えずに自由な撮影になる。モデルをその気にさせるトークだって、もちろんスキルのうちだ。

そこそこ忙しい礼治さんは思い出したかのように、オレに言った。



「ねぇ結輝バイトしない?」

なんだか

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なんだか好きな

なんだか惹かれる



自分の見つけた

好きのかけらをかざして

よーく

よーく

見つめてごらん



ほら もっと好きになってる






写真はスイトピー。
青、白、ピンクさまざまな色を取り揃えております。
スイトピーの香りが好き。と言ってどれだけの人に『ああ、あの香りね』ってわかってもらえるのかは謎なのですが、淡くて優しい香りなのです。

種の袋には、いい香りがしますと書かれているので、少なくともガーデナーさんにはスイトピーの良さが理解されているのだなと思っています。


写真を撮った日には青が全盛期。今は花よりも種のさやが多くなりました。食べてもいいのだけれど、やっぱり来年も花の香りを楽しむために収穫を待ちます。