同時発売された稲垣潤一のセカンドシングル及びファーストアルバム、ともにタイトルが「246:3AM」(1982)のセールスが思わしくない結果となったため、雪辱を期してサードシングルはヒットメーカーの筒美京平に曲を依頼することとなる。筒美にはデビュー曲の作曲もオファーしていたらしいが、この際には断られている。なぜ初回のオファーではダメで2回目のときは受諾だったのかはよく分からないが、単に忙しかっただけとか、深い意味はなかったのか^^; ともあれ、この結果書かれたメロディが「ドラマティック・レイン」(1982)となり、この曲のヒットによって稲垣のアーティストとしての地位は確立されることになった。

 

「ドラマティック・レイン」を収録したセカンドアルバム「Shylights」(1983)もオリコンチャートで2位を記録し、以後のアルバムは安定した成績を収めることとなるが、「ドラマティック・レイン」に加えて「ロング・バージョン」も聴けるという贅沢なアルバムだというのに、なぜか自分にとっては相性がよくない^^; たまたま自分の耳にした稲垣のオリジナルアルバム中では「Mind Note」(1987)に続く2枚目だったのだが、イマイチぱっとしない印象だったのでなかなか他の稲垣のアルバムに手を出そうという気にはならなかった。自分の中ではファーストアルバム「246:3AM」の方がずっと好みなのだが、これは自分のひねくれ根性ゆえか^^;

 

「Shylights」というタイトルは収録曲に由来するものだが、アメリカのソウルグループThe CHI-LITESに引っかけた作詞者秋元康の造語ではないかという推測をしている稲垣のファンの方がいるようだ。この時期の稲垣は洋楽のカバーも歌っていたりするし、あり得る話だとは思う。「ドラマティック・レイン」作曲者の筒美を別にすると作詞作曲者の顔ぶれは、秋元に湯川れい子、松尾一彦、見岳章といった「246:3AM」と共通するメンバーが目立つが、この時期稲垣とともに東芝EMIのニューウェイブ4人衆と称された安部恭弘が2曲提供しているのが目を惹く。アレンジも、前作と同じくほぼ井上鑑が担当している。井上も東芝EMIのニューウェイブ4人衆に数えられている人なので、「ロング・バージョン」と「恋のテクニック」の2曲はこの4人衆のうちの3人が参画しているという形になる(ちなみに残りの1人は鈴木雄大)。「ドラマティック・レイン」のみアレンジを担当しているのが船山基紀だが、これは当初作られたアレンジが没になって船山のものに変わったと稲垣が述懐しており、当初はこの曲も井上がアレンジを手がけていたという可能性はある。もっとも、シングルとアルバムの発売時期には開きがあるので、断定は出来ないだろう。

 

冒頭からヒット曲「ドラマティック・レイン」が聴ける構成になっている。稲垣ばかりでなく秋元にとっても出世作となったこの曲だが、両者には申し訳ないものの、自分が惹かれるのは間奏と後奏だ^^; 当時中学生だった自分はここのメロディに大人の雰囲気を嗅ぎ取ったものだった。まぁ、後奏のコーラスはたぶん本人だろうし、許してください。続く「風のアフロディーテ」は、珍しくも日高富明の作曲。落ち着いてノスタルジックな雰囲気を感じさせるので、「ドラマティック・レイン」の後奏に続くものとしては自然なものか。3曲目「(揺れる心に)フェード・アウト」でやや動きを感じさせる。少しラテン的な味わいなのが気に入ったのか、マーティ・バリンがカバーしている。このアルバムで唯一の松尾作曲だが、前作アルバム収録曲とは趣きが違う気がする。

 

4曲目「コインひとつのエピローグ」は見岳作曲。いかにも稲垣らしい雰囲気のしみじみとしたバラードで、個人的には「ドラマティック・レイン」や「ロング・バージョン」よりいい気がする^^; LPでいうA面最後は表題曲「Shylights」。秋元作詞・筒美作曲という「ドラマティック・レイン」と同じコンビだが、ずっと地味な印象を受ける。前記のとおりタイトルは洋楽のグループ名に由来するのではないかという話があるが、そちらの名称は「シカゴの灯火」を意味するという。そう思うと、結びなどは確かにポッと灯る光のようだ。

 

LPでいうB面冒頭はややアグレッシブとなる「ロンリー・ガール (SUZI FOUND A WEAPON)」。こちらはランディ・ヴァンウォーマーの曲のカバーで、前作アルバム同様、洋風なキャラクターを印象づけようという試行錯誤の結果収録されたかのように感じられる。続く「恋のテクニック」は前記のとおり安部作曲の作品だが、続く「ロング・バージョン」と曲調が違いすぎるので訝しい気分になる^^; 「ロング・バージョン」は「ドラマティック・レイン」と同じ製品のコマーシャルソングに採用された関係で、次作アルバム「J.I.」(1983)がすでに発表されていたにも拘らずポッとシングルカットされ、稲垣初期の代表作のひとつとなった。確かにしっとりとして大人の雰囲気を漂わせた曲だとは思うが、個人的には地味すぎるように感じてしまう^^; 続く「LONG AFTER MID-NIGHT」ともども尻すぼみに感じてしまうのが、前作「246:3AM」に比べて物足りないと思ってしまうところか。