膝痛は原因に応じて痛い部位が変化し、それは大きく分けると5つに分類できます(図1)。変形性膝関節症の大きな原因である大腿四頭筋筋力低下は膝蓋骨をぐらつかせ、それが“e”領域の違和感を生みます。その後も筋力が低下した状態が続くかまたは筋力以上の負荷が継続すると、物理的に膝が内反し膝関節内側が狭くなります。それが半月板への負荷となり内側半月板損傷を引き起こし、“cに痛みや圧痛が出始めます。その後は内側関節軟骨損傷や関節変形に移行し、「人間が持つ“自然治癒能力”」の図で示す骨棘がレントゲンで確認できるようになります。ここまで進行するとO脚となり(図3a)普段履く靴踵部外側が擦り減ります(図3c)

すなわち変形性膝関節症は、大腿四頭筋筋力低下→膝関節不安定化→膝内反変形→内側半月板損傷→内側軟骨損傷→関節水腫と進行します。半月板と軟骨損傷の治癒は難しいので、介入可能な大腿四頭筋筋力強化と内反変形改善が問題解決の糸口となります。一般的に行われている電気治療やヒアルロン注射、サプリメント、膝サポーター、痛み止め内服などは、いわゆる“受動的”対処です。よって変形性膝関節症に対しては“能動的”対処がキーポイントとなります(自分で苦労しましょう!)。

 まずは大腿四頭筋訓練を行いましょう(図2)。靴踵部外側のすり減りが多い場合は(図3c足底装具ラテラルウェッジを使用しO脚を改善しましょう(図3b。足底装具ラテラルウェッジは、整形外科病院で装具屋さんが採型作製するので、時間も値段もかかります。そこでお試しとして、自作ラテラルウェッジをお勧めします(図3d)。古い靴のインソールを真ん中で切断し、外側部分を新しい靴に入れその上に新しい靴のインソールを敷きます。物足りない場合はもう一枚外側部分を敷いてください。最初は違和感があるかもしれませんが、そのうちに慣れてきますし、靴踵部外側の擦り減りは目立たなくなります。


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先日福岡で開催された日本整形外科学会ではいくつかの発表形態があり、高名な専門家が知見をまとめて発表する“講演”と、製薬会社や医療機器メーカーが主催する“ランチョンセミナー”があります。ランチョンセミナーは“講演” と違い利益相反まみれの偉い先生のお話になる傾向が強いものの、現在の医療経済状況を実感できます。“講演”の中で変形性膝関節症ネタは4/94でしたが、ランチョン・アフタヌーンセミナーでは19/64が変形性膝関節症ネタです。特に膝軟骨再生医療PRP・APS・ASC療法7/19人工関節が5/19と突出しています。私が医師になったころのランチョンセミナーのネタは、ボルタレン・ロキソニンに代表される痛み止め、次に抗生剤、その後腰部脊柱管狭窄症の内服(オパルモン)、関節リウマチのバイオ製剤、リリカ・トラムセットなどの鎮痛剤が盛況でしたが、最近は前出の自己細胞(血液、脂肪)を利用した再生医療です。PRP・APS・ASC療法は自由診療すなわち保険適応外、全額自己負担で、その効果は一般的に12カ月と言われています。近年人気のNISA投資も自己責任であるように、この再生医療も自己責任ですから、正確な情報をもとに費用対効果を考えて決断しましょう。



次回は「膝痛のトリビア:変形性膝関節症に似た疾患」です。