疑惑 (1982年) | Asian Film Foundation 聖なる館で逢いましょう

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アジア映画に詳しくなかった私がアジア映画を観てます♪
ネタバレはできるだけ避けております…(ㆆᴗㆆ)*✲゚*。⋆

 

 

 

 

 

疑惑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも、ありがとうございます(^-^)ノ

 

今日、感想を書かせてもらう映画は1982年公開の『疑惑』です。

絶対に有名な映画だと思いますのでご存知の方が多いと思います。

 

※ いろいろ書いてますので知りたくない方はご注意ください。

 

昔、松本清張先生の作品を両親ともが大なり小なり好んでいて、家族で話題になったこともありました。

話から父も母も何冊か読んでいたと思います。

 

それで、橋本 勝先生の著書『映画の絵本』を読んでいた折、私も『疑惑』という作品を知り、惹かれたのですね。

あ、松本清張さん…と。

その経緯はもはや忘却の彼方ですが、文学があり映画があると。

それでまず松本清張先生の小説を読んでます。

 

それで ―― 正確な月日はもはや不明なんだけど ―― その数年後くらいに映画版を観たんですよ、うん。

ご存知だと思いますけど、原作と映画はいろいろ違っています。

 

映画はまず、主演の桃井かおり様、岩下志麻様のインパクトでドカンときたんですが、しかし私は原作の「迷宮入り」などが匂わされる結末がとても気に入ったんですね。

ですので映画版の「ワインのかけ合い」も素敵なんですが、正直、その最初の鑑賞ではちょっと拍子抜けしたところがありました。

 

しかし、とにかくその時の私にとっても何だか凄い映画だったのでメチャクチャ記憶に残ったんですね。

 

それで時は流れ…もうやたら観たくなってきてたので、1月24日、あらためて観ました…カチンコ

 

 

もう最初からビンビンくる本物の傑作なんですけど ―― ある夜、釣りの人たちが釣りをするような新港埠頭のA号岸壁で白河酒造の社長・白河福太郎さんとその妻・球磨子が乗った車が、猛スピードで海面へと突っ込み、夫・福太郎さんが亡くなる事故が起こりました。

 

 

球磨子はともかく車から海へ溺れ出て無事でした。

 

デカのカンがビンビンきたんでしょうか、刑事たちは最初から球磨子を疑ってかかるような物腰。

病院の看護師もマスコミの前で「あの人変だわ」と口にする。

 

 

福太郎さんは保険会社7社に総額三億一千万の保険をかけていて、受取人は球磨子でした。

そして球磨子は恐喝、詐欺、暴行、傷害の前科4犯。

もう刑事は絶対に球磨子が福太郎さんを殺めたと見てます。

 

そして球磨子はそんな刑事に全く動じずふてぶてしい態度を崩さないのだった。

 

 

昭和の時代だからでしょうか、刑事たちも傲岸不遜ですが、報道関係者もこの事件をセンセーショナルに扱い、球磨子をワーワー取り囲む、写真も必死で撮影する。

 

 

福太郎さんの家族と球磨子は不仲であった。

お通夜の場でもピリピリとした空気である。

 

 

ともかく夫婦だったので球磨子はその場へ現れたが ―― もう悪すぎて怪獣みたいになってるやんあせる

とてもではないけど武田鉄矢さんに乱暴されかけてウォ~ンとか泣いていた人とは思えない。

 

そして福太郎さんの亡骸と対面した球磨子のあの様子は、どういう意味があるのでしょうか。

私にはわかりませんが、とにかく怖い(>_<)

 

世間的にも球磨子への「疑惑」は深まるばかりであった。

 

映画は1982年の作品ですが、確かにその時代背景もありますよね。

私には警察が問答無用に強権的に見えましたし、また警察と新聞記者が酒場で話し込むなどナアナアの関係なのも、いいのかなあ…はてなマークと感じました。

映画の中では刑事が北陸日報の記者・秋谷茂一に球磨子の昔の男・豊崎勝雄の存在をある種の計画を含んで教えます。

 

 

記者・秋谷茂一が豊崎勝雄を泊まらせて確保しておく旅館です。

 

 

最近はそういうことがないようですけど、「疑惑」の人が会見を開いてテレビ出演までしてしまう。

そりゃ視聴率が取れますからなあ。

 

