はじめていっしょに寝たとき、
おねしょをしてパンツをかえてあげたら、
ぬれているおふとんのほうに私を眠らせた子がそこにいる。
(おとうさんがね、卵を買ってこいっていってね、
ぼく、ちいちゃかったからはしって、
わっちゃって、叱られたの。
ぼく、いや、よっぱらうからいや)
といった子が、そこに寝ている。
……
二歳のころ、虐待児として近所の方の通報で病院に行ったとき、
すでにチアノーゼが出ていたというこの子。
……
ただ、最初の一年は、なにもせずに見ていたけど
なんとなく子どもたちに聞かせる音楽が
童話集などより、いつのまにか現代的だと思うロックをかけていた。
子どもたちにどうひびいていくか、
体で受けとめてほしい。
そして、電車にも、塔にも、プールにも、かべにもドアにも、訓練室の大きな壁にも、みんな絵を書いた。
ガラスにも書いた。
よごれてしまうからではなく、よごれがみえるから、洗うため、
なるべく白っぽいセーターをきせていた。
こどもたちが、そこに何色の絵具を広げてもあうように。
そして、こどもたちは、おしゃれになった。
ロックで9年間育った子は
自然に、リズム感をからだにつけた。
小さな子がビートにのって、からだを動かす。
車イスでロックがおどれる。
病院からねむの木に直行のつとむちゃんは、
この子は甘えたことが少ないんだろうと思って
ときどき幼児言葉をつかうのを、
私はそのままにしておく。
………
いつか病院へ行くために、新幹線にのったとき、
見送りに来た指導員に手を振って、
「いってらっしゃーい」といった子。
いつも学園にいて、
「いってきまーす」をあまりいったことのない子、
外にいったことのあまりない子にしてはいけない。
ほっぺをそっとなでた。
抱いても、なでても、この子の乗り越えていく障害はつらいなと思う。
今はかわいいけど、大人になるときを考えると
私は……おもたい。
……
この子、野原にさくつくしんぼうみたい、そう思う。
いじらしく、かわいくて、まだよごされていない。
田舎の子のような心をそのまま持って、そのまま絵をかく。
だけど、つくしんぼうではいやだ。
私は、美しい花をさかせたい。
『続 ねむの木の子どもたち』より。
宮城まり子さん。。

*本日のあじさいは、ちょっとおもしろいです♪
花弁の中心に可愛らしい粒があるでしょ?
なんと、それが花ひらいていたんですよ~
花の中に、小さい花が咲いてる♪
ほんと、生命とは奥深いというか、
美しいですね…☆
宮城さんのように、よく見ないと気づきもしなかったな~と想います

(写真、見にくいかな?)