最近読んだ本/安生 正『生存者ゼロ』 | John's BOOROCKSブログ-I Love The Beatles, Fender Guitars & Movies!

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安生 正・著『生存者ゼロ』宝島社文庫刊



2013年に宝島社より単行本(原題『下弦の刻印』)として出版され、「このミステリーがすごい」大賞を受賞した話題作が、早くも文庫化されました。結構な長編なのですが、読み出したら止まらない! 一気に読んでしまいました。
安生 正(あんじょうただし)氏は56歳の新人作家さんで、現在でも建設会社に勤務しておられるとのこと。本作が長編デビュー作ということですが、しっかりとした筆力は、やはりその年齢ゆえかと思われます。
この作品は、アウトブレイク、あるいはバンデミック(一定地域内で伝染病が大発生すること)をテーマとしています。

そのストーリーは・・・北海道で謎の疫病が発生しますが、100%死をもたらすその疫病の対策を練るために、国立感染症研究所の元研究員だった富樫博士が時の政府に呼ばれます。富樫博士は疫病の拡散の警鐘を鳴らしますが、その疫病は一旦自然終息したかのように思われると、富樫は厄介払いされてしまいます。しかし疫病は、一ヶ月後に再び猛威を振るい始めます。その対策を練るため、陸上自衛隊の𢌞田三等陸佐が派遣されます。やがて疫病が猛威を振るうのが新月の時であることが判明しますが・・・。

この話で最も興味を惹かれたのが、大災害を迎えた時の政府の無為無策さで、ほぼ東日本大震災での菅内閣の対応に関する問題点を、そのまま再現したかのような表現が為されていること。あの大震災時への総理の対応の諸問題を目の当たりにしている我々にとって、本当にリアリティを持って読み進めることができました。また、疫病をもたらす病原体の正体が何かを追求する前半部は、本当にミステリー仕立てですが、後半にその正体が判明するとスタイルが一転してパニック小説仕立てとなって、スピード感が一挙に上がります。その筆力は、本当に見事。作者の安生さんの発想力は、恐らくSFも書けるのではと思わせるものを持っておられます。
後半からラストまで、一挙に読み進めてしまったほどの面白さ。おススメです。