谷山浩子が実質的にプロとしてスタートを切ったアルバム「ねこの森には帰れない」(1977)のB面は、童話をもとにしたドラマ仕立ての組曲となっていた。これほどの統一されたストーリーとして展開されているものではないが、続く「もうひとりのアリス」(1978)も、LPでいうA面は西洋のおとぎ話・B面は日本の昔話をベースとした曲が並べられたコンセプトアルバムとなっている。そのため、先にシングルレコードとしてリリースされていた「窓」(1977)はここに収録されていない。初出のレコードには、「『もうひとりのアリス』の世界をビジュアライズした」という、切り取ってレコードのレーベル面に載せられる円形のちょっとサイケデリックなデザインのシール(「シール」と称してはいるが粘着面のないただのコート刷)が付録として挿入されている。アレンジは前作のB面を手がけていたクニ河内のほか瀬尾一三が加わっていて自分にとってはこのシールほどのきらびやかさは感じない慎ましやかなものだが^^;、ファンタジックな味わいに富んだものとなっている。おそらくはこの時期の谷山がもっとも制作してみたかったタイプのアルバムを具現化したものであったのだろう(プロデューサーとして細川ともつぐとともに谷山が名を連ねている)。歌詞的にはこういうタイプの曲は正直あまり自分になじむものではないが^^;、音楽としては聴いていて美しく心地よいものだ。

 

LPでいうA面は、ともに「アリス」と題されたプロローグとエピローグの短い曲に挟まれて5曲が収録されている。この「アリス」も幻想的で印象深い曲だが、続く「鏡よ鏡」がまた一転して快活な楽しい曲でインパクト大だ。そして次の「魔法使いの恋人が逃げた」も、パーカッションの響きがファンタジックさを掻き立てて好アレンジである(瀬尾担当)。いっぽう、4曲目「青い鳥」はピアノ主体の幻想的なアレンジでプロローグの世界を引き継いでいるように感じる。そして次の「不思議なアリス」はストリングスがメインと変わってロマンティックな味わいだ。6曲目「赤い靴」はリズミカルな曲で変化をつけているが、最後はエピローグとして配された「アリス」で冒頭の幻想的な雰囲気に戻り、厳かなオルガン(のように聞こえるが記載がないのでシンセサイザーか^^;)の響きで重々しく締めくくられる。

 

前記のとおりLPでいうB面の曲の歌詞は日本の昔話をベースとして書かれているが、歌詞カードには元となった柳田國男「日本の昔話」(角川文庫)の引用が併載されている。不統一な感じだが、こちら側にはプロローグ・エピローグに相当する曲がない^^; 冒頭の「北風南風」はコーラスやアコーディオンの音色がA面の曲と違う印象を与えるが、あまり和風というイメージではない。次の「2月の部屋」は冒頭の歌詞が歌うものではなくナレーションとなっている。この曲はちょっとわらべうたっぽい雰囲気を持っていて前曲よりもそれらしい感じだ。これに対して3曲目「雲雀」はそこまで和風な印象がないが、谷山の歌声が幼さを強調されたものになっているのが童謡っぽさを醸し出しているといえなくもない。そして4曲目「水蜘蛛」はずっと慎ましやかな曲調に変わるが、A面の曲に近いファンタジックさが色濃い。しかし、次の「夜明け前 声がやって来た」は先の「2月の部屋」に近いわらべうたのような味わいに戻る。もっとも、最後の「やまわろ」は村岡健のサックスがかっこよいリズミックな曲なのだが、「これで締めくくりなの?」という違和感が残るものだ^^;