実家に帰ってきた。
親は思っていたよりも穏やかで、優しく迎えてくれた。
それが一時的なものなのか、ようやく訪れた和解なのか、まだ判断はつかない。
けれど、今はただ、そのぬくもりに身を委ねている。
部屋を見渡すと、足の踏み場がない。
段ボール、服、化粧品、思い出の欠片。
それぞれが居場所を失い、床の上で寄り添っている。
前の家には収納があった。
整える余裕もあった。
けれど今は、それすらも贅沢に思える。
引っ越しを終えたというのに、心の中はまだ移動中だ。
新しい生活が始まった実感もなく、ただ「押し入れがほしい」と呟くたびに、
何かを失ってきた時間の重さを思い知る。
それでも、親のあたたかさと、散らかった部屋の混沌の中で、少しだけ、息をつけている気がする。