ふんわりシフォン -33ページ目

お知らせ

このブログを見に来てくださる方々へ



とても個人的なことなので、書くのも心苦しいのですが

本日 未明 父が亡くなりました。



食道ガンの手術をして入院していたのですが、持ち直すことなく永眠いたしました。

ここに至るまで、様々あったのですが、それはまたの機会に書くかもしれませんが、書いておくだけかもしれません。





しばらく父のそばにいようかと思います。

あまりまめでないので、ぺたなどは なかなかお返し出来ずにいますが、嬉しく拝見しています。

また
遊びに来てください。





ひとつだけ

いつも病院から帰るさいに『帰るね』と言えなくて『また来るから』そう言っていました。
昨日、そう伝えて父を見ると目尻に涙を浮かべていました。
意識の混濁、熱、麻痺、人工呼吸機などいろんなものが、わたし達の間にありましたが、父にはわかったのでしょう。

わたしも最後かと覚悟しました。





電線を伝って
父に会いに行っていました。





またお会いできるまで
しばしのお別れです

電線をたどって

電線をたどって

ずっとずっと

走ればつくんだよ



高い鉄塔が

連なる先にいるから

会いにおいでよ



眠りながら

待っているから



君はきにしないよね

君が来るまで

ここにいるよ

Focus 2

「バイトですか」

この撮影もバイトみたいだな、と思いながら先を促す。



「実は友達が担当してたブライダル撮影なんだけど、そいつ山に行くって言い出してさ。帰ってくるまでに入れた仕事を代わりにこなして欲しいんだよね」

「ずいぶん唐突なんですね」

「もともとそいつは山岳写真撮ってたんだけど、それで飯喰えなくってさ。ブライダルは生活のためだったんだよね。ただ今回いい条件で参加できるパーティーがあって、後先考えずに行くことにしやがったのよ」


軽く笑いながらだけれども、オレが断るなんて考えてもみないそぶりだ。



「ブライダルはさ、基本土日祝日だから、こっちと被ることないし、結構こっちもいいんだぁ」



にやりと指でわっかを作る。



「結輝のスキルアップにもなると思うよ」



考える間をくれるように、またコーヒーに口をつける。いつも金欠でいるオレには有り難い申し出だか、多少不安要素もある。



「どうせブライダルなんて幸せな奴しかいないさ。自分がいい表情を引っ張り出す必要なんてない。シチュエーションだけ整えてほっときゃいい。受けてくれるか結輝?」



普段使わない有無を言わさない眼光がある。この時ばかりは、仕事のボスの顔をした。



「了解です。仕事に入る前にその人の作品を何点か拝見させて貰えないですか。参考にしたいので」

「あー。いーよ。そいつが仕事してんのはココ。ブライダルの資料として見本のアルバムがあるから、覗いてくるといいよ」



人差し指と中指に名刺を挟んでこちらに差し出す。

手を出して受け取りながら、そのお菓子みたいに甘い名前の印刷された名刺に、ちらりと不安がよぎる。

とりあえず、覗くだけでも行ってみようか。何と言っても報酬がいいと言うのは、たまらない魅力がある。




電話を入れてから向かった場所は、大使館の建ち並ぶ一角でもともとはどちらかの大使が使用していた邸宅を譲り受けて、ブライダルなどのパーティー用として使用している建物だった。
使っているタイルなども素材を厳選した跡が窺え、よい作りだと感心する。来訪の意図を告げると、隅に用意されている応接セットへと案内された。すぐに飲み物の好みを尋ねられ、マホガニー色のテーブルへ届けられた。

丹念にデザインされ、嵌め込まれたガラスから庭を眺めていたら、スーツ姿の女性から声がかかった。



「高階様、お待たせしました。品川と申します、本日はよろしくお願いいたします」

髪をまとめて結い、きりっとした美人だった。正確に言うなら、顔立ちを補って余りあるくらい立ち居振る舞いの美しい人だった。立ち上がり挨拶を交わし、お互いに席に落ちついてからは、こちらから砕けた言葉を意識して使う。



「先程電話したとおり、こちらで契約している山並鉄也さんの代わりとしてブライダル写真を担当するのですが、参考までに山並さんの写真を見せてもらえないでしょうか」



品川さんは頷いて、二部のアルバムを差し出した。



「山並さんは人柄の優しい方で、ブライダルとはいえ熱心にカメラを構えて撮影していらっしゃいます」



同じようなアルバムでありながら、開いた印象は全く違う。

明るく華やかな笑顔溢れる式と、しっとりと上質な時間を楽しむ落ち着いた式。
写真を撮った場所から、シュチュエーションまで全く違い、ブライダル写真の型などないのだと思い知らされる。それでもなんとか共通点はないのかと探すと、幾つかのパターンが見えてきた。



山男だと聞いていた割に、繊細なカットをものにしている。新郎新婦への、スタッフからの気遣いに溢れた仕草が収められた一枚には温かな気持ちが沸き起こった。



「写真を見ると、あなたがたスタッフと山並さんの信頼関係がよくわかります」



ちらりと品川さんも写りこんだ写真では、彼女もとてもいい笑顔を向けていた。
白い肌をわずかに染めて品川さんも頷いた。



「私共も山並さんの腕を信頼していますし、彼以上のカメラマンを探すことはできません。彼もそのことを心配していたのですが、お引き受けいただけますでしょうか」



期待をこめた視線を無下にすることはできない。

「いきなり山並さんのレベルは難しいのですが、時間が空いた時にあちこち見て回ってもいいでしょうか。それでいいならお受けします」



ほっと息をついてから、品川さんは笑って手を差し出した。



「それならいつでも。当日はご新郎、ご新婦を支えるスタッフとしてお互いに研鑽いたしましょう」

あたたかな小さな手を強く握りしめた。

「仲間としてよろしくお願いします」



品川さんも営業ではない笑いを浮かべた。