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このムック本は、1999年に河出書房が「文藝別冊」の特集本として刊行したものの増補新版です。手塚治虫という人は、ビートルズと並んで私の永遠のヒーローの一人。ギターを始めるまでは、漫画家を目指してストーリー・マンガを描く日々を過ごしていました。そんな私の心の師が手塚治虫さんでした。
この本には、手塚さんに関わった多くの人々の、手塚さんへの想いの丈が詰め込まれています。手塚さんには多くの顔がありました。もちろん本業のマンガにおいても様々なジャンルの作品を上梓しており、数限りないファンはもちろん、非常に多くの後進マンガ家達、編集者からもリスペクトされています。さらに、それだけではなく日本のTVアニメーションの草分け的な存在でもあり、彼の下からは多くのアニメーション作家、脚本に携わった作家のクリエーターが巣立っているのです。そういったそれぞれのジャンルで関わってきた人達の話は、本当に興味深いものばかり。例えば、NHKとのコラボレーションで描かれた作品『ふしぎな少年』の誕生秘話など、内容も非常に多岐に亘っています。
また、手塚ファンには垂涎ものの、未公開資料が数多く掲載されています。こういった記事を読むに付け、手塚さんの始めたストーリー・マンガやTVアニメーションなどが現在の日本が世界に誇る文化を生み出したのが再確認でき、この本のサブタイトルとなっている『地上最大の漫画家』という事実が実感させられました。手塚ファンでしたら、見逃せない一冊、読み応えのある一冊になっています。
手塚治虫という人の偉大さは私が語るまでもないのですが、その業績の大きさを忘れている、あるいは気付かずにいる人も多い様に思われます。まず、現在の漫画の隆盛は、手塚治虫が居なければ有り得なかったということ。手塚以前ではストーリー漫画は無かったと行っても過言ではなく、彼の描いた作品によって触発された漫画家、例えば石森章太郎、横山光輝、藤子不二雄、赤塚不二夫なども現れなかったのです。また、現在では毎日何本も放送されているTVアニメーションも手塚治虫が先鞭をつけたものであり、やはり手塚が居なければ現在のアニメーションの隆盛も有り得なかったのです。漫画のみならずアニメーションまで、その根本をたった一人で作り上げたその偉業は、もはや天才と言う言葉でも足りないほどです。何故ならば、現在「クール・ジャパン」の名の下に日本が誇るアニメーションやコミック文化が世界を席巻していますが、その大本を作ったのが手塚治虫という、ただ一人の才能によるものだったからです。
これはまさに音楽界でビートルズが行った音楽改革と非常によく似通っています。ビートルズは、単純なロックンロールをロックと呼ばれる音楽文化にまで昇華し、小さな音楽ビジネスをビッグ・マネーが飛び交う巨大マーケットにまで一挙に拡大した訳で、ビートルズが無ければ、マイケル・ジャクソンやレッド・ツェッペリンなどが活躍するフィールドも無かったのです。
話が大きくなってしまいましたが、皆さん、手塚治虫さんの偉業をもう一度見つめ直してみませんか。