『2つの樹』②
「あ~どうしたらいいのだ」
木こりが頭をかかえながらつぶやきました
その様子を見ていた樹が言います
「どうしたのですか?」
「いや、ちょっと困ったことになってしまって。
明日中に王さまへ大きな木を一本差し出さなければならないのですが、どうしても見つからないのです。」
木こりはつらい胸のうちを東の樹に話しました
「何におつかいになるのですか?」
東の樹は優しく問いかけました
「親や家のない子供たちのために、大きな家をつくってあげるのです。
でも、みんなからことわられてしまって…」
東の樹は、そんな木こりの様子をじっと見つめて、やがて決心したかのように静かに言いました

「私を…お切りください」
え!!驚いた木こりは
「とんでもない。あなた様はもう長い間ずっとこの地をお守りくださったありがたい樹。
切ることなどとてもできません!
どうぞどうぞ、そのままでいて下さいませ。」
「いいえ。私はもう自分がそれほど長くはないことを知っております。
今までに何代も、いえ何十代にわたってあなた方のいこいの場になれたことは、私の誇りでした。」

「最後に、もう一度お役に立てるのでしたら、これ以上の喜びはありません。」
木こりはおそるおそるたずねます
「で、では、この村人のいこいの場は?」
「あなたもごぞんじのはずです。
川の向こうに若く立派な木々たちが新たなるいこいの場をつくってくださっているでしょう。
最近は、私のもとをおとずれる人々もめっきり減りました。
すべてはちょうどよいのですよ…
さあ。
私にはまた楽しみができましたよ。
子供たちの喜ぶ顔。。
そして何より、一度も見たことのない新しい世界を見れるんですもの…」
そう言いながら東の樹は、果てしない夜空をうっとりと見つめていました
東と西の真ん中に流れ星が落ちました

~つづく