福島事故 2024 その3: 水素発生 | 夢破窓在のブログ

夢破窓在のブログ

放射線とは何か?
放射能とは何か?
福島事故とは何か?

福島事故 2024 その3: 水素発生

毎年恒例の事故の話、同じ内容になりますが、視点を変えてみる努力をしながら、問題点を挙げてみようと思います。

燃料棒が水から露出すると、燃料ペレットの余熱で鞘の温度が上昇して行きます。
セシウムの融点は28.4℃、沸点は671℃です。
鞘内の温度が671℃を超えると燃料棒の底で液体になっていたセシウムが気化し、鞘内の圧力が高まります。
これにより鞘がパンクすると、高温の鞘内部の気体が圧力容器内に噴出します。
セシウムは爆発的に水と反応して水素を作り出しました。
 2Cs + 2H2O → 2CsOH + H2
YouTubeに金属セシウムを常温の水に投げ込むと、ボコボコと激しく水素が生成する映像があります。
常温の液体と固体の金属の状態でもこれですから、高温の気体同士の反応は「爆発」と呼んでも差し支えないほど激しい反応になりました。
圧力容器の圧力は一気に高まり、排圧弁(SR弁)からガスが格納容器に噴出しました。
格納容器の圧力は一気に7~8気圧に高まりました。

東電のサイトから。
燃料棒にはキセノンなどの気体の生成に備えて、空間が露出した燃料棒の表面温度が崩壊熱により上昇したため、燃料棒の表面が圧力容器内の水蒸気と反応して、大量の水素が発生しました。格納容器の損傷部(温度上昇によって生じた蓋接合部等の隙間と考えています)から漏れ出た水素は、原子炉建屋上部に溜まり、何らかの原因により引火して、津波襲来から約24時間後の3月12日午後3時36分に爆発しました。また、溶融した炉心が圧力容器の底を貫通し、格納容器の床面のコンクリートを侵食しました。
 

燃料棒にはキセノンなどの気体の生成に備えて、空間が用意されており、それなりに耐圧性も備えています。
セシウムの気化でパンクするほどヤワに作っていない、という話があるのかも知れません。
燃料棒はジルコニウム合金で作られています。
ジルコニウムは安定な物質であり、簡単に酸化することはありませんが、温度が1000℃近くになると水蒸気と反応して酸化し始めます。
ジルコニウムが酸化すると、「相変位」が生じて大きく縮みます。
表面に亀裂が生じ、セシウムが気化して圧力が高くなっている、厚さ1mmほどの燃料棒に破綻が生じる。
東電は燃料棒破綻の原因がこちらにあると考えているようです。

どちらが原因にせよ、燃料棒から吹き出したセシウムは水蒸気と反応して爆発的に水素を発生させました。

東電ではジルコニウム合金と水蒸気の反応によって水素が発生したとしていますが、これで作られる水素の量は、セシウムの反応で作られる水素に比べればいか程のものでもありません。
ジルコニウムは酸化するとセラミックが作られます。
作られたセラミックは金属と水蒸気の反応の進行を阻止します
アルミニウムが酸化してアルミナが作られる過程と似ています。
「爆発」などと呼ばれる程の量の水素が生成される事は考えられません。

ジルコニウムの酸化が起こるとすれば燃料棒全体に相変位が起こり、大きく縮んで全体に亀裂が生じることになります。
高圧下で重たい燃料ペレットを支えている鞘は、バラバラになって圧力容器の底にペレットと共に落ちてしまうでしょう。
底には水が2mほど残っています、水の温度は290℃ですから、酸化反応が起こることはありません。(下図参照)
水素の発生を「ジルコニウムと水蒸気の反応」由来とするのは誤りです。




朝日新聞の図ですから信用できませんが、読売新聞もほぼ同じ図を掲げています。
東電では19時30分(推定)に燃料底部が露出したとしています。
21時50分には建屋の線量が上昇したとNHKが報じています。
これは圧力抑制プールの半分を占める水の上部に満たされたキセノン133やセシウム親和水蒸気が鋼管を通して放射するガンマ線を観測したものと考えられます。
20時~21時に燃料棒の破損が生じた。
東電の見解が正しいなら、燃料棒の鞘のカケラや燃料ペレットがバラバラと底に落下する事になるので、高熱のペレットに触れた
水は一気に蒸発し、水位は急激に下がる筈なのです。
この図には19時以降に水位が急激に下がった気配がありません。

新聞社の図を信じるのか?という話ではありますが、私はペレットがドバドバと落下したとは考えていません。
燃料棒はセシウムの気化でパンクはしたものの、まだ大きく破損することなしにぶら下がっているのでは?と考えています。


水素は燃料棒の破損と同時にセシウムが水蒸気と反応して大量に発生しました。

福島第一原子力発電所事故の経過と教訓
https://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/outline/

1号機の事故について
https://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/outline/2_3-j.html

(一言)

記事の更新は一日置きに行う予定です。