クリスマスに
日付が明日になれば。
イエス・キリストの誕生日。
全世界の人が知っている誕生日。
二千年も前から続く習慣。
ツリーを飾り、陶器のマリア様三賢者はキリストの誕生を待つ。
星に導かれ鐘の音とともにあらわれる。
誰もが優しくなれるように。
誰もが自分以外の大切な人を思う日に。
特別な一日だと。
心をこめて、言葉を贈ろう。
ささやかなわたしの思いを。
イエス・キリストの誕生日。
全世界の人が知っている誕生日。
二千年も前から続く習慣。
ツリーを飾り、陶器のマリア様三賢者はキリストの誕生を待つ。
星に導かれ鐘の音とともにあらわれる。
誰もが優しくなれるように。
誰もが自分以外の大切な人を思う日に。
特別な一日だと。
心をこめて、言葉を贈ろう。
ささやかなわたしの思いを。
月が満ちるまで ともしび 11
空調の効いた車内は暑いくらいに暖かく、疲れとお腹がいっぱいで眠くなりそうだった。
「……母さん、ごめんなさい……」
車の運転をしている母さんには、向かい合って話すよりも楽に謝ることができた。
僕だけに注目されていないから、そう言えたのかもしれない。
「ドライブしよっか、シュウ」
家とは違う方向にハンドルをとりながらそう言った。
街灯が流れていく。
大きな川を渡る橋は等間隔に街灯が並んで綺麗だと思った。
水面にも明かりが等間隔で並び、流れに揺れて光の尾をひいている。
「花瓶、大事にしてたのに、割ってごめんなさい」
「大事にしてても、いつか壊れるから…そういうタイミングだったのね」
お互いに前を向いて話しながら、お互いを気にしていた。
なんだか、不器用なようで今の僕たちにあっているようだった。
「シュウは、あたしに似てるから凄く心配になるのよ」
意外な気がして母さんを見た。
「頑固だから、言い出したら聞かない」
ふふっと笑って、ちょっと僕を見た。
「別に兄弟で同じ学校じゃなくっていいのよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんの考えがあってあそこにしたんだから、シュウはシュウで行きたいとこで。
それなのにお兄ちゃんと比べちゃったね」
わかってたんだ…
なにが悔しいのか。期待にそえない自分に苛立っていたのを…
いい子でいるのは大変で。
「シュウがお兄ちゃんと同じ所を受験するって言ったときびっくりした。
お兄ちゃんは将来、何になりたいか知ってる?」
「……うん。お医者さんだね。子供の医者だって」
「お兄ちゃん、喘息でしょう。何度も入院して、病院で何日も過ごして…出会っちゃったんだね」
「佐藤先生だね」
そうそう、うなづきながら母さんも話す。
「お兄ちゃんの運命のヒトだからね。憧れて…くっついて回ってた
佐藤先生の進んできた道を、お兄ちゃんは歩こうとしてる。
それはお兄ちゃんの決めたことで、シュウにはシュウの決める道があるはずだから」
急がなくていい。
いつか、本当にやりたいことに出会えるのだから。
そう言ってくれた。
夢うつつに、でもはっきり覚えてる。
やりたいことが何なのか
それがわかるのは何時なのか、まだ分からない。
でも、前より楽になって。
下がるばかりだった成績も、上に向くようになった。
そして冬のある日、僕は受験した。
人生、初の受験。
ガチガチに緊張して…なんとか回答欄を全部うめたのは覚えてる。
そして。
シュウが頑張っていたから、受験はやめなさいって言えなかった。合格してよかったわぁ。
母さんはそう言った。
でも進学はしなかった。
決めるのはシュウだからね。そう言ってくれた。父さんも、母さんも。
僕は、お財布に優しい公立中に進学した。
本当にしたいことがわかるまで、いろんな事をすることにしよう。
「……母さん、ごめんなさい……」
車の運転をしている母さんには、向かい合って話すよりも楽に謝ることができた。
僕だけに注目されていないから、そう言えたのかもしれない。
「ドライブしよっか、シュウ」
家とは違う方向にハンドルをとりながらそう言った。
街灯が流れていく。
大きな川を渡る橋は等間隔に街灯が並んで綺麗だと思った。
水面にも明かりが等間隔で並び、流れに揺れて光の尾をひいている。
「花瓶、大事にしてたのに、割ってごめんなさい」
「大事にしてても、いつか壊れるから…そういうタイミングだったのね」
お互いに前を向いて話しながら、お互いを気にしていた。
なんだか、不器用なようで今の僕たちにあっているようだった。
「シュウは、あたしに似てるから凄く心配になるのよ」
意外な気がして母さんを見た。
「頑固だから、言い出したら聞かない」
ふふっと笑って、ちょっと僕を見た。
