ビートルズ、シングル盤私的雑感(その130)/『ザ・ナイト・ビフォア/アナザー・ガール』 (1) | John's BOOROCKSブログ-I Love The Beatles, Fender Guitars & Movies!

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今回も1960年代から70年代にかけて、世界中で数多くリリースされた各国独自のビートルズのシングルの話です。今回からは、1965年日本で独自に企画されたシングル『The Night Before / Another Girl』の話です。


(日本盤シングル『The Night Before / Another Girl』の初盤ジャケット)

このシングルの二曲は、映画『HELP!』の挿入曲として作られたもので、どちらもポールのペンによるものです。A面B面に、ポールのポップ・ロック・ナンバーをカップリングにするというセンスも、非常に面白いですね。
「ザ・ナイト・ビフォア」は、ポールの曲の作り方が見えてきそうなナンバーです。彼は明らかに、この曲をコード進行優先で作ったと思われます。まあ、その手法はジョンもよくやっていますが。(特にサイケデリック期以降は!)

ロックンロール期を通り抜けたビートルズが、新しい段階に入ったことを示す作品の一つがこの「ザ・ナイト・ビフォア」で、普通のロックンロールで使用されるコード進行を排除し、斬新かつ複雑なコード進行を模索し始めた時期でした。「ザ・ナイト・ビフォア」でもポールは、非常に収まりが良いコード進行を生み出しています。最初の4小節(D/C/G/A)を二度繰り返し、この部分でも、「Help!」や「恋のアドバイス」などのように、コーラスの掛け合いが入っています。このあたりは、全員が歌えるというビートルズの強みを十二分に活かしたアレンジですね。

さらに展開部の8小節で(Bm/Gm/Bm/Gm)そして(D/G7/D/F, G)というメジャーとマイナーを上手く取入れ、メロディにアクセントを付けています。さらにミドルの8小節では、ニ長調からト長調に転調しますが、その手法は「I Want To Hold Your Hand」や「From Me To You」と同じもの。これは本当に効果的ですね。その上、リズムも変えてラテン風のアクセントを取入れる事で、主旋律部分とは趣きを変えています。これも見事。さらにこのミドル部をニ長調に戻すコード進行も、流れていて不自然さを感じさせません。

このコード進行の組み立て方や、リズム・チェンジなどのアレンジによる変化を付ける事で、シンプルながら完成度の非常に高い楽曲に仕上げています。このあたりがビートルズの真骨頂で、特に「シンプル」というのがキーワードです。複雑なアレンジや、多くの音を重ねることで完成度を上げる事は比較的簡単なのですが、シンプル、かつ完成度が高い、というのが、最も難しい事。それを難なくこなすのが、まさにビートルズなのです。

この続きはまた明日に。