ふんわりシフォン -200ページ目

FULL MOON 29

テレビで報道されないのは、感染を拡大しないための措置だと聞いていた。

感染した患畜は、移動規制がかけられる。取材でさえ近づくことができない。

やっとテレビで報道された時には、だいの大人が電話口で泣いた…






明日のわからない不安に






国の対応が後手にまわり、感染拡大が食い止められないなか、俺はここに紛れこんだ。

木にネットワークを巡らせていく。



『蹄のある生き物は、ここから通さないでね』

『了解』

木々の間をぬいながら、ちまちま歩いて境界線を作っていく。

通り過ぎる虫、小動物、全てに意識を向けながら、注意を促す。

野生動物が感染したなら、被害の拡大は野火のように広がってしまう。

俺の考えた出来ることなんて、たかが知れていた。




感染した家畜は、国に任せるしかない。全国から、ボランティアで家畜の医者が詰めかけているとネットで言われていた。

ただ殺して埋めるだけではない。

その個体の評価をして、損害を把握することに気の遠くなるような時間がかかっている。

土地を買ってまで、埋め立てる場所を確保しなければいけない人もいる。

パソコンひとつ、携帯ひとつでかなりの情報を引き出すことができる。

コンビニで電池と食料を買い込んで、ネットを漁り、毎日歩き回った。






何を知りたいか

報道と現状の差を感じる。知らなくてはいけないことだ。経済的なダメージは外国に対してイメージを損ね、名前の知れてきたブランド肉の輸出も出来なくなる。




いつしか大楠の木のそばで休むようになっていた。この地には何故か楠の木が多い。

ちかちか点滅する地図に、頭のなかで線を引きながら歩いていくと、待っていたかのように楠の木にあたる。

楠の木から、楠の木へとなにか伝令が伝わっているのかもしれない。

葉に露を結んだように

ちいさな想いが

形になるときがある



消えてしまうのだとしても

あったのは事実

見つけたのは

形にしたのは

忘れたくないから



滑り落ち

消えるのだとしても

そこに あった

リュウグウノツカイ

光さえ届かない

雪のように

プランクトンが

舞い落ちる

視覚は鈍く

知覚するのは

なに



透き通り

流れるように

泳ぎながら

底にまで行き着こう



登るしかなくなるまで