福島事故 2024 その4: メルトダウン | 夢破窓在のブログ

夢破窓在のブログ

放射線とは何か?
放射能とは何か?
福島事故とは何か?

福島事故 2024 その4: メルトダウン

毎年恒例の事故の話、同じ内容になりますが、視点を変えてみる努力をしながら、問題点を挙げてみようと思います。

東電のサイトから。
露出した燃料棒の表面温度が崩壊熱により上昇したため、燃料棒の表面が圧力容器内の水蒸気と反応して、大量の水素が発生しました。格納容器の損傷部(温度上昇によって生じた蓋接合部等の隙間と考えています)から漏れ出た水素は、原子炉建屋上部に溜まり、何らかの原因により引火して、津波襲来から約24時間後の3月12日午後3時36分に爆発しました。また、溶融した炉心が圧力容器の底を貫通し、格納容器の床面のコンクリートを侵食しました。

燃料ペレットはジルコニウム合金の鞘(燃料棒)に入っています。
ジルコニウムの融点は1855℃、合金になっていますと融点が下がりますから、1500℃で熔けるとしておきましょう。
ペレットの表面温度が2000℃になったとします。
融点2865℃の燃料ペレットは固形のままですが鞘はトロトロ、密度11の重たいペレットを支えきれず、余震が無くても燃料ペレットは圧力容器の底に落下します

底の水が干上がったとして圧力容器は厚い鋼鉄で出来ています。
鋼鉄の融点も約1500℃程です。
2000℃のペレットは自分よりも冷たい鋼鉄に冷やされながら、鋼鉄を熔かして行きます。
鋼鉄(密度7.85)より重たいペレットは熔けずに、溶けた鋼鉄の中を落ちて行きます。

溶融した炉心が圧力容器の底を貫通」することなど考えられません。
貫通する以前に底はトロトロに熔けてしまっているのです。
「貫き」ようがないのです

格納容器の底には、圧力容器に存在した冷却水が排圧弁から吹き出して液化した水が溜っています。
ペレットが圧力容器の底を貫通したとしても、格納容器の底の水の中に落ちるので熔けることはありません。

「床面のコンクリートを侵食しました」と書かれていますが、どんな浸食を受けたのか?
溶融した炉心とありますから熱で浸食された?
格納容器の水も干上がっていたとすれば床面は熔け落ちた炉心の影響を受けます。

「コンクリート・融点]でググると1200℃との回答がありました。
こちらも高温のペレットを冷やしながら熔けていきます。
融点2860℃の二酸化ウランが熔ける事はありません。

核燃料の「メルト」なんて考えられないのです。

原発の運転中の燃料ペレットの中心部の温度は2000℃程だそうです。
これは燃料棒が水に浸かっていて、発生した熱は水に冷やされているからです。
制御棒が挿入され核分裂連鎖反応が停止するとどうなるのか?
「連鎖反応」が停止しても、中性子は炉内に残っていますから単発的な核分裂は発生します、
部分的には一瞬の連鎖反応(臨界状態)も起きますが連鎖が継続する事はありません。
新たな中性子が作られ、熱が作られる、しばらくは燻ぶった状態が継続する事になると思われます。

事故発生後50分で全電源喪失、この後圧力容器の水位が下がって行きますが、一部が水に浸かっていた19時頃までは冷却が行われていますからペレットの中心部が2000℃を超える事はありません。
制御棒を下ろしてから約4時間が経過しています。
燃料棒が水から露出した部分では減速材の水が無くなって、熱中性子が作られなくなります。
一部の中性子はウラン238に衝突して跳ね返り、中性子同士が衝突して減速される事により熱中性子は作られますが核分裂を起こすのは幾らもないでしょう。

15時40分全電源喪失
19時30分燃料棒露出    3時間50分=13800秒
この間に蒸発した水の量を150トンとすると、290℃の水を1kg蒸発させるのに必要なエネルギーは1477.6kJ/kgですから、
 150x10^3x1477.6=2.216x10^8kJ
 2.216x10^8÷13800=1.606x10^4kJ/S
全電源喪失以降約4時間の炉心の発熱は平均すると16060kwとなります。

