天国と地獄(1963年) 蜘蛛巣城(1957年) | Asian Film Foundation 聖なる館で逢いましょう

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いつも、ありがとうさんです…キスマーク

 

映画を少しずつ観ていて、書きたい作品もあるのですが、焦らずに順に書いていきたいと思います…よろしくビックリマーク

 

 

 

 

 

11月20日でしたが、黒澤明監督のこの作品を観ました…カチンコ

 

 

 

 

 

天国と地獄

 

 

解説 エド・マクベインの原作を得て、黒澤明監督が映画化した全編息づまるサスペンス。製靴会社の専務権藤の息子と間違えられて、運転手の息子が誘拐された。要求された身代金は三千万円。苦悩の末、権藤は運転手のために全財産を投げ出して三千万円を犯人に受け渡し、無事子供を救出する。非凡な知能犯の真の目的とは。鉄橋を利用した現金受け渡しのシーンは秀逸で、実際にこれを模倣した誘拐事件が発生した。また白黒作品であるにもかかわらず、最も重要なシーンで一個所のみ着色を施すなど新たな演出も印象深い。 (映画.com)

天国と地獄
英語題:High and Low
韓国語題:천국과 지옥


劇場公開日:1963年3月1日
1963年製作/143分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1963年3月1日

監督 黒澤明
製作 田中友幸 菊島隆三
原作 エド・マクベイン
撮影 中井朝一 斉藤孝雄
音楽 佐藤勝
美術 村木与四郎

三船敏郎
香川京子
仲代達矢
木村功
山崎努
三橋達也

 

 

1963年の作品です。

昭和だと38年。

 

この作品、多分18歳くらいで私も一度、観てます。

その前になんですが、中学であるキャンプに参加した折に、年上の人たちがこの作品を観ておられたことで話題にされ、横で聞いていて強い興味を感じたんですね。

とにかく誘拐事件の映画であるという概要はその時に知ったと思います。

 

そして後に実際に観たんですよ。

その時、そこまでわかってなかったとは思うけど、「なんて凄い映画や」と感動したことはよく覚えております。

 

それで、韓国映画をちゃんと観るようになってから思い出しましたし、また映画ブロガーさんのレビューなどからもまた観たい気持ちが高まっていたのですね。

 

最初のナショナル・シューズ社の支配権争いの場面はほぼ覚えていなかったんですが、それはそうかなと思います。

難しいのでね。

しかし今回、観ていてよくわかりましたよ。

 

そしてそのあとは、かなり綿密に記憶していました。

それだけ印象的な映画だったんだと思います。

もちろん全部ではないけれど、観たことすらすっかり忘れてしまう映画も少なくない中で、こうまでよく覚えているのはやはり黒澤明監督の作品が放つエナジーかなと思います。

 

あまりにも不朽の名作ゆえ、私が偉ぶってあれこれ書く必要はない映画なのですが ―― 何はともあれ異常に面白い作品です。

私の場合、必ずしも1960年代の映画を観ても、そこまで好きではないかもしれないんだけど、『天国と地獄』は結末を知っているにもかかわらず、最後までキッチリ楽しんだんですね。

もうそれはさすが黒澤明ということなんですが、また私はおそらく黒澤明監督の映画と合うんだと思うんですね。

観た映画を必ず好きになっているので。

 

ハッキリ言ってセリフは聞き取りにくいので「字幕」を出さしてもらってたんですが、それも問題なしです。

 

で、この『天国と地獄』がポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(2019年)と重なるのではないかというご意見もあり、どうなんだろうと思って観てたんですが、それは私はそこまでそうだとは思いませんでした。

豊かな人に対して豊かでない人が『パラサイト』ではそんな憎しみで見てなかったんですけどね、『天国と地獄』ではもう犯罪の動機が格差に対する憎悪だと思ったので…両作はそうまで似てないというのが私の感想です。

※ 今、確認しましたがポン・ジュノ自身は黒澤明監督から受けた大きな影響を公言しています。

 

『天国と地獄』という題名についても、必ずしも被害者側が天国、加害者側が地獄というだけでもないんでしょうね。

この事件では権藤金吾(三船敏郎さん)も地獄を見たと思います。

この映画の英題は「High and Low」だそうですが、そのタイトルがまた内容を表しているように思いました。

 

私が好きな場面は ―― 好きというか「凄い」と思う場面ですが、やはりラスト・シーンです。

現実にああして両者が対面することは1960年代の日本でもあったのかと思うんですが、凄まじいことですよね。

時間にしては短いんだけど、やっぱり怖いと思いました。

 

