「新視界」(1987)、「SMILE」(1988)と、洋楽カバーを収録せず作曲についてはほぼ自作メインのアルバムを連続して制作した鮎川麻弥だが、洋楽への憧れは抱き続けていたのか、1989年の「RESTLESS HEARTS」においてはほぼ全曲みずからの作曲という点では継続しているものの、アレンジについてアメリカのジャズピアニストかつアレンジャーであるというドン・ランディの助力を仰いでいる(最後の「A SONG FOR YOU」のみアレンジも鮎川本人単体となっているが、ピアノ伴奏のみの曲と思われる。してみると、ほかの曲においてもピアノなりキーボードのパートのみ本人が手がけているということか)。ロサンゼルスにてレコーディングされており、ブラック・ミュージック及びダンス・ミュージックという鮎川の音楽活動のバックグラウンドになってきたところに触発されたものになっているということである。鮎川はこのアルバムを最後にレコード会社を移籍しているので、最後にやりたいことをやらせてもらったという感じだったのだろうか。

 

個人的には、この時期の日本のアレンジャーの趨勢は行き過ぎた電子音の氾濫で、どのアーティストを聴いても無機的なサウンドに陥っているという不満を抱いているのだが、この海外のミュージシャンの起用によってそのような弊害から逃れてくれたのが心強い。ほどよくアコースティックさを感じる内容だ。作詞作曲の顔ぶれでは前作までにも顔を見せている松本一起が1曲だけ担当しているが、吉元由美が2曲手がけているのが目を惹く。

 

冒頭の「BE MINE」の、ラテン的というかグルーヴ感というか、躍動感溢れる響きから心躍るものがある。個人的には間奏の長いピアノのジャジーなメロディがツボである^^; 続く「ロゼ色の彼方で」は打って変わって落ち着いた感じのシックな曲。なお、この曲のみ作曲は影家淳となっている(景家淳という同業の人もいるようだが、資料不足で同一人物なのか似た名前の別人なのか確認できなかった^^;)。3曲目はほぼ表題曲といっていいだろう「MY RESTRESS HEARTS」。これは全編英語詞のロマンティックなバラード。初期の鮎川のアルバムでしばしば見かけたような洋楽カバーなのかと思ったが、原曲らしいものが見当たらなかったのでオリジナル曲なのかもしれない。

 

4曲目「COOL LOVE」は一転してリズミックな曲。作詞が吉元担当のうちの1曲である。続く「I LOVE YOU」はふたたび落ち着いた曲調に戻るが、後半にクライマックスを築く。ここで鮎川のたおやかながら力強い歌唱力がものをいっている印象。なお、この曲のみ松本作詞。次の6曲目「HEY! YOU BUDDY」はレゲエっぽい曲で、緩急のメリハリを意識して並べているのだろうか。しかし、次の「BABYLONIAN DREAM」はバビロンという地名を含む表題ながらラテン的なサウンドで、前曲と近しい雰囲気を維持している感がある。この曲と次の曲は作詞が水野有平という人になっているが、資料不足でどういう人かよく分からず^^;

 

8曲目「LONG DISTANCE #813」は落ち着いた曲調に戻る。次の「週末のアーウィン・ショウ」もくつろいだ印象の曲で、心地よく締めくくるのを意識しているかのようだ。なお、こちらが吉元作詞のもう1曲。最後は、前出のとおりピアノ伴奏のみでしっとりと締めくくられる「A SONG FOR YOU」。この曲もクライマックスで、鮎川が力強いところをみせて歌い上げている。