畳表は、い草を綿糸や麻糸、合成繊維の糸で織ってつくられます。天然い草を用いず、合成樹脂(ポリプロピレンなど)や木材繊維紙と樹脂とで加工されたもの、塩化ビニル製の畳表もあります。
畳表にはJAS(日本農林規格)が定められていますが、畳表の緑色は、マラカイトグリーン等の着色料でつけられたものが多いです。
「青竹染料(マラカイトグリーン)」には重金属(ひ素,カドミウム)が含まれています。
前回述べたように畳床にはフェンチオンやフェニトロチオン(スミチオン)などの有機リン系殺虫剤が使われています。これらは徐々に室内に揮発し、室内空気を汚染する可能性があります。
これらの薬剤は1m2当たり、フェンチオンで0.7~1g、フェニトロチオンで1~1.5g程度使われています。
ところが水田でウンカなどの防除に散布されるフェニトロチオンの量は、1m2当たり約0.05gです。すなわち畳の防虫にはその20倍という高濃度で使われているのです。
東京都が調査した結果、防虫処理した新品の畳を入れた部屋の空気には、最高で1m3当たり7マイクログラムの殺虫剤成分が漂っていました。(室温30℃、畳の上10cmで採取。なお、1マイクログラム=100万分の1グラム。)農薬空中散布の安全基準は2マイクログラムですから、その3.5倍汚染されていたことになります。
本来の畳床は稲ワラで作られますが、この稲を栽培するために通常は農薬が用いられているのでその残留も問題です。無農薬栽培の稲ワラを畳床に使った畳も販売されています。
公団住宅で、畳に防虫剤が使われるようになったのは、昭和40年代始めに東京都内の団地でダニが異常発生したため、防ダニ効果を持つものとして有機リン系殺虫剤を使うようになったためで、それにならって、他の公共住宅でも使うようになりました。
また、同じく40年代始めに、東京都住宅供給公社の団地でケナガコナダニが大量発生し、それが契機となって同公社は発泡スチロール製の畳表を指定し、ワラ床以外の畳が普及していきました。
畳は人間の出す水分などをよく吸収しますが、それがオーバーフローしたときからは、カビさらにはそれを餌にしてダニの温床になり、梅雨末期に集中的に発生します。
サッシを用いた住宅は気密が高く、室内結露が起こりやすく畳も湿気りやすい。コンクリート造は建築後数年はコンクリート自体に水分が多いです。さらに畳を干す習慣がなくなった、というより団地では出来なくなったために、ダニが発生しやすくなったこともあります。
RCでなくとも気密が進んだ床の上に本物の畳を置くと、畳の下が蒸れます。畳の下に透湿性の悪い合板を敷くと、畳の下に黒カビが発生します。防カビ剤防虫剤入りのプラスチック畳が出回ってきたのも無理からぬことです。
カビやダニの発生は室内環境とくに湿度に原因があります。
カビは湿度が高いほど成長速度が速く、湿度100%が最も成長し、75%ではその半分、そして湿度が55%以下ではほとんど成長しません。
ダニは、温度・湿度が高いほど発生しやすく、湿度70%以上では発生が多く、逆に50%以下では発生がすくないです。
ただし、室温20℃で湿度50%以下であったり、室温25℃で湿度40%以下のときには、喉の粘膜の乾燥(口腔粘膜乾燥)がおこって繊毛の活動が低下し、風邪などへの防御機能が低下します。またインフルエンザウィルスは、湿度50%以上では不活性化されます。
室内での湿度は、50%前後が適正で、実際には40%~60%程度にした方がいいようです。
畳を使う場合には、薬剤を使わない畳を入手することがまず重要でしょう。
そして天日干しをまめにすることが最も良い防除方法のようです。そのためには、畳を移動しやすいようにしておくこと、家具を乗せない工夫もいりますね。
置き畳にしたり、畳の下に通気層をつくる方法がいいのでしょうか。