誘拐事件のミステリー、推理については、もうきっと何度観ても面白いに違いないと思うんですが、私が感動したのは権藤金吾の心の揺らぎです。

これまで綿密に計画して頑張ってきた、ゴールが見えていた中で、もしも情けを重んじたら全てを失うかもしれない…しかし ―― という心境から、悩みの末、何が正しいのか決断していく気持ち…それが感動でしたし、好きでした。

 

そしてもちろん権藤さんは犯人を憎むことになるんですが、事件の結末に至り、それだけではなかったと思います。

権藤さんはもともとご苦労もされている方で必死でお仕事なさって今の地位に到達された方。

ですので貧しい人の気持ちもわかる実直な方で、工場の方々からの信頼も厚い。

しかし、それでも犯人の暗い動機までは考えていなかったんじゃないですか。

背筋が凍るほど怖かったと思います。

 

なんと60年前の映画ですが、すでに格差社会の怖さがあったんですよね。

今、そんな大それた誘拐事件はないと思いたいし(警察が必ず捕まえなさるでしょうし)、豊かではない側からの怒りが発せられることも目立たないように思うのですが、本質的には羨望が強い憎悪になることもありうるでしょうね。

だって人はそこまで経済的な不幸を甘受できないものじゃないですか。

 

しかし、権藤金吾さんは気性の激しい人だし、戦闘的な性格でもあると思うけど、人間味のある優しさも失わない人です。

相手の立場にも立てる人だと思います。

結果として権藤さんは多くを失ったんだけど、新しい会社でまた自分の仕事をなさると思います。

逆に犯人は ―― 私には彼にも(彼が目指していたお仕事で社会に貢献できる、人々から感謝される)明るい未来があったと思うのですが、強がってみせても絶望の中にいたのではないだろうか。

怖いですね。

 

『野良犬』(1949年)、『羅生門』(1950年)、『生きる』(1952年)、『七人の侍』(1954年)がそうだったように『天国と地獄』も正しさが示されていますが現実はそこまで割り切れないもの…そうじゃないですか。

映画にはやっぱりある種の理想があると思いますが、現実はそこまでではないように思えてなりません。

 

それにしても久しぶりの『天国と地獄』、私の2回目鑑賞、ホンマに有意義でした。

凄い映画だなあ~( >﹏< *)

 

キャストについてですが、知っている俳優さんが少なく…でも、それだからこそ映画に没頭できる面もあるかもしれません。

権藤さんの奥様・伶子(香川京子さん)が昔の女の人~って感じなんですね。

ああいう方、おられたんでしょうね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蜘蛛巣城

 

 

解説 シェイクスピアの「マクベス」を日本の戦国時代に置き換え描いた、戦国武将の一大悲劇。謀叛を起こした敵を討ち城主の危機を救った鷲津武時は、帰城途中に出会った老婆から不思議な予言を聞く。その予言通りに大将に任ぜられると、今度は妻にそそのかされて主を殺害、自ら城主の地位に着く。黒澤監督は、欲望に刈られた魂が繰り返す殺戮と狂気を、能の様式美に乗せて見事に描いていく (映画.com)

蜘蛛巣城
英語題:Throne of Blood
韓国語題:거미집의 성


1957年製作/110分/日本
劇場公開日:1957年1月15日
配給:東宝

監督 黒澤明
脚本 黒澤明 橋本忍
製作 黒澤明 本木荘二郎
原作 ウィリアム・シェイクスピア
撮影 中井朝一
音楽 佐藤勝
美術 村木与四郎

三船敏郎
久保明
千秋実
小池朝雄
志村喬志村喬
山田五十鈴
木村功

 

 

続けて11月25日でしたが、同じく黒澤明監督の1957年の作品、『蜘蛛巣城』を観ましたカチンコ

 

こちらはガチで初めて観ました。

 

〝ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『マクベス』を日本の戦国時代に置き換えた作品〟で、特に結末が有名だからか、最後にどうなるかはぼやっと知ってたんですが、しかしそうであっても、むしろ最後にどうなるか予感しつつ観ててもぜんぜん面白かったんです。

 

映画の画面が所謂「スタンダードサイズ」…横に長くないので、なんかもったいなく感じてしまう、そして『天国と地獄』よりもセリフが聞き取りにくく、また作品のイメージがさらに古い感じ…なのは私的にはきついはずなんですが、しかし、そんなことは忘れるほど、やはり面白かったですね。

