君にアイスを買ってあげるよ 鍋の季節 10
「ずるい、ごまかして」
「沢田、酔うとこんなに世話がかかるのか」
持てあました森田さんと、視線が合う。
「知りませんよ。森田さんのせいです」
なんだか腹がたってきた。原因は森田さんにある。
「なんで俺のせいにするんだ。橋田が沢田を誘うからだろ」
「森田さんが、はっきりしないから沢田さんだって、一生懸命になるしかないじゃないですか」
ヒールの高い靴で走ったり、けなげにもやしをカゴに入れたり。
「解らないって思ってんの、俺が」
森田さんの声の質が変わる。明らかに怒りが含まれた声音に、冷や汗が浮く。
「沢田、聞いてるか。酔ってるからって忘れるなよ…悪いけど沢田の気持ちに応えることはできない」
ぐすんぐすん泣き始めた沢田さんが、頭を横に振る。
「あたしは…告白すらさせてもらえないの…まったく望みがないの」
「すまない」
心のどこかで
待っていたシーンかもしれないのに。沢田さんが森田さんに振られたら…
なぐさめて
僕のことを見てくれたら
でも
それはなんてズルイんだろう。ただ待って力になる振りして告白なんて。
ダメでも告白したほうが、ずっと良かった。
好きだと口にせずに振られてしまったなら、後悔してしまう。
どんな言葉でも相手を想う気持ちを伝えないと…
「沢田、酔うとこんなに世話がかかるのか」
持てあました森田さんと、視線が合う。
「知りませんよ。森田さんのせいです」
なんだか腹がたってきた。原因は森田さんにある。
「なんで俺のせいにするんだ。橋田が沢田を誘うからだろ」
「森田さんが、はっきりしないから沢田さんだって、一生懸命になるしかないじゃないですか」
ヒールの高い靴で走ったり、けなげにもやしをカゴに入れたり。
「解らないって思ってんの、俺が」
森田さんの声の質が変わる。明らかに怒りが含まれた声音に、冷や汗が浮く。
「沢田、聞いてるか。酔ってるからって忘れるなよ…悪いけど沢田の気持ちに応えることはできない」
ぐすんぐすん泣き始めた沢田さんが、頭を横に振る。
「あたしは…告白すらさせてもらえないの…まったく望みがないの」
「すまない」
心のどこかで
待っていたシーンかもしれないのに。沢田さんが森田さんに振られたら…
なぐさめて
僕のことを見てくれたら
でも
それはなんてズルイんだろう。ただ待って力になる振りして告白なんて。
ダメでも告白したほうが、ずっと良かった。
好きだと口にせずに振られてしまったなら、後悔してしまう。
どんな言葉でも相手を想う気持ちを伝えないと…
ミネストローネ
風邪が良くなったら
あたたかなスープを作ろう
キャベツを刻んで
じゃがいも、にんじん、玉ねぎ
冷蔵庫の野菜を出して
ベーコンと炒めて煮込む
真っ赤なトマトの缶詰を開けて
ミネストローネを作ろう
太陽の光をたくさん浴びたトマトから
元気をもらおう
ひとつひとつ
日常に戻りながら
おろそかにしてきた
食べることも
きちんと見直すように
あたたかなスープを作ろう
キャベツを刻んで
じゃがいも、にんじん、玉ねぎ
冷蔵庫の野菜を出して
ベーコンと炒めて煮込む
真っ赤なトマトの缶詰を開けて
ミネストローネを作ろう
太陽の光をたくさん浴びたトマトから
元気をもらおう
ひとつひとつ
日常に戻りながら
おろそかにしてきた
食べることも
きちんと見直すように
君にアイスを買ってあげるよ 鍋の季節 9
狭い部屋で体をくっつけるようにして、こたつを囲む。
酒のつまみが広げられて、笑いながら手が伸びる。
「いいよね、ここは」
