真田信幸の家臣・鈴木右近。

小早川秀秋に仕える柳生宗章の門弟として熊五郎とも名乗ります。

 

今巻では、徳川家康の密書を沼田から西軍・小早川秀秋の陣にいる柳生宗章へ届けるという密命を託されます。しかも期限はわずか七日間。

 

右近は家来二人とともに道中を急ぎますが、足が痛くなったり、川渡りでの溺れかけ、重たい鎧櫃を手放す苦難に見舞われます。濃尾平野に入れば東軍でごった返し、その先では西軍でごった返し、小早川の陣がどこにあるのかも分からない――まさに試練の連続です。

 

十七歳ながら右近は一人前の武士として成長し、頼もしい姿を見せます。特に日和見で震えている小早川秀秋との対比は鮮やかです。

 

作者の「三河武士心得」、「北近江合戦心得」、「真田武士心得」のシリーズは、目的地に向かう道中や日常の出来事を、当時の庶民が使ったであろう荒っぽい言葉で描いている点が面白さの秘訣でしょう。今巻には植田茂兵衛も登場します。ただ右近と絡むことはありませんでしたが。