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声2

 昨日に引き続いて声の話。今日は女性アーチスト。

 女性アーチストで好きな声はまずなんと言っても、ミニー・リパートン。定番中の定番だが、彼女の「Lovin’ You」はやはり信じられないくらい美しい声だと思う。昔、湯川れい子さんのラジオで彼女が死の直前に握力がなくマイクを手に縛って歌ったという話を聞いたことがあるが、それだけ歌に全てをかけていることが伝わってくる声がすさまじい。

 あと、元10,000maniacsのナタリー・マーチャントの声も好き。なんとなく、R.E.M.のマイケル・スタイプが女性だったらこんな声なのだという気がする。素朴だけど、力強い。10,000maniacsもナタリー・マーチャントも日本では知名度が低いが、いいアルバムが多いので是非聴いてほしい。他には、コクトー・ツインズのエリザス・フレイザーの声も幻想的でよい。コクトー・ツインズでの活動はもちろんのこと、Massive Attackとコラボレートした「Teardrop」は名曲中の名曲。寝る前に聴くと力が抜けてよく眠れる。

 日本人で言うと、ボニー・ピンクさんの声が好き。特に「You Are Blue, So Am I」の出だしの「かすかな声を聞いてよ~」のところが大好き。なんか懐かしいような切ないような気持ちになる。少し変わったところでは、小島麻由美さんの声はすごく個性的だと思う。「恋の極楽特急」のさびの部分「オレンジ色した極楽特急に乗り込んで~」の投げやりな感じが心地よい。この人のインタビューを聞いたことがあるが、作り物の「不思議ちゃん」を超越した怖さを感じた。普通の人とはかなり違った感性なのだと思う。

 総じて言えば、ミニー・リパートンを除けば、力が少し抜けたはかない感じの声が好き、マライヤ・キャリーやセリーヌ・ディオンような絶唱系はお腹いっぱいになってちょっと苦手。あっさりとしていてかつこくのある心にしみいるような声が好きだ。


10,000 Maniacs
Our Time in Eden
Natalie Merchant
Tigerlily
Massive Attack
Mezzanine
小島麻由美, 野崎貴郎
セシルのブルース

高校生のときは元シカゴのピーター・セテラや元ジャーニーのスティーブ・ペリーのような声になりたかった。すごく透き通った感じのするハイトーンボイス。バラードによく合う。そんなことを言っていると高校時代の友人のK君から、「また、そんな軟弱なこと言って。男ならロッド・スチュワートだ」みたいなことを言われて馬鹿にされていた。

大学生になると、少しはませてトム・ウェイツのような声になりたいと思った。酔いどれた感じのだみ声。本人が出ていたジム・ジャームッシュ監督の「ダウン・バイ・ロー」の囚人のイメージが僕の中では強い。ぶさいくなのになんであんなに格好いいのだろう。

日本人で好きな声は、スガシカオさん、ハナレグミの永積タカシさん、そして、スピッツの草野マサムネさん。あと忘れてはならないのが、フィッシュマンズの佐藤伸治さん。大学の先輩に初めて「あの娘が眠っている」を聴かせてもらったときの衝撃は今でも忘れられない。力の抜けた浮遊感のあるメロディーとボーカル。当時、ほとんど邦楽は聴いていなかったのだが、フィッシュマンズとコレクターズだけは聴いていた。

ライブにも一度行ったことがある。神戸のチキンジョージに、これまた大学の先輩と。CDと違って演奏も声も妙にだらだら、ぐにゃぐにゃしていた記憶がある。確かシングルの「ナイトクルージング」が出た直後。この曲を始めて聴いたときもびっくりした。これまでの「いい曲」を書くバンドからさらにひとつもふたつもステップが上がった感じ。ライブでもライティングとあいまって、そのぐにゃぐにゃした演奏が妙に気持ちよかった。

その佐藤伸治さんがお亡くなりになって7年以上になる。過去のアルバムとポラリスの新譜がその寂しさを幾分埋めてくれるけれど、今、彼が生きていたら、もっとびっくりするような曲を聴かせてくれたのにと残念でならない。


キングレコード
ダウン・バイ・ロー コレクターズ・エディション
Fishmans
空中 ベスト・オブ・フィッシュマンズ
フィッシュマンズ
宇宙 ベスト・オブ・フィッシュマンズ

親たちの名言

 子どもを持って親になると人は明言を語るのかもしれない。

以前僕の奥さんが妊娠したときに職場の同僚が「子どもを持つと今までに感じたことのない感情を持つようになるよ」とアドバイスしてくれた。僕は今となっては二児の父だが、本当におっしゃるとおりだと思う。愛しいような、切ないような、このろくでもない世の中に生んでしまって申し訳ないような、そんな感情が入り混じったなんともいえない感情を二人に対して持っている。その同僚と僕の感情は別ものかもしれないが、子どもが生まれるまで持ち得なかった感情を持ったという点では共通しているような気がする。

また、別の知人は「歳を取るにつれて、自分ひとりだけのために仕事を頑張れなくなってきたんだけど、結婚して子どもができたらなんとか頑張れるようになった。」とおっしゃっていた。僕はどちらかと言えば奥さんや子どもの顔を思い浮かべても頑張れない仕事の方が多いタイプなのだが、この言葉もいい言葉だと思った。

僕の子どもとの理想の関係は村上春樹さんの「国境の南 太陽の西」に出てくる主人公と娘の関係だ。「今日、いちにち楽しいことあった?」という質問に対して娘が「楽しいことなんてなにもなかった。ひどかった」と答える。すると、「まあお互いに大変だったな」と主人公が言う。こんな会話が息子たちとできるようになりたいと思っている。

 同じく村上春樹さんの「アフターダーク」。ラブホテルで働く悲惨な過去を持つコオロギさんという女性が「人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きてくものなんやないのかな」と語る。僕が子ども達に与えてあげたいのは、どんなつまらないものでもいいからこの生きていくための燃料となる記憶だ。借り物の言葉で名言になっていなくて恐縮だが、それがこのろくでもない世の中に生んでしまった親としての最低限の勤めかなと思っている。


村上 春樹
国境の南、太陽の西
村上 春樹
アフターダーク