 

「蜘蛛手の森」で主人公が出会う「もののけ」のおどろおどろしい感じ、とても良かったです。

どうやって撮影したのかなあ…という場面も多いですね。

 

この映画は教訓としては、怪しい予言を自分にいいように解釈して信じてはならない、また人を信じること、裏切らないことの正しさがあると思うんだけど、しかし、映画の時代背景、また武士のあり方から、私はそりゃ人をだまし討ちにしたり、殺して地位を奪ったり、危険だと感じた人物は先手で殺してしまうとか、ありうるんだろうなあ…と思ったんですね。

 

だから鷲津武時(三船敏郎さん)が武将として成功してほしいと思う反面、それだと因果応報で破滅が待っているだろうと思ってました。

武士の仕事が「戦闘(いくさ)」であるのなら、それは殺人にほかならないわけですからね。

 

結果的に考えると鷲津武時は「蜘蛛手の森のもののけ」にたぶらかされた「被害者」にも見えるし、イケイケな発想の妻・浅茅(山田五十鈴)に煽られた気の毒さもあったという面で見ることもできるんじゃないでしょうか。

「森の中で出会った怪しい存在」の予言を信じるのもたいがいですが(しかし時代的にそうなんでしょう)、「成功への近道」をそそのかし、強力に推進しているのは妻・浅茅なのでね~汗

鷲津武時さんはむしろブルってたほどでね。

都合が悪くなると狂う奥方様が無責任だなあ~汗

 

鷲津武時は三木義明(千秋実さん)の人物評に拠ればそうとう武将としては優れた人だったようです。

そういう人はどうすれば良かったんでしょうかね~はてなマーク

ずっと主君・都築国丸(太刀川洋一さん)を立てて、主君の権力が揺るぎないものであるよう支えていくべきだったのか ―― あるいは武将として攻撃的に天下取りを目指すべきだったのか…それは私にはわかりませんが、攻めでトップを目指すのなら慢心せず、もっと注意深くするべきだったんでしょうね。

やっぱり、怖いですよね。

 

物語上、鷲津武時は主人公として愚かな面が目立ったと思うんだけど、私は嫌いにはなれなかったなあ。

それはなぜでしょうか。

わからないけど、彼の立場なら人間はあんなふうに考えてしまうものなのかもしれないし、そういう人がそれで健やかなままで人生を全うせず、罪への報いを得てしまうことが納得なのかもしれません。

 

キャストについてですが、『七人の侍』や『野良犬』で好きになった志村喬様が『天国と地獄』にも『蜘蛛巣城』にも出てられるんだけれど、目立たなくって残念だったなあ~。

あんなに助演なんですよね~。

 

もちろん、三船敏郎様はよく存じ上げているつもりですが、しかし、それ以外の方々は知らないし、わかりませんでした汗

やっぱり俳優さんはガラッと変身されるので。

しかし、とにかく1950年代、60年代の映画で演技する俳優さんを見るのは、思っていたよりもずっと楽しいことです。

 

あとで気づいたんですが、「蜘蛛手の森の怖いおばあさん」を演じられているのは『悪名』(1961年)と『続 悪名』(1961年)で「麻生イトの親分さん」だった浪花千栄子様だったんですね~ひらめき電球

気づかんわ、そりゃあせる

 

あと「コロンボ刑事」や『仁義なき戦い』で有名な小池朝雄さんも出てられるはずなんですが…気づけんな~、アカンわあせる

ま、昔の俳優さんは私もこれから知るとして…。

 

ここ最近、インターネットで戦後の日本のことについて少し調べてたんですが、今の時代の人たちにはない何かがあるんですよね、半世紀前の方々には。

その魅力をその時代の映画で知りたいです。

何か、戦後の女性たちのリアルを見れる当時の映画、もっと観たいんですね。

もしもオススメがあったら教えてください、よろしくビックリマーク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういったわけで黒澤明監督の傑作2作を観ました。

私は『天国と地獄』が好きだけど、『蜘蛛巣城』も素晴らしいです。

 

やはり私、黒澤明監督の映画が好きなんだと思います。

絶対に全作を観たいですね。

お詳しい映画ブロガーの皆様、またご指導お願い致します。

 

10月もお世話になりました。

11月もよろしくお願い致します…☆⌒(*^-゜)v

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11月26日 マイケル・ジャクソン THIS IS IT(2009年)