球磨子はあくまでも自分はやってないんだからと主張する。

球磨子はその場で自分に対して攻撃的な報道をしている記者・秋谷茂一に対し「ペン乞食」と嘲るのだ。

富山署の山崎捜査係長のこともバカ警部補と罵る。

 

そして白河(旧姓:鬼塚)球磨子、通称:鬼クマは逮捕される。

 

 

白河家の顧問弁護士・原山正雄(松村達雄)は東京の岡村謙孝に共同弁護人の依頼をしたんですが、岡村は自信ありげだったのにそれを断った。

 

岡村弁護士役…丹波哲郎さん、出てはったんですね。

 

 

公判が開始されたが原山正雄は弁護人の辞任を申し出、球磨子は激昂する。

 

 

球磨子の新しい弁護人に決まったのは女性の佐原律子だった。

初対面でいきなり「嫌いだなあ~、あたしアンタの顔」とか言う球磨子。

 

佐原律子は元夫・片岡哲郎(伊藤孝雄)と離婚しており、二人の間に生まれた娘あやこちゃんは片岡が引き取っている。

離婚の時の取り決めで律子は月に一度だけあやこちゃんと会って過ごせるのだ。

片岡は咲江(真野響子)という女性とすでに再婚している。

 

「一人で戦う」という球磨子に対し「死刑になりたければそうすれば」という律子。

 

 

鬼塚球磨子のこれまでの生涯については原作に詳しく書かれていたかもしれないけど、それは覚えてません(文庫本がどこかにあると思うのでまた読むべきですね)。

ともかく彼女は水商売で慌ただしく成功すること、裕福な男性と結婚することでしか浮かび上がる計画を思いつけなかったようなんだけど(それらも立派な努力です、念のため)、しかし球磨子は獄の中で六法全書を勉強してしまうような努力もできちゃう側面もあるんですね。

 

出自や生い立ちに関しては不幸であったかもしれない。

それは映画を観て想像するだけです。

しかし彼女は手っ取り早く金持ちになろうと考え、またお金への執着心は人並みはずれていたかもしれない。

またあったらあったでなんぼでも使うようです。

そりゃアカンってばあせる

 

 

球磨子は気に入らないとケンカを売り、人を小馬鹿にして怒らせる性格だし、状況を甘く見る愚かさもあるけど、しかし自分の人生に対しては自分で戦う度胸もあるようです。

そのあたり、どうしても応援してしまいそうになる、もしかすると夫を殺した殺人犯なのに。

ちゅうか、これ獄の中で食べてはるのはうな丼ですかはてなマーク

 

 

球磨子の最初の結婚相手は老舗割烹「ヨウリュウ」の一人息子、モリグチ ヨウイチ。

 

 

いろいろあって銀座裏にクラブ「プリンス」を開業した球磨子だが、しかし商売はなかなか上手くいかず、お店のホステスさんに売春を強要、それをネタに常連さんを強請り、店が潰れた夜、ホステスさんをガスバーナーでリンチ汗

ホラー映画かよと思いますが傷害罪で栃木刑務所で懲役3年を食らいよった。

 

 

映画作品とはいえ画面から何か異様な妖気が漂ってくるような面白さで、特に桃井かおりさんの演技が凄すぎてまず笑うしかない…。

 

『疑惑』は怖くて、笑えて、不気味で、生々しく、ゲスで、しかも心揺さぶられる傑作ではないですか。

言葉にするのが難しいんだけど、お金のためなら人を殺しかねない女が世界を敵に回して戦う姿、そして彼女を疑いつつもキリキリと弁護していくもう一人の女性に目頭が熱くなる。

 

 

桃井かおりさんの顔から目が離せません。

もうずっと見ていたい表情なんですね。

アッという間に時間が経っていきます。

 

これは誰しもそう思うんでしょうけど、桃井かおりさんの演技がものすごいな~。

 

裁判というガチガチの常識とかモラリティーの世界に球磨子というムチャクチャで下品な存在が投じられてしまい、アッという時に公判の大事なところが覆りそうになるんですよね。

これ、気持ちいいです。

 

 

で、『疑惑』は桃井かおりさん、岩下志麻さんのダブル主人公なんですけど、死刑になるかならんかの被告人が弁護士さんに「先生、お任せします。助けてください」と泣きつくのなら普通ですけど、球磨子は裁判の常識的なセオリーってもんにひれ伏さないので佐原律子にまで文句を言ったりして、弁護人と被告人、同じ目的を目指す二人三脚でないのがアホほど面白いんですわ。

