君とのご両親にご挨拶がしたいと
小瀧君からお願いして貰ったのだが
御前が部屋にやってきて
「小瀧から話は聞いたよ
サクちゃん、両家の顔合わせは
とても大事な行事の一つだと思うんだ
その大切な行事に長が同席せず
また儀式のついでに行う
それは君のご両親に対して
とても不誠実なことだと判断した
長には伝えず、私も聞かなかったことにする
櫻井様、両家の顔合わせは
改めてお日柄の良い日に席を設けます
それで宜しいでしょうか?」
確かに考えたら
主役の二人が揃わず
両家で顔合わせをするのは間違ってる
「御前 ・・・ 僕が考えなしでした
このことは御前の胸の内に収めてください」
「私共も息子の言葉を止めずに
大変失礼をいたしました
御前の仰る通り
日を改めまして
二人の門出を祝う席を
設けて頂きたいと存じます
私たち家族はこの儀式に出席いたしました後
耀の一族を離れることになりますので
どちらにも参ることが出来ます」
御前が仲人のような存在になってて
思わず笑みが零れてしまう
「そのお話はご子息から伺っております
櫻井様のご決断に
敬意を表したいと思います
真翔様も悲願が叶い
お喜びになっていらっしゃいますよ」
真翔様は翔様達と一緒に居るので
翔兄は戸惑った顔をしてた
(そうですとも言えないよね)
「そうであればいいのですが ・・・」
「父さん、きっと喜んでるよ
俺も翔兄も父さんの英断には
頭が下がる思いだから
新しい一族の始まりだと思ってる」
「かなり前に耀の一族と決別したけど
おじさんのお陰で
真の一族の一人だと胸を張れる
そう言う意味で感謝してるんだ
それに御前と言う父も出来た
御前、これからもよろしくお願いしますよ」
翔兄は嬉しそうに笑って
俺の両親と御前に一礼した
「私も君のお陰で
息子に許して貰えたんだ
こちらこそありがとう
そして宜しくな」
直ぐにとは行かないけど
数年経ったら御前も本家を息子(義理)に譲り
新しい一歩を踏み出すかもしれない
自由に画伯や翔兄に会う為に
山を下りるかもな
「これからは父さんって呼ばせてもらうね」
その言葉を聞いて
御前はこの上がないほどの笑みを浮かべ
大きく頷いた
「櫻井様
長老家が用意いたしましたホテルに
今からご案内いたします
こちらで昼食をと思っておりましたが
長老家でも用意していると聞きましたので
そちらを優先いたします」
「ええ、その方が良いと思います
陽の一族の代理の私が
内緒で暁殿に上がった事が分かれば
長老家の面子が潰れてしまいます
このままホテルに移動したいと思います」
まだ耀の一族当主の肩書は消えていない
ここに居ることがバレたら
それこそ大騒ぎになりかねない
ここは御前の言葉に従うのが
一番いいと思う
「父さん、母さん
来てくれてありがとう
気を付けてね」
「翔、お役目をはたして
長の迷惑にならないようにな」
「分かってます」
「翔兄、翔の事をよろしく頼むな」
「任せてください
おじさん、おばさんも気を付けて」
話が終わった時
廊下から小栗君の声が聴こえた
「御前、車の支度が出来ました
櫻井様をお送りいたします」
「そうか、ではすぐに参るので
車の中で待機していておくれ」
「畏まりました」
どうやら小瀧君ではなく
小栗君が送っていくようだ
(お世話係が連れて行くのは拙いらしい)
御前と翔兄と一緒に
両親の見送るため
本家邸の玄関まで出て
二人の車が門を抜けていくのを見守った
<続きます>