取りあえず奇蹟を起こそうか 107 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

屋敷の玄関先でざわついた声が聴こえる

日記に没頭していた和也が顔を上げて

窓の外を伺うように見たが

直ぐに日記に視線を戻した

 

「どうやら長老家の面々がお帰りになるようだ

 お見送りに行かなくて良いのか?

 曲がりなりにも次期当主の一人だろ?」

 

和也が可笑しそうに笑って

 

「曲がりなりにもね(笑)

 行かない方が良いと思って

 場を変えて話し合いをなんて言われても厄介でしょ」

 

それで通るなら良いけど

後で文句を言われるのは和也本人

俺には関係ないか ・・・

 

「潤は戻って来ないな」

 

「どうだろう? ・・・ 

 筆頭家の威厳は保ちたいだろうけど

 肩書だけって分かれば ・・・」

 

プライドの高い彼奴なら行かないかな

 

「径君 ・・・」

 

和也が真剣な眼差しで俺を見つめる

 

「なに?」

 

「僕が当主になったら ・・・」

 

そう言って一呼吸置く

 

「なったら?」

 

「長老会から抜けようと思ってる

 まだ、父にも言ってはいない」

 

「長老会の事はよく分からないが

 そんな簡単に抜けれるもの?」

 

「今だって、里の中の事は東の家

 対外的には松本の家が決定権を持ってる

 二宮の家が抜けたとしても

 あまり変わらないと思うんだ ・・・

 それに ・・・ 家と相葉の家が ・・・

 長の末裔に連なると分かれば

 また、騒動が起きる ・・・」

 

「やっと真実に辿り着いたって事か」

 

「径君は知ってたの?」

 

「ああ、相葉の家がそうだとしたら

 二宮の家もそうだろうと思ってた

 ご本人様の確認も取らせて頂いたから事実

 全ては潤様への配慮だった

 あのお二人は罪の意識が大きかったから余計だ」

 

早く日記を読んでれば分かった事だ

過去に目を瞑ってきたのは

長老会全ての家 

 

「それは雅紀も知ってたって事?」

 

「正確には俺から伝えた

 彼は騒ぎが大きくならないよう

 末裔で有る事は公表はしないで欲しいと

 和也もそう思ってだろ?」

 

和也が小さく溜息をついて

 

「全部お見通しだったって事なんだ ・・・」

 

「どうして教えてくれなかったは無しだ

 調べればわかった事だろ?」

 

「それは ・・・ そうだけど ・・・」

 

「長老家が過去を封印し

 自分たちの都合のいい里を作り上げた

 長の末裔を筆頭家にすれば

 誰も文句は言わない」

 

ん?待てよ ・・・

もしかして ・・・ これも計算済みか ・・・

 

長の末裔が松本の家だけではなかった

これが公表されれば ・・・

誰が得をする? 

 

そうだ、混乱を起こさせて

松本家の威厳を失くし

筆頭長老家に返り咲くためのお膳立て

 

 

「まんまと騙されるところだった ・・・」

 

「誰に騙されるの?」

 

キョトンとした顔で俺を見上げた

 

「ふふ ・・・ 思い通りにはさせない ・・・

 和也、その日記は俺に預からせて

 出来れば潤の日記も預かりたいところだが ・・・

 彼奴がどう出るかだな」

 

「潤君の日記はこの部屋の金庫の中に

 家の日記と一緒に置いてあるけど」

 

まだ意味が分かっていない和也が金庫を指さした

 

「じゃあ、預からせて貰う

 松本家の日記には

 今の里の形になった経緯が書いてあるはず」

 

東の家を筆頭家に戻すことは吝かではない

だけど ・・・ 次期当主になってから

早急に代替わりを進めて貰わなければ 

 

「ちゃんと説明してくれないと分からないでしょ?」

 

「俺もまだ仮説の状態

 二つの家の日記を紐解いてからだよ

 和也の気持ちは分かった

 新しい里を作る手助けはしてくれるんだろ?」

 

「それは勿論だけど」

 

「じゃあ、そのしかめっ面は止めて貰おうかな

 始まったんだ ・・・ 新しい里作りが」

 

「雅紀も一緒にできる?」

 

「それは雅紀君次第」

 

「なら大丈夫だ」

和也がやっと笑顔になった

 

 

玄関の喧騒が静まり返り

ドアをノックする音

 

「どうぞ」

 

「失礼します」

 

綾野君が疲れ切った表情で中に入ってきた

 

 

 

 

 

<続きます>