ダーッあせるて思いますね。

また暴れるしあせる

 

球磨子に勝手なことを言われてムッとしている岩下志麻さんの表情がホントに素晴らしい。

 

書き忘れていましたが、物凄い山田五十鈴様演じる、昔、球磨子がいたクラブ「青い旗」の物凄いママさん・堀内とき枝にひとこと言われてムッとする顔も素晴らしい(と同時に被害者のパーソナリティについてのヒントを得るひらめき電球)。

 

 

そして、おとなしくなったかなと思ったらまた大爆発する球磨子がしんどい汗

 

 

さっきのは名演技だね 感心しちゃった

 

やっぱり岩下志麻さんと桃井かおりさんなのが凄い映画なんですよ。

お二人をず~っと見てたいのが『疑惑』です。

 

後半の流れでは弁護士・佐原律子としての仕事っぷりがもうかっこよすぎです。

 

 

また暴れそうな顔。

 

 

仲谷昇さん演じる白河福太郎さんもずっと見ていたい登場人物です。

ありがたいことに回想シーンでよく登場されます。

いや、被害者なので申し訳ないけど爆笑してしまいます。

ちょっとなんぼなんでもリアリティに欠けると思うんだけど、なんでこんな社長っちゅう立派な立場の人が球磨子みたいな女をここまで好きになって小突き回されてるんすか(≧∇≦)あせる

よっぽどハマりはったんですね。

また親族間でも球磨子のことで弱い立場なので、両方からしばかれてる感じでホンマ痛い人あせる

お店で暴れてた球磨子のところに大慌てで駆けつけたところで「遅いー!!むかっむかっむかっむかっむかっ」「ねえ謝らして!!謝らして!!」とムチャぶりを喰らいまくる、ついには保険に入れドンッと脅迫される名場面が大好きです。

いや、保険入れの時点でもう絶望的に危険ですやんかあせる

しかも泳げないというあせる

 

 

また福太郎さんのお母様を演じられた北林谷栄さん(カンタのばあちゃん)の表情が印象的でした。


 

いや、裁判のどうなるかわからない中、北林谷栄さんを見ているとホンマ気の毒に思えてきて…。

 

 

私ゃ警察の方々も好きになれませんでしたが、誰が嫌いって柄本明さん!!

 

が、演じられた北陸日報の秋谷茂一です。

嫌いだなあ、こういう正義感…。

もちろんジャーナリズムが追求していかないとダメな局面もあるんでしょうけど、この人は球磨子が嫌いなことが前提だから…。

 

 

鹿賀丈史さん演じる豊崎勝雄…人物像は全然好きになれないけど、そんなヤツの中に残ってる安っぽい正義や人間らしい心がたまらなく好きです。

 

 

野村芳太郎監督の作品は『砂の器』(1974年)、『八つ墓村』(1977年)、『鬼畜』(1978年)の3作を観たんですが、『砂の器』はともかく、『八つ墓村』と『鬼畜』はまだまだちゃんと映画を観れてない頃に観たので、自分的には「観た」にカウントするのは申し訳ないと思ってます。

『砂の器』も凄い名作だけど、私ゃ『疑惑』やなあ~。

 

 

どこがいいとかじゃなく、凄いものに圧倒されてる感じで、ゾクゾクくる映画です。

もちろんミステリーの面でもですが、それはうちのブログでは触れないことにして…推理もホンマ気持ちいいんですよね~。

 

もしも観てないなら絶対に観ないと!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ 結末に触れています

これから観る予定の方は読まないでくださいね。

 

 

私も少しはものを知った上でこうして『疑惑』を再鑑賞したんですが ―― 最後、佐原律子は自分が産んだあやちゃんと今後は会わないことを心に決めたように見えます。

元夫・片岡哲郎の今の妻であやちゃんを母親として育てている咲江に「もうこれ以上、私たちを苦しめないで」と言われて。

 

ここが物語上、どういう意味があるのかわからなかった。

咲江が律子とあやちゃんが会ってほしくないのはわかりますよ。

でも、なんで律子はその言い分を飲んだのかな。

これはつまり、離婚の時に月に一回、娘に会うという取り決めをしたんだけど、その約束以上に哲郎たち夫婦の気持ちを考慮せざるをえなかったってことなのかな。

 

観ててまず、この時代では弁護士なんかしてる怖い女は幸せな家庭を持てないというようなイヤな感じを受けたのですが、どうなんでしょう。

 