「別に兄弟で同じ学校じゃなくっていいのよ。お兄ちゃんはお兄ちゃんの考えがあってあそこにしたんだから、シュウはシュウで行きたいとこで。
それなのにお兄ちゃんと比べちゃったね」
わかってたんだ…
なにが悔しいのか。期待にそえない自分に苛立っていたのを…
いい子でいるのは大変で。
「シュウがお兄ちゃんと同じ所を受験するって言ったときびっくりした。
お兄ちゃんは将来、何になりたいか知ってる?」
「……うん。お医者さんだね。子供の医者だって」
「お兄ちゃん、喘息でしょう。何度も入院して、病院で何日も過ごして…出会っちゃったんだね」
「佐藤先生だね」
そうそう、うなづきながら母さんも話す。
「お兄ちゃんの運命のヒトだからね。憧れて…くっついて回ってた
佐藤先生の進んできた道を、お兄ちゃんは歩こうとしてる。
それはお兄ちゃんの決めたことで、シュウにはシュウの決める道があるはずだから」
急がなくていい。
いつか、本当にやりたいことに出会えるのだから。
そう言ってくれた。
夢うつつに、でもはっきり覚えてる。
やりたいことが何なのか
それがわかるのは何時なのか、まだ分からない。
でも、前より楽になって。
下がるばかりだった成績も、上に向くようになった。
そして冬のある日、僕は受験した。
人生、初の受験。
ガチガチに緊張して…なんとか回答欄を全部うめたのは覚えてる。
そして。
シュウが頑張っていたから、受験はやめなさいって言えなかった。合格してよかったわぁ。
母さんはそう言った。
でも進学はしなかった。
決めるのはシュウだからね。そう言ってくれた。父さんも、母さんも。
僕は、お財布に優しい公立中に進学した。
本当にしたいことがわかるまで、いろんな事をすることにしよう。
月が満ちるまで ともしび 10
おばあちゃんから母さんに電話してくれた。
電話口から漏れてくる声は聞き取りづらく、それはただ電波が悪いってだけじゃなく、母さん自体取り乱しているからだという気がした。
すすり泣くような声。
替わってくれ、と言われ受話器を受け取る。
「シュウ、そこから動かないで待ってなさいよ!ほんとに……ほんとにバカなんだから……」
通話口から漏れる泣き声。
僕は、母さんを泣かせてしまった。
ちくちくと胸がいたい。
「すぐ迎えに行くから、そこにいてね」
「うん。わかったよ」
迎えに来た母さんは、何度も頭を下げた。
「本当にお世話になりました。また改めてお礼に来ますから」
「そんなことないから、心配しないでいいのよ。またおいで、柊也。風花も楽しかったみたいだし。仲良くしてやってね」
また人形みたいになった風花をくっつけて、おばあちゃんが言った。
「また遊びに来ていいの」
にっこり笑って
「あぁ、好きな時おいで。今度はきちんと言ってくるんだよ」
母さんも、仕方ないという顔をしていた。
車に乗って窓を全開にする。
「おばあちゃん、またね。風花、またね」
見えなくなるまで手を振った。ふたりも僕を見送って手を振ってくれた。何度も何度も振られる手。
僕のために。
そう思ったら、とてもありがたかった。
こんな僕のために、ふたりはたくさんの心配と、たくさんの食べ物を用意してくれた。
血の繋がりがなくても、多分同じことをしてくれた。
そして。
機会があったなら何度でも同じことをするんだろう。
電話口から漏れてくる声は聞き取りづらく、それはただ電波が悪いってだけじゃなく、母さん自体取り乱しているからだという気がした。
すすり泣くような声。
替わってくれ、と言われ受話器を受け取る。
「シュウ、そこから動かないで待ってなさいよ!ほんとに……ほんとにバカなんだから……」
通話口から漏れる泣き声。
僕は、母さんを泣かせてしまった。
ちくちくと胸がいたい。
「すぐ迎えに行くから、そこにいてね」
「うん。わかったよ」
迎えに来た母さんは、何度も頭を下げた。
「本当にお世話になりました。また改めてお礼に来ますから」
「そんなことないから、心配しないでいいのよ。またおいで、柊也。風花も楽しかったみたいだし。仲良くしてやってね」
また人形みたいになった風花をくっつけて、おばあちゃんが言った。
「また遊びに来ていいの」
にっこり笑って
「あぁ、好きな時おいで。今度はきちんと言ってくるんだよ」
母さんも、仕方ないという顔をしていた。
車に乗って窓を全開にする。
「おばあちゃん、またね。風花、またね」
見えなくなるまで手を振った。ふたりも僕を見送って手を振ってくれた。何度も何度も振られる手。
僕のために。
そう思ったら、とてもありがたかった。
こんな僕のために、ふたりはたくさんの心配と、たくさんの食べ物を用意してくれた。
血の繋がりがなくても、多分同じことをしてくれた。
そして。
機会があったなら何度でも同じことをするんだろう。