洋楽に傾倒していた感のある初期の作風に立ち戻ったかのようなアルバム「RESTLESS HEARTS」(1989)を最後にデビュー曲以来のレコード会社から移籍した鮎川麻弥だが、東芝EMI移籍後のオリジナルアルバムが「101番目の恋」(1990)だけに終わっているというのは意外なものがある。ちょっと先のこととなるが、1993年に当時所属していた事務所がアーティストマネジメントから撤退するというアクシデントがあったので、すでにこの頃から齟齬を生じるようになってきていたのだろうか。顔ぶれからみると「新視界」(1987)・「SMILE」(1988)のような「国産」回帰を感じさせるこのアルバムだが、ミックスダウンはニューヨークにてエリオット・シャイナーが手がけているとのことで、隠し味のように洋楽っぽいところが顔を出しているような印象を受ける。

 

詞を手がけているのは冒頭の表題曲のみだが、松尾由紀夫がビジュアル・コンセプトとエディトリアル・ワークという役割で名を連ねている。鮎川本人以外でほかに詞を担当しているのは、詩人・エッセイストの白石公子である。歌詞カードの末尾には、「彼女と私」という白石の詩が掲載されている。白石には鮎川自身とは異なるタイプの女性像を描くところがあって新鮮であったと鮎川はコメントしている。個人的には曲及びアレンジで井上鑑が名を連ねているところが嬉しい。やはり井上アレンジの曲のほうが好みのような気はするが^^;、もう1人主としてアレンジを手がけている森村献も、ところどころ見せるラテン的なテイストが捨てがたい。この両者のほかでは、最後の「GOOD-BYE SWEET DAYS」のみ、コーラスグループJIVEの宮下文一がアレンジを担当している。JIVEとはデビュー当初所属事務所が同じで、鮎川自身もコーラスに関心があったということ(最後の曲以外は鮎川本人がコーラスアレンジもしているようだ)だが、ずっと後年になって鮎川はJIVEに加入することとなる。なお、時期は不明だが、鮎川と宮下は結婚しているのだそうな^^;

 

冒頭の表題曲「101番目の恋」は、のっけから森村のラテン的なアレンジのセンスに惹かれる。なお、著名な某トレンディドラマの放送される前年の作品であり、無関係である^^;  続く「TROUBLE MAKERS」は詞曲とも鮎川担当だが、いかにも洋楽っぽいテイストを感じる。3曲目「土曜日の恋、日曜日の朝」は白石の詞で、落ち着いた雰囲気の曲。この曲のアレンジは井上だが、次の「MOON SHADOW」は作曲も井上。かつ井上がバックコーラスとして参加しているという、井上ファンにはたまらない曲だ。幾分メカニカルな感触はあるが、さすがに上品な味わいだ。間奏の長いギターソロも聴きごたえある。続く「思い出にならない」が静けさに満ちたピアノ主体のイントロで、さらに自分好みである。このアルバムはCDのみの発売だが、いかにもLPにおけるA面最後を思わせるような前半のクライマックスといった感のロマンティックな曲だ。この曲も、間奏でのハーモニカソロが余韻を残すが、後半はこのハーモニカと歌声との絡み具合が絶妙だ。

 

後半、「夢見る頃を過ぎても」はコマーシャルソングになったそうだが、当時自分はほとんどテレビを観なくなった人だったのもあり記憶にはない^^; 起承転結でいえば「転」にあたる快活な曲だ。次の「SLEEP WALKER」も、歌詞とは裏腹にリズミカルなタッチだ。鮎川によると海外での評判がいい曲だそうだが、確かに洋楽っぽい味わいがある。「TOO LATE〜手遅れの彼」は詞が白石に変わっているが、同じようなテイストで続いている印象。途中、間奏であるかのように英文ばかりで歌われる箇所があるので、一層その感が強い。これが9曲目「ぬくもりの時間(とき)」で雰囲気が一転して、これが最後かと言わんばかりにしんみりとしてくる。アレンジは森村の方だが、井上アレンジの曲に近いテイストになっている。そして、ダメ押しのようにアカペラで慎ましい「GOOD-BYE SWEET DAYS」で結ばれる。この曲は鮎川本人が多重録音でバックコーラスまで歌っているそうである。