美の巨人たち 横山大観作 《海山十題》
横山大観の代表作として名高い《海山十題》の巧藝画です。
《山に因む十題》、《海に因む十題》の各10点に、大観が監修したことを示す自筆の箱書きがついています。
まずはこの巧藝画のもとになった本画、《山に因む十題》、《海に因む十題》についてお話します。
昭和15年、紀元2600年と大観自身の画業50年に際して開催された奉祝記念展覧会の出品作として、大観は《海に因む十題》《山に因む十題》、計20点を制作しました。戦時色が次第に強くなっていく時局を鑑み、「彩管報国」つまり絵を描くことで国家に報いるという考えから制作に至ったそうです。その販売の収益50万円は陸海軍に献納され、4機の軍機「大観号」となりました。多作で知られる大観が他の制作を抑え、約1年の月日を費やして力を注いだこのシリーズは、評論家たちに絶賛されその充実した内容でも大きな話題を呼びました。会場となった日本橋三越・日本橋高島屋には、評判を聞きつけた人々の大行列ができたといわれています。以後、横山大観という人物のスケールの大きさを語る伝説となった通称《海山十題》は、大観の精神主義の権化にして画業の集大成とも言うべき名作です。