なんだか暗いんだな。
トキワ荘は、もう過去のものである…とでも言っているようである。
高校生で漫画家デビュー、上京した石ノ森章太郎氏。
さぞかし、夢いっぱい希望も一杯で訪れた事だろう。
そこには、手塚治虫氏をしたう、たくさんの漫画家の卵が集まっていて、にぎやかであったはずなのである。
だけど、成功して出ていくものもいれば、うまくいかなくて出ていくものもいたでしょう。
いろいろなトラブルも、抱えたでしょう。
そこには、石ノ森章太郎氏の青春がたくさんつまっていた。
思い出も一杯である。
しかし、現実は老朽化して、誰もすまなくなったアパートでしかないのである。
寂しげな石ノ森章太郎氏…。
前に進むしかないのである。
1970年 虫プロ商事『COM』8月号 初出。
(『石ノ森章太郎 デジタル大全』より『青いマン華鏡』から「トキワ荘物語」を読んで)