自分のなかで矢沢永吉というと特に惹かれるのはCBS・ソニー時代末期と東芝EMI時代初期であり、ワーナーパイオニア時代は悪くないんだけどインパクトに欠けるところがあるように感じる^^; 全般的にオーソドックスなバンドサウンド志向なのがいまひとつ好みではないからか。「YOKOHAMA二十才まえ」(1985)もメカニカルな印象が強まっているような気がするのでやや色彩感が乏しく感じるが、こちらが矢沢に期待するものは例えば来生たかおに期待するのとは別物であるというのもあって、いくらか許容範囲といえなくもない^^; 

 

この「YOKOHAMA二十才まえ」は、こう言うのも何だが^^;内容よりもタイトルに惹かれる。矢沢は1968年高校卒業と同時に夜行列車で上京しようとしたが、直前で横浜下車に変更し弘明寺で下積み生活を始めることになったという。つまり、矢沢本人の来し方そのままを振り返ったかのようなタイトルといえる。横浜在住30余年となる自分は20代半ばからなので矢沢とは年代がズレているとはいえ、親近感をおぼえるところである。余談とはなるが、NOBODYのメンバーで今年亡くなった木原敏雄(1949〜2025)も含まれる人々へのこの時期の矢沢を振り返ったインタビュー記事を読んでいたら、かつて矢沢の住んでいたというアパートのあった場所は行きつけのスーパー銭湯への通り道だった^^; 前作「E'」(1984)に引き続いてちあき哲也と西岡恭蔵(1948〜1999)が作詞のメンバーとして名を連ねているが、ひさびさに山川啓介が2曲提供してくれているのが嬉しい。

 

冒頭の「浮気な午後の雨」のイントロからしてメカニカルな感触なのに引っかかりをおぼえてしまうが^^;、全般的にはくつろいだ雰囲気で渋い味わいだ。続く「TAKE IT TIME」は先行シングル曲でCMソングともなっているが、グッとアグレッシブに攻めていくノリのよさは確かに自分が矢沢に求めている一面であるといえる。3曲目が表題曲「YOKOHAMA二十才まえ」だが、この「TAKE IT TIME」と次の山川作詞「Morning Rain」に挟まれて地味に感じてしまう^^; 「Morning Rain」はじっくりと聴かせてくれる物静かで大人っぽい曲で、このアルバム中でも有数の出来だと思う。LPでいうA面最後の曲「光に濡れて」はやや快活さを増し、あたかも裏面へと続く通過点という趣きだ。

 

LPでいうB面冒頭「苦い雨」はA面冒頭の「浮気な午後の雨」と対になるのを意識したタイトルか(詞はどちらも西岡)。こちらのほうは決然たる雰囲気を感じさせる曲で、やや曲調は異なる。次の「瞬間(いま)を二人」の方が「浮気な午後の雨」に近い味わいか。3曲目「SORRY…」がまた山川作詞だが、「Morning Rain」ほどではないにしてもやはり味わい深い曲だと感じてしまうのは山川びいきからの先入観なのか^^;  続く「逃避行」はちあき作詞だが、同じちあき作詞の「TAKE IT TIME」に通じるノリのよさを感じる。なお、この曲はLPのみフルコーラス版でCDとカセットテープでは短縮編集されているというが、メディアの収録可能時間から考えるとこの逆はありえるとしてもこうなるのは不可解としか思えない^^; この頃の矢沢はアナログレコードを最重要視していたということなのか。最後は洒脱な雰囲気のイントロで始まる「あ・い・つ」。小粋な味わいで締めくくる。