君にアイスを買ってあげるよ『梅の実』
会社に来ると、甘い香りが漂ってきた。
少し早いけれど、桃かな。熟した桃の皮をむいてかぶりつくのは、美味しい。
小さい頃、切ってもらった桃でなく、まるまる一個の桃が食べたくてただをこねた。高いから、贅沢って言われていたけど頂き物で箱の桃を貰った時に、初めて許してもらえた。
俺だけの桃。嬉しくて、よーく選んで皮の赤みが多い美味しそうな桃を選んだ。
そうっと洗って、皮も手でむいて。頬張ったら、甘くて美味しくて。夢中で食べていたら、果汁があふれて、ぽたぽたと肘まで伝った。
慌ててタオルをよこしたお母さんが、膝に敷いてくれて、ほらねって顔をした。
知らなかったのは、かじりついた桃の味だけじゃなくて、桃の果汁は染みになることもだった。
普通に洗濯しただけのシャツには、ぽつぽつ茶色の染みが出来てしまい、早く漂白しなかったことがバッチリ分かってしまった。
あれから、子供心にかじりつくのは止めようと思った。
梅の実2
少し早いけれど、桃かな。熟した桃の皮をむいてかぶりつくのは、美味しい。
小さい頃、切ってもらった桃でなく、まるまる一個の桃が食べたくてただをこねた。高いから、贅沢って言われていたけど頂き物で箱の桃を貰った時に、初めて許してもらえた。
俺だけの桃。嬉しくて、よーく選んで皮の赤みが多い美味しそうな桃を選んだ。
そうっと洗って、皮も手でむいて。頬張ったら、甘くて美味しくて。夢中で食べていたら、果汁があふれて、ぽたぽたと肘まで伝った。
慌ててタオルをよこしたお母さんが、膝に敷いてくれて、ほらねって顔をした。
知らなかったのは、かじりついた桃の味だけじゃなくて、桃の果汁は染みになることもだった。
普通に洗濯しただけのシャツには、ぽつぽつ茶色の染みが出来てしまい、早く漂白しなかったことがバッチリ分かってしまった。
あれから、子供心にかじりつくのは止めようと思った。
梅の実2
FULL MOON 21
はじめて会ったのに、懐かしい。そんな人だった。どこにでも居そうなのに、そんな人はいなくて。
いなくなってしまうのが悲しくて泣いた。
お別れに泣くのは、おかしくない。男だからだとか、大人だとか格好つけたくない。人の評価のために自分の感情を捩曲げてしまうことのほうが間違っている。
痛みや悲しみを理解できるように。言葉を持たない存在の痛みでさえ感じ取れるように。
すい、と目の端を横切るてんとう虫が、ちいさな会釈をする。
唇が笑いの形になる。
『気をつけて行きな』
意識を向けたら
世界は生き物が息づいていて、花は咲きこぼれ、木々は浄化の呼吸を繰り返す。
繰り返すさざなみ。
太古から連綿と行われてきた日常。
『俺に力を貸してね』
触れた木の幹には太陽の温もりがある。手の平に温かな感情が伝わる。
『ありがとう』
木々は優しい。とても とても自分の身を与えられるからだ。まわりを浄化して、俺にも力をくれる。
歩いていく先には、二人の人物がいる。
風のマスターであるジョーカーと、水のマスターであろう女性。
彼女は完璧なプロポーションをしていて、ふわふわした金髪が肩から背中へと流れ落ちている。
「地のマスターのために、ありがとうございました」
ぺこりとおじきをしたら、隣で猫も頭を垂れていた。
『あたし達も世話になってたのよ』
口から発せられる音とは別に、言葉が心に響いてくる。解りあうために心が触れあう。
波がとぷんと寄せて、包み込み情報の流れが洗う。深い海に沈むように鼓膜が圧迫される。
鱗を煌めかす龍のような魚が身をひるがえす。くっきりとした瞳が、瞼に焼き付く。深くて明るい鮮やかなブルー。
この人が、水の守護だ。
水はなにも遮ることなく、隔てることなく守護者を支え守っている。
重ねあわされた世界を覗くような感覚も、バスタブの栓を抜くように流れ去る。
身をひるがえす魚影が、ウインクする。
仰ぎ見る空には、まだ大きな虹がかかっていた。
いなくなってしまうのが悲しくて泣いた。
お別れに泣くのは、おかしくない。男だからだとか、大人だとか格好つけたくない。人の評価のために自分の感情を捩曲げてしまうことのほうが間違っている。
痛みや悲しみを理解できるように。言葉を持たない存在の痛みでさえ感じ取れるように。
すい、と目の端を横切るてんとう虫が、ちいさな会釈をする。
唇が笑いの形になる。
『気をつけて行きな』
意識を向けたら
世界は生き物が息づいていて、花は咲きこぼれ、木々は浄化の呼吸を繰り返す。
繰り返すさざなみ。
太古から連綿と行われてきた日常。
『俺に力を貸してね』
触れた木の幹には太陽の温もりがある。手の平に温かな感情が伝わる。
『ありがとう』
木々は優しい。とても とても自分の身を与えられるからだ。まわりを浄化して、俺にも力をくれる。
歩いていく先には、二人の人物がいる。
風のマスターであるジョーカーと、水のマスターであろう女性。
彼女は完璧なプロポーションをしていて、ふわふわした金髪が肩から背中へと流れ落ちている。
「地のマスターのために、ありがとうございました」
ぺこりとおじきをしたら、隣で猫も頭を垂れていた。
『あたし達も世話になってたのよ』
口から発せられる音とは別に、言葉が心に響いてくる。解りあうために心が触れあう。
波がとぷんと寄せて、包み込み情報の流れが洗う。深い海に沈むように鼓膜が圧迫される。
鱗を煌めかす龍のような魚が身をひるがえす。くっきりとした瞳が、瞼に焼き付く。深くて明るい鮮やかなブルー。
この人が、水の守護だ。
水はなにも遮ることなく、隔てることなく守護者を支え守っている。
重ねあわされた世界を覗くような感覚も、バスタブの栓を抜くように流れ去る。
身をひるがえす魚影が、ウインクする。
仰ぎ見る空には、まだ大きな虹がかかっていた。