アルバム「過ぎ去れば夢は優しい」(1983)のセールスに関する情報は入手できなかったが、それまでの野口五郎のアルバムリリース形態からすると異例だったと思われる「シングル曲をメインに置いたオーソドックスなスタイルのアルバム」が「19:00の街」(1983)のヒットによって成功のうちに迎えられたのだろうと推測される。翌年、もう1枚、同じようにドラマ主題歌となったシングル曲を軸としたアルバム「琥珀」(1984)が制作されているのがその論拠だが、「19:00の街」が野口も出演していたドラマ「誰かが私を愛してる」の主題歌であったように、「琥珀」に収録された「一人が好きですか」(1984)も野口出演の時代劇「弐十手物語」のエンディングテーマ曲となっており、明らかな相似となっている。もっとも、「弐十手物語」が視聴率低迷で打ち切りとなってしまった不運もあってか、前年ほどの成功は収められなかったようだ。以後、野口のオリジナルアルバム発売は「ALL OF ME」(1989)で再開に到るまで途切れている。

 

アルバム「過ぎ去れば夢は優しい」の後、「今夜はつれづれ」(1983)、「停車場」(1984)という2枚のシングルレコードが発売されているが、これらはオリジナルアルバムには収録されておらず、「一人が好きですか」が「弐十手物語」エンディングテーマ曲となったタイミングを捉えてアルバム制作に繋がったように見受けられる。この曲で詞を担当した小椋佳がアルバム「琥珀」においてほぼ全曲の作詞を担当しており、アルバムの構成にも携わっていると帯に謳われている。1曲だけ茅野遊が作詞を担当しているが、小椋の曲で詞を共作したりもしているようなので、この人も小椋人脈ということなのだろう。作曲も過半数は小椋が手がけているが、野口自身が2曲・先行シングルとなった「一人が好きですか」とB面曲「恋の薫(くゆ)り時」のみ筒美京平が担当している。アレンジは「過ぎ去れば夢は優しい」同様、ほぼ野口の実兄・佐藤寛と川村栄二で半々となっているが、「一人が好きですか」のみ若草恵が行なっている。

 

冒頭の「ワンサイドゲーム」は小椋が作詞作曲双方とも手がけているが、快活なスタートを切っている印象。次は表題曲に近い扱いの「琥珀色の日々」だが、こちらは野口本人の作曲で、「ワンサイドゲーム」では感じさせられた線の細さが薄らいで、野口の歌唱に合っているように思う。ぐっと哀感の高まりを感じさせる佳曲だ。3曲目「Whisper」は、作曲が小椋と連名で星勝も加わっている。前曲を承けて翳りをみせているが、アダルトな雰囲気を漂わせているように思う。4曲目はシングルB面となっていた「恋の薫り時」。こちらは時代劇とは無関係なはずだが、琴や尺八の音色を思わせる純和風なアレンジとなっている。佐藤と川村、アレンジを比べると佐藤の方が凝っている印象を受けるが、野口の作品への思い入れの違いなのかこちらの先入観なのか^^; A面最後は「一人が好きですか」。「恋の薫り時」ではなくこちらがエンディングテーマ曲として採用されたのは、リズミカルで起伏の大きく聴きばえがするところからか。個人的にはサックスの合いの手が印象的^^;

 

LPでいうB面冒頭は茅野作詞の「夜の羽音」。これも、ストリングスの美しさが目立つ切ない曲。次の「花遊戯(はなあそび)」から3曲、小椋作詞作曲作品が続く。「花遊戯」も前曲の印象を受け継いでいるが、メロディに多少不自然な感があるので物足りない^^; この曲は後日シングル発売されているが、Wikipediaによるとこのアルバムからのシングルカットではなく、松井忠重のアレンジによる別バージョンらしい。松井は来生たかおの初期のアルバムでいいアレンジを多く見せてくれている人だけに聴いてみたいところだが、未入手になっている。3曲目「冬木立」も同様の傾向の曲が続いている印象だが、末尾の時計台の鐘の音を思わせる効果音など、やはり佐藤のアレンジの方が凝っているように感じる。4曲目「一枚の写真」で、ようやく少し落ち着いた気分となる。次でまた切ない曲に戻るので、さしずめ間奏曲という印象か。最後は野口本人の作曲になる「結局」。悲しい曲で締めるのはどうかという気もしないでもないが^^;、ドラマティックな盛り上がりはみせているエンディングといえる。