今日はひな祭り。
だが、わっちはいかの天ぷらとうずらの卵の串フライでビールを飲んでいる。
ひな祭りに何の感慨もないわっちだが、ある年のことだけは覚えている。
就職して落ち着いて、バリバリ仕事が出来ていた30代の頃だ。
いつも通り帰ってきて、「ただいま」「お帰り」という挨拶があって、
着替えて食卓へ向かうといきなりの「ちらし寿司」。
え、なにこれ?どうしたの?
「今日、ひな祭りだから」
毒母にはこういうところがある。
突然のイベントモード発動。
ちゃんと、ちらし寿司。しかも手作りしてる。
さくらでんぶとか、エビとか乗っちゃってる。
どうしちゃったんでしょうかー…?
と思うが、こういうときの毒母はテンション上がっちゃってる。
こんなこともしちゃうお母さん、すごいでしょ!いいでしょ!
もう、全身からそんなオーラが出まくってる。
「わぁ、すごいね!作ったの⁉大変だったね!」
ここはテンション合わせていかないとまずい。
いつもよりハリのある「いただきます」して、食べる。
たしかに、嬉しさはあった。
ひな祭りなんて言葉を完全にスルーして仕事してたから。
あぁ私も娘として認識されてたのね…なんて思って美味しくちらし寿司を食べた。
が、そんなことは後にも先にもこの一度きり。
逆にこんなことされるとその後の3月3日のたびに
「今日、ちらし寿司かなぁ…」
なんて期待してしまう。
バカだよね~。
その後、毒母が生きている間、ちらし寿司を作ってもらえることはなかった。
あれはいったい何だったんだ。なんの気の迷いだ。
むしろ聞いてみたい。なんであの時だけちらし寿司なんて作ったのか。
たとえ聞けたとしても、答えはだいたい想像がつく。
「そんなことあったっけ?」
多分理由なんかなかったんだろう。
晩飯のメニューを考えるのが面倒だったから、
「ちらし寿司でいっか。ひな祭りだし」
という結論だったんだろう。
わっちはひな人形を持っていない。
別に欲しかったわけではないが、それだけに「ひな祭り」というものが
自分には関係ないイベントだと子どもながらに思っていた。
そういう育ち方をしていたのに、いきなりの「ちらし寿司」。
ひな祭りってイベントを完全に忘れてたのに。
いきなりイベント感を植え付けといての、スルー。
一体何なんだ。
とか言ってる間にモラハラ元夫に捕まって飯炊きに没頭するわけなんだけど
未だに謎。
人生でたった一度の、ひな祭りのちらし寿司。
あれ以来、わっちは3月3日にちらし寿司食べてません。