包丁人・大角与左衛門。料理の腕前によって秀吉・秀長から頼りにされ、秀頼には深く信頼され、さらには家康の心まで溶かしてしまう人物です。

 

秀吉と秀長の仲が険悪になった際には、「食えない腑を料理にするもしないも、味噌次第だ」と語り、兄弟の信頼関係や役割を説いてみせ、また、信長の上洛戦で士気の上がらない秀吉の陣では「(足軽たちに)飯を食わせろ」と蒲鉾を作って振る舞います。


与左衛門は、料理を通じて人にどう影響を与え、どう動かすかを体現する存在として描かれます。金ヶ崎の退き口、千宗易への働きかけ、宇喜多への調略など、随所で彼の才覚が光ります。

 

とはいえ、この作品は秀吉目線・秀長目線で描かれているようにも感じられます。
民を想い、臆病を極める秀長が、鳥取城を囲む前に村を焼いた藤堂高虎に対し、「民を巻き込んだのか。…そんなきたねえ戦さをやれと、いつ俺がいった」と叱責する場面などは、その典型でしょう。

 

さらに、秀吉・秀長の死後も、どこか秀頼の視点が強く感じられました。
そのためか、読後には少し奇妙な感覚が残りました。