一番きれいなもの、買ってあげたかった。 | シン・135℃な裏庭。

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あんないい絵を描くのに、


みさちゃんは、お金の使い方、買い物っていうのを知らなくて、


私はいつも誰か職員をつかせていたけど、


欲がないのか、自分のものも買わないし、


貯金も貯めるためではなく、貯まってしまう。


与えられるものだけで、満足でいっぱい。


そんなみさちゃんには、

お金って、いただいたり、また使ったりするのだと、覚えてほしかった。

やっと、職員がついて、クリスマスにハンカチの贈り物をしてくれる。


………


今年初めて、現代美術館の展覧会のごほうびとして買ってきている。


相談の上だそうだ。


みさちゃんの目が糸みたいに細くなって幸せそうにくれた品物は重かった。


みんなの前で丁寧に紙包みを広げた。


透明なアクリルのティッシュペーパーボックスケースだった。


それは、なんの色もない無色の透明、


ひょっと見ると、小さなバラの花が描いてある。

けれどとてもきれい。


本気で私はみさちゃんに言った。


「きれいねぇ、かわいいねぇ、私に買ってくれたの?」


「うん」


「自分で選んだの?」


「あ、た、し、が、見たの。


おかあさんに一番きれいなもの


買ってあげたかったから」


「ありがとう」






『まり子のねむの木45年』より。



宮城まり子さん。。









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*本日のあじさい


今日は久しぶりの雨♪