#1
「うひゃあ~!降ってきた降ってきた!」
バシャバシャと音を立て、雨の中を走りながら苦笑する。
「なんやもー!今日雨降るとか言っとったっけ!?」
その横を一緒に走っているもう一人は突然の雨に若干苛ついている様子。
確かお昼のゆきりんの予報では雨が降るなんてことは言っていなかったはず。
「頼むよお天気お姉さん」と隣に聞こえない大きさで呟いた。
「んもぅ!ゆきりんの予報全然あてにならへんやーん!」
・・・が、どうやら隣も同じこと思ってたらしい。
「ー!う、わっ・・・」
角を曲がろうとしたそのとき、人影が見えぶつかる寸前のところで立ち止まった。
「・・っぶなぁ・・・ごめん大丈ぶ・・・」
改めて前を向くと幼い少女がこちらを向いて立っていた。
この雨の中、傘も差さずびしょびしょだ。
まぁもっとも、人のことを言える状態ではないのだが。
それにしても見た目からして多分5才くらいの、こんな幼い子が一人で雨の中を歩いているなんて。
「ね・・」
「ーうっわお嬢ちゃんどうしたん!?びっしょびしょやん!」
しゃがんで少女に声を掛けようとした瞬間、隣からの威勢のいい関西弁に言葉をかき消されてしまった。
「一人?お母さんは?誰か一緒やないん?」
問い掛けに少女は反応せず、ただ真っ直ぐ自分たちを見つめるだけ。
・・・雨がどんどん激しくなってきてる。
「有華、取り敢えずこの子も連れていこう」
もう少ししたら事務所につく。
落ち着いてから一緒に交番にでも行ったらいい。
取り敢えず今はこの雨を凌ぐことが先決だ。
「せやな。ほな行くで!」
少女の小さな手を握りしめ、二人は再び走り出した。
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