ふんわりシフォン -237ページ目

月が満ちるまで 噴水 15

今のままでいい。だけど変わっていくのだろう。宮原もあたしも。

あたしには日常の出来事なんて打ち上げ花火みたいだった。

ぱあっと花開いて、その時は楽しいけどそれだけで、すぐに消えてしまう。

下手をしたら花火すらない日常で。





宮原にとってはバスケは花火なんじゃなく、噴水なんだ。後から後から噴き上げる情熱で、心を満たしていく。


涸れることの無い泉は宮原そのもののようで。あたしも心に噴水を持っていたい。
なにがしたいかなんて、まだ分からないけど、誰かが笑顔になること…




そんな一瞬をもたらすことができたらいい。そんな一瞬を、手伝うことができたらいい。

月が満ちるまで 噴水 14

「ごめんね、応援してもらったのに勝てなくって」

無理に笑おうとしてるみたいだ。笑おうとしてても、目の中には悲しみがあって、胸が苦しくなる。

「無理したってダメじゃないの?練習で出来ないことは試合で出来ないよ」

ああっなんかキツい…こんな風に言いたいんじゃないのに。

「あのさ、信じてもらえないかもしれないけど、ちはやちゃんに『がんばれ』って言ってもらったの、すごくすごく嬉しかったよ。体が軽くなって、ずっと走れると思った」

思いだしたのか、目が明るくなりいつもの笑顔に近くなる。

「オレね、もっとがんばれるんだって思った。自分のために頑張ってきたんだけど、でも誰かが見ててくれて応援してくれるって、すっごく嬉しいんだね…よくわかったんだ」

「だからって…あんまり無理しないでよ」

へへっと笑う。

「なんかさ、何でも出来そうな気がしたから。自分でもびっくりするくらい上手くパスカット出来たしさ。勝てたらカッコ良かったのにな」

「いいよ宮原はそんなにカッコ良くならなくたって」

「なんで」

「困る」

「どうして困るの、その方が良くない?」

「いいの、あたしは困るの」

「これ以上、惚れたら困る?」

「そんなわけないでしょバカ宮原」

ずっと握りしめていたペットボトルを、宮原に投げる。

「ゴチになります」

はははっと笑った宮原は、ペットボトルの蓋をねじって中身を喉に流し込んだ。



いつもと変わらない。

胸のつかえが取れたみたいだった。

元気だしてね

あなたはあなたにしか出来ないことをしているから

あなたでなければ意味がないの

替わりがいるわけないでしょう

あなたは一人しかいないから



あなただから好きで
あなただから応援できる

そのことを忘れないで




元気だしてね
あなたを好きです