*ウサギとカメ②*
ウサギとカメが競争することになり、日取りを決めた。ウサギは競争のことなど気にもかけず遊びほうけていた。
一方のカメは親類の家を訪ね歩き、競争の日の朝早く、会場の道の脇に一定の間隔で隠れているようにお願いした。
いよいよ競争が始まり、ウサギはのんびりと走った。カメがどんなに頑張ったところで、自分に勝てるはずがないと考えたからだ。ウサギはしばらくして、もう十分引き離しただろうと思い立ち止まって後ろを向くと、近くに隠れていた親類のカメが現れた。ウサギはびっくりして、今後はもっと早く走り始めた。
しばらくしてからまた立ち止まって後ろを向くと、近くに隠れていた親類の他のカメが現れた。すっかり慌ててしまったウサギは、ものすごい速さで走りだした。あともう少しでゴールというところで立ち止まって後ろを向くと、近くに隠れていた親類の他のカメが現れた。それ以降、ウサギは途中で止まったりせず、ひたすらゴールを目指して走り続けた。やっとのことでウサギはゴールに飛び込んだが、ゴールするやいなやパタリと倒れて死んでしまった。
世界各地にウサギとカメの競争の寓話がありますが、これはアフリカの寓話です。なんだか地域性、民族性の違いを感じますね。この考え方は、儒教的な意識が強いアジア、特に日本では違和感があると思います。しかしウサギとカメ①もウサギとカメ②も、身体能力に劣った者が身体能力の優れたものに勝つという話です。
①では、身体的弱者であるカメが勝てたのは、あくまで相手の油断があったからで、何か知恵を働かせたわけではなく、ただ愚直にまじめに自分が出来ることをしたのみで、たまたま幸運が舞い込んだのです。
②では、身体的弱者であるカメが勝てたのは、知恵を働かせ準備を整え、仲間に協力してもらったからです。またウサギは汗をかくことができず、走っていると体温がすぐに上昇するので、長距離を走ることが出来ないことも影響しています。
整形外科医が考える教訓
・サッカーワールドカップを見ていて、小柄なアジア人が大柄なヨーロッパ人種、身体能力の高いアフリカ人種、サッカー人口の多い南米と同じ土俵で戦うのは至難の業です。もちろん諦めたらそれ以上はありませんが、同じ土俵に上がらない事が重要で、日本は他国に劣る体力や身体能力差を、組織力や戦術で埋めることが重要です。
・子供の成長にはばらつきが大きいにも関わらず、同じような歳の子供に与えられる課題はみな同じです。特に運動に関しては、それがケガにつながる事も多々あります。一方で、中年以降も運動能力低下のばらつきが大きくなってきます。同じ歳の友人や知り合いが行っているからと、無理をすればケガにつながります。年齢を重ねれば、動きにくい関節や行いにくい動作が増えます。この身体的ハンディキャップがあればあるほど、知恵を働かせ準備を整え、ケガによる新たなハンディキャップを生じさせないことが肝要です。
・最近は介護保険制度が完成し、いろいろな介護サービスが充実しています。老化で出来なくなったことがあっても、まずは自分自身が工夫をして、出来ない事はサポートしてもらえれば、今までに近い生活を送る事が出来ます。整形外科医の仕事は、ケガをしないアドバイスをし、ハンディキャップを乗り越えるコツ(知恵)を伝え、家族やケアマネへと知恵を繋ぎ(準備)、介護サービスの提供(協力)へと導くことです。
・よくテレビの健康番組で、「腰痛に効く運動」「膝痛に効く運動」などが盛んに放映されています。しかし、年齢を重ねるにつれて、不具合の部位や程度は様々です。テレビで勧められたからと言って、無理な運動や体操をしてケガをする方がいらっしゃいます。自分の能力を知り、その能力に応じた対策法を考えることが重要です。その運動を行って不具合がある場合は、そもそも不向きな運動である可能性があります。また同じ運動や作業でも、小分けにして織り交ぜて行えば、不具合が起こりにくくなります。“根性”は禁物です。