二ルソン | John's BOOROCKSブログ-I Love The Beatles, Fender Guitars & Movies!

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ハンドメイド・エフェクター・ブランドBOOROCKS(ブロックス)のスタッフによる、音楽(BEATLES & Fender)と映画の気ままなブログ。

今日もビートルズ外伝とも言える、事実に基づいたフィクションをお送りしましょう。楽しんでください。



二ルソン


 ここはアメリカのカリフォルニア州のどこか。比較的近年デビューしたばかりの彼にとって雲の上の存在といったら、間違いなくビートルズであった。いや、それは誰でも一緒だったかもしれない。どんなベテラン・アーティストでも、ビートルズはショービジネスの頂点に君臨する雲の上の存在だった。彼は昨日の酒が響いているのかいつもより早い朝に目覚めていた。その時、それを見ていたごとく電話が鳴った。『誰だろう、こんな朝早く?」と思いながら彼は受話器を取った。それは彼の眠気をいっぺんに吹き飛ばすような電話だった。

 1960年代も半ばを越えたあろ日のことだった。いつもの通りスタジオ入りしたジョンは、興奮したようにポールと話していた。「とんでもないアーティストを見つけたんだ。兎に角曲のセンスがいいんだ。一度聞いてみてくれよ。『二ルソン』というアーティストなんだ。まだデビューしたばかりだが、いいんだよ、きっと君なら気に入る曲ばかりだよ。」興奮気味のジョンを不思議そうに見ていたポールは、ジョンがよこしたアルバム・ジャケットを受け取った。「…『二ルソン』か。ジョンが興奮するほどの曲ってどんなだろう?」とポールは思った。

 翌日の同じスタジオで今度は興奮気味のポールがジョンの到着を待っていた。ジョンの車が見えた。ロールスロイスを黄色く塗るなど、ジョン以外誰が思いつくだろう。ジョンが降りてきた。待ち構えていたポールは、早速ジョンに話始めた。
「ジョン、君の言う通りだったよ。素晴らしかったと。久しぶりに興奮した。」しばらく二人で二ルソンのことで盛り上がっていた。
 すると突然ポールが思いついたように言った。「そうだ。ある日突然僕らから賞賛の電話を貰ったらどうだろう。」
 ジョンも盛り上がって、「面白い。それ。」二ルソンの慌てる姿を思いながら言った。
「マル、二ルソンの電話番号調べておいてくれる?」ポールはロードマネージャーのマルカム・エヴァンスに頼んだ。

 その日の夕刻、マルの調べてきた電話番号を手にポールが電話を掛けようとしていた。『ロンドンとアメリカ西海岸の時差は8時間で、今は夕方4時だからあちらは朝の8時のはずだ。』
 寝起きの二ルソンにとって早朝のこの時間、誰だろうと思いながら受話器を取った。「やあポールだよ、ビートルズの。君のニュー・アルバムは素晴らしい。僕は大好きだよ。君は天才だ。」一通り賛辞の言葉が並べられたが、驚いた二ルソンが言った。
「えっ、あ、あなたは本当にビートルズのポールですか。冗談はやめてくださいよ。」
「冗談なんかじゃないよ。僕はポール。ロンドンから電話してるんだ。今はそちらは朝だろうけどこちらは夕方4時だよ。」
「本物ですか。本当にポールですか。ワオ、夢を見てるみたいだ。」二ルソンは興奮を抑えきれずに電話を切った。

 一週間後、同じ時間二ルソンはまだ夢の中にいた。彼の眠りを覚ましたのは一本の電話だった。「ハロー、おはようジョンだよ、ビートルズの。」
「えっ、ジョン!信じられない。本物ですか?」
「本物さ、君のアルバム聞いたよ。素晴らしい出来だったよ。君は天才だ。」
「えっ、えっ、本当に信じられない。ジョンもポールも。」

 一週間後の朝、彼は早起きして待っていた。ジョージからの電話があるのではないかと。残念ながら電話はなかったが。