相貌失認~いわゆる人の顔を認識できない脳機能の障害~をもつ根岸楸(ひさぎ)が、かつて割烹料理屋だった店舗兼住宅を借り、出張料理人として独立し成長していくお料理・お仕事小説です。一緒に暮らすことになった従姉で引きこもりの根岸芽未(めみ)も、楸に触発されて少しずつ立ち直っていきます。
相貌失認や芽未の炎上経験といったハンディ、そして「割烹おかやす」の味の復活を期待される重圧に対し、出会った人たちに支えられながら楸は成長していきます。ただ、名店の味を再現するという設定は、現実にはそんなに簡単ではないよなぁ……と思ってしまいました。そこは小説として割り切って楽しませていただきましたが。
作者の播上君・渋澤君・草壁君シリーズを楽しく読んでいたので、今回も安心して読めました。少し設定に無理を感じるところはありましたが、全体としてほのぼのとしていて、美味しそうな料理描写が魅力的な作品でした。そして、多様性の時代に「こんな人もいるんだよ」と教えてくれるような物語で、相貌失認についても少し理解が深まった気がします。