ほんのりと酔いながら沢田さんが笑った。
「気兼ねないだろ、お前達は」
暖かくて笑いがあって落ちついていられる。
わずかに引き開けられていた戸から台所を窺うことができた。
ガスコンロにかけられた鍋から白い蒸気が噴きだして、いい状態に熱が加わったと知らせてきた。
「よーし。メインディッシュの登場だ」
森田さんが席を立ち、タオルで持ち手を掴んで運んできた。
卓上コンロの上に移された鍋の蓋が開けられると、ほわんとした湯気が立ち昇った。ぐつぐつと煮えた野菜も魚も食べ頃で、わあっと歓声が上がった。
「美味しそー」
「本当、旨そうに出来てる」
「なんだ、橋田は鍋作ったことなかったのか」
「いや、あんまり手伝いしたことなくて…自宅にいたら料理なんてしないですよ」
「覚えといて無駄なことはない」
そうはいっても森田さんが料理する姿を見ていないのでぴんとこなかった。
ただ、複数あった包丁や独り暮らしの割に鍋や食器があるなというのは漠然と理解していた。
「料理できたら便利だぞ。いい気分転換にもなる」
「えー。森田さんの料理食べたいなぁ」
いい具合に酔いの回った沢田さんが森田さんに甘えるように言った。
一瞬、固まった森田さんはかすかな笑いに紛らわせて、今日は鍋だからまた今度と各々に鍋を取り分けてくれた。
「約束ですよ、森田さん」
はっきりとした約束をとれなくて沢田さんが焦れるのを
「少し飲むペースが早かったな。鍋を食べて落ちつけ」
沢田さんのために割り箸を割ってやり、器に添えた。そして自分でも器を持って食べはじめた。
つられて僕も箸をつけ食べた。
「うん。美味いよ。沢田も冷めないうちに食べな」
「ほんとズルイ」
かすれるような沢田さんの声がした。
酒のつまみが広げられて、笑いながら手が伸びる。
「いいよね、ここは」
ほんのりと酔いながら沢田さんが笑った。
「気兼ねないだろ、お前達は」
暖かくて笑いがあって落ちついていられる。
わずかに引き開けられていた戸から台所を窺うことができた。
ガスコンロにかけられた鍋から白い蒸気が噴きだして、いい状態に熱が加わったと知らせてきた。
「よーし。メインディッシュの登場だ」
森田さんが席を立ち、タオルで持ち手を掴んで運んできた。
卓上コンロの上に移された鍋の蓋が開けられると、ほわんとした湯気が立ち昇った。ぐつぐつと煮えた野菜も魚も食べ頃で、わあっと歓声が上がった。
「美味しそー」
「本当、旨そうに出来てる」
「なんだ、橋田は鍋作ったことなかったのか」
「いや、あんまり手伝いしたことなくて…自宅にいたら料理なんてしないですよ」
「覚えといて無駄なことはない」
そうはいっても森田さんが料理する姿を見ていないのでぴんとこなかった。
ただ、複数あった包丁や独り暮らしの割に鍋や食器があるなというのは漠然と理解していた。
「料理できたら便利だぞ。いい気分転換にもなる」
「えー。森田さんの料理食べたいなぁ」
いい具合に酔いの回った沢田さんが森田さんに甘えるように言った。
一瞬、固まった森田さんはかすかな笑いに紛らわせて、今日は鍋だからまた今度と各々に鍋を取り分けてくれた。
「約束ですよ、森田さん」
はっきりとした約束をとれなくて沢田さんが焦れるのを
「少し飲むペースが早かったな。鍋を食べて落ちつけ」
沢田さんのために割り箸を割ってやり、器に添えた。そして自分でも器を持って食べはじめた。
つられて僕も箸をつけ食べた。
「うん。美味いよ。沢田も冷めないうちに食べな」
「ほんとズルイ」
かすれるような沢田さんの声がした。