レコードやカセットには、デジタルでは決して再現できない「手触り」と「不便さ」が宿っている。針を落とすときの微かな緊張感や、カセットを裏返す一手間…そうした所作そのものが音楽を聴くという体験を特別なものへと変えてくれる。
便利さに慣れきった現代では、一瞬で再生できるスマホの音楽は確かに効率的だ。しかし、不便であるがゆえに、一曲一曲を大切に耳を傾け、アルバム全体を通して受け止めようとする意識が自然と生まれる。その時間の流れはどこか緩やかで、単なる娯楽を超えた「儀式」のようでもある。
つまり、手間や不便さは煩わしさではなく、むしろ音楽への愛着を深める要素となり得るのだ。