球磨子の裁判を終えて、なんで律子は孤独にならなきゃならないのか私には理不尽に思えました。

 

 

で、球磨子もメチャクチャな人柄なので周囲から人が逃げていくんですけど ―― 映画は原作と趣旨が変わっとるやんあせる

 

原作は先入観や偏見の怖さ、免罪の怖さで終わったと思うんですね。

こいつは絶対にやっとると全員が思っても真相はまだわからないんですよ。

それを嫌われ者の前科4犯だからと勢いで有罪にしていたら、どうなりますか。

単なるリンチやね。

 

小説『疑惑』を読んだお陰で以後、私は事件の裁判の結果を少し疑うような性格になったように思います。

もしも、無実の人が死刑になるのなら…恐ろしいですよね。

 

原作から映画化される過程での変更については、この1週間くらいで私の考えが劇的に変わったので、それについてはまた書きたいと思います。

 

 

それにしてもこの終わり方は「何エンド」はてなマーク

「ハッピーエンド」 ―― じゃない気がするんだけど…でも生き様の違う二人の女性の「嫌い合い」みたいな関係に奇妙な爽快感っちゅうか感動があって、結局、有能な女性弁護士も欲望に忠実なエゴイストも社会からガイにされつつ強く生きてしまうのなら、もう尊敬に値してしまうというか、そのメンタルの強さだけが羨ましい。

 

ご存知のように原作の佐原律子は「佐原卓吉」という男性なんですけど、女性の佐原律子に変更したことで『疑惑』は女性映画になったようです。

で、実質的に脚本を書かれた野村芳太郎監督と古田求さんが男性だからでしょうけど、こういうイヤな感じの女性に対する恐怖、嫌悪もあるのかなあ、と思うけど、でも一種の好印象や応援が消えてないので、それが映画になったのかなあと思います。

 

球磨子や佐原律子がイヤって人は男女問わず少なくないと思うし、実際、現実に付き合いがあったら、しんどいし苦しいかもしれないけど、でもね、映画で観る分にはここまで見ていたい人たちもいませんよねー。

 

ミステリーだし、そこの凄さも凄いんだけど、強烈な女同士の対決が後に残りますなあ。

ふと思い出したんですがポール・バーホーベンの『ショーガール』(1995年)も重なるかもしれない。

 

 

今回、『疑惑』を観て、ホンマにこの映画がメチャクチャ好きだと思いました。

日本映画のオールタイム・ベスト10の上位5位に入るかなあ。

1982年の映画ですが、のちの映画にも影響ってきっとあるんですよね。

でも『疑惑』じゃなきゃダメって思うんですね。

もう桃井かおりさんと岩下志麻さんでなきゃ、と。

 

調べると『疑惑』は映画はこの『疑惑』だけだけど、何度もドラマ化されてるんですね。

今はちょっと1982年の映画以外は考えられないんですけど、生きてるうちに一連のドラマ版も観たいものです。

 

最後に、この映画は「松竹」さんの映画なんですけど、私はどうも松竹さんの映画が好きなようですね。

日本映画で好きっちゅうたら松竹さんなんですよ。

それが偶然なのか理由があるのかまた知りたいですね。

 

今日もありがとうさんです、おおきに(^.^/)))

 



疑惑


Giwaku
Suspicion
의혹


1982年製作/127分/日本
劇場公開日:1982年9月18日
配給:松竹=富士映画

監督 野村芳太郎
脚色 松本清張
撮影台本 古田求 野村芳太郎
原作 松本清張
製作 野村芳太郎 杉崎重美
撮影 川又昂
美術 森田郷平
音楽 芥川也寸志
録音 原田真一
照明 小林松太郎
編集 太田和夫
スタイリスト 矢野悦子
助監督 松原信吾
スチール 金田正


桃井かおり - 白河(鬼塚)球磨子
岩下志麻 - 佐原律子
鹿賀丈史 - 豊崎
柄本明 - 秋谷
真野響子 - 咲江
仲谷昇 - 白河福太郎
森田健作 - 藤原
伊藤孝雄 - 片岡哲郎
小沢栄太郎 - 安西教授
北林谷栄 - 白河はる江
内藤武敏 - 矢沢判事
松村達雄 - 原山正雄
丹波哲郎 - 岡村謙孝
山田五十鈴 - 堀内とき枝

 

 

 

 

 

 

観たい映画 ⇒ ハッピー・アワー (2015年)