アイ・アム・ザ・ウォルラス | John's BOOROCKSブログ-I Love The Beatles, Fender Guitars & Movies!

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ハンドメイド・エフェクター・ブランドBOOROCKS(ブロックス)のスタッフによる、音楽(BEATLES & Fender)と映画の気ままなブログ。

こんにちは。今日もリハビリ中のJohnです。ビートルズ関連の事実に基づいたフィクションをお送りしていますが、今回もそれをお送りします。楽しんでください。




アイ・アム・ザ・ウォルラス




 ジョンは読んでいた本を閉じて、それをテーブルの上に置いた。その本には『Through the Looking-Glass, and What Alice Found There(鏡の国のアリス)』とある。この本は、『不思議の国のアリス』の続編として、19世紀にイギリスの数学者、チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが書いたもので、ルイス・キャロルという変名を使っていた。ジョンはこのアリス・シリーズが大好きであった。「アリス」は児童文学作品ながら、何故ジョンはこの作品」を好んだのか?何よりもこの作品の世界観が好きだったのだ。きのこや薬を飲むことで大きくなったり小さくなったり、まるで彼自身が体験していたLSDによるトリップ感と同じなのだ。

 彼はこの世界観を曲にしたいと考えた。まず最初に思い浮かんだ歌詞は「僕は彼で、きみも彼で、君は僕、だからみんな一緒…」というシュールなものだった。実際に薬を飲んだ者同士でそう感じることがある。もうひとつ思い浮かんだのが、「卵男のハンプティ・ダンプティ」だった。ゆで卵に目鼻が付いたような強烈なキャラクターが彼のイメージの中に強烈に残ったのである。このキャラクターは、もともと『マザーグース』に登場した人物だ。そしてアリスのス-リーの「The Walrus and the Carpenter」という詩から「walrus」という言葉を使おうとジョンは思っていた。

 翌日Tジョンはスタジオに入り、昨日読んだ本の話、そしてその話をモチーフにした曲を作ろうとしていることをポールに告げた。ポールはストーリー仕立の歌詞が得意だったが、ここではジョンの流儀に従って、脈絡のない言葉を並べて言った。その中でジョンの気に入った言葉を見つけようというのである。次々に並べられていく言葉の羅列。中にはアリスに登場した「トランプの兵士」「チシャ猫」、「マッドハッタ―」、「三月ウサギ」などが出たが、もろそのままだ、ということで削除されていった。残ったのは「Tシャツ株式売社」「コーンフレイク」「黄色いどろどろしたもの」「英国式庭園」「ハレクリシュナ」「エドガー・アラン・ポー」などだった。ジョンはこれを持って帰り、文章に織り込んだ。キメの部分には、「I Am The Walrus」と「I Am the Egg-man」を使おうと決めていた。

そうやってあのシュールな歌詞ができあがった。胸にあったのは、LSDなどのドラッグを服用した時のトリップ感を表現したかったのだ。だから敢えて脈絡のない文章を連ねたのである。結局、この曲は「ハロー・グッドバイ」のB面に集録された。Ā面になったポールの曲との差異は明らかで、二人の方向性の違いが如実になってきた時期でもあった。

 後にこの曲は、ジョンの傑作として注目を集め、後にこの曲調を持った楽曲ジャンルを生み出すことになる。奇抜なコード進行を持ち、うねるようなリズムを伴ったジャンル、グランジである。その証拠にグランジの影響下にあったイギリスのバンド、オアシスがライブでこの曲をカバーしているのだ。それが見事にグランジ・ナンバーに仕上がっている。音源に残っているので、一度聴いてみてほしい。