信用して良いのか分かりませんが炉心の発熱についてこんな情報もあります。
直後      定格出力の7%   9.66x10^4kw
1時間後    定格出力の2%   3.76x10^4kw
2時間後    定格出力の1%   1.38x10^4kw

約4時間の平均が1.6万kwという数字は、この情報と矛盾していないようです。
燃料棒の底が露出する頃には、当初の炉の余熱も核分裂反応由来の熱もほとんどなくなり、発熱は核のカケラの崩壊エネルギーが主になります

私の怪しい計算では、セシウム137が発する崩壊熱は5.4kw。
沃素131は11日分しか残っていないのに55.5kw。
半減期の短い核種、たとえば半減期6時間の核種では200kwと計算されるものもありました。
こちらは燃料棒露出時には崩壊熱は約半分になりますが、セシウム137は30年経たないと半分になりません。
長々と発熱し続けます。
半減期1時間未満の核種は冷却中にあらかた崩壊を終えていますから、半減期1時間以上の核種が燃料棒露出後も発熱を続けることになります、20種くらいが崩壊を続けています。
沃素131の半減期は8日、それ程長くないのですが4時間経ったからといって崩壊量が幾らも減るものではありません。
燃料棒露出以降の発熱量は1時間や2時間では簡単に減っては行きません。

大雑把な計算をする為に、乱暴ですが燃料棒露出以降の発熱量を8000kwと仮定して見ます。
福島1号機の燃料棒集合体の本数は400本。
となると燃料棒集合体1本あたりの発熱量は20kw。
1本の燃料棒集合体に収容される鞘の数は81本。
鞘1本あたりの発熱量は246w。
これで鞘を構成するジルコニウム合金を熔かすことはできるのか?
鞘は密集しています、水はなく290℃の水蒸気が鞘の冷却をします。
水蒸気が暖められれば圧力が増し、外に出て行く分だけ熱が放出されますが、直接水で冷やすのに比べて効率は良くありません。
籠った熱で鞘が熔けるのかどうか?

順調に核分裂が行われて、冷却も行われているときの燃料ペレットの「中心部」が2000℃だと言うのです。
制御棒が下ろされて、炉の発熱が定格出力の7%に落ちて、2時間して1%、それから2時間した時に燃料ペレットの中心部の温度はどれ程なのか?
燃料棒の4分の1が水に浸かっているときまでは、冷却は行われているのですから中心部の温度は相応に下がっています。
燃料棒が露出して、冷却方式が水冷から空冷に変わったとして、燃料ペレットの中心部の温度が2000℃に戻り、燃料ペレットの表面の温度がジルコニウムの融点を超える1500℃以上になるものなのか?
私には判断がつきません。

圧力容器の底の水が無くなって、底に落ちた燃料ペレットの温度が800℃にもなると、鋼鉄の熱伝導度からして、刀の焼き入れの温度と同じですから圧力容器は真っ赤と言うより黄色に近い色になって熱を放っています
圧力容器の底には制御棒挿入の為の鋼鉄の筒が何本も突き出ていますが、この棒も真っ赤になってヒートシンクの役割をしていそうです。
燃料ペレットの熱源は核分裂反応が停止して、半減期が1時間以上の核のカケラの崩壊熱だけです。
ペレットの発熱で底を熔かしきれるのか?
熔かせたとしても融点2860℃の燃料ペレットが熔ける事はありません。

核燃料の「メルト」なんて考えられないのです。

チョーノブイリ原発でメルトダウンが起きたのは、制御棒が暴走の勢いで吹っ飛び、黒鉛炉故に黒鉛がいつまでも中性子の減速を続けていたので、核分裂反応が一部継続していたからです。
軽水炉では減速材の水が蒸発してしまいますから、核分裂反応が継続する事はありません。

メルトダウンなんて(真っ赤な)です

福島第一原子力発電所事故の経過と教訓
https://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/outline/

1号機の事故について
https://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/outline/2_3-j.html

(一言)

記事の更新は一日置きに行う予定です。