飼い主が窮地に陥っているとき、飼い犬は助けてくれるのだろうか?真剣に行われた科学実験(米研究) | まろのパパさんのブログ

まろのパパさんのブログ

まろくんの成長?とお馬さん中心のきまぐれ日記

飼い主が窮地に陥っているとき、飼い犬は助けてくれるのだろうか?真剣に行われた科学実験(米研究)

 
1

 「ティミーは井戸の中だ」というタイトル。これは一体に何につけられたタイトルなのだろう?小説か、マンガか、映画か、あるいは誰かの新曲か?

 答えはそのどれでもない。実はこれ、科学論文のタイトルなのだ。

 副題まで含めれば分かりやすい。「ティミーは井戸の中だ:犬の共感と向社会的助力 (Timmy’s in the well: Empathy and prosocial helping in dogs)」だ。「ティミー」とは、ドラマ『名犬ラッシー』のシリーズでラッシーの相棒となる少年である。

 この論文は、「飼い主が(井戸にではないが)閉じ込められて助けを呼んでいる」という状況をつくり出し、犬の反応を見る実験の報告だ。さて、犬はどんな反応を示したのだろう?
 

犬は飼い主を助けに来るのか?

 「犬は人間の感情を推し量り、泣いている人に寄り添う」ことは知られている(関連記事)。しかし、泣いている人に注目した犬が、実際に救助する行動を起こすかどうかはどこで決まるのだろうか?

 実験には、様々な種類やサイズの犬と飼い主34組が参加した。

 飼い主は順番に、大きな窓のついたドアの向こうの小部屋に「閉じ込められ」る。ドアはマグネットで閉じてあるが、小型犬でも鼻や前足で押して開けられるほど軽いものだ。

 飼い主のうち半数は苦しげな声で「助けて」と言い、泣く。残りの半数は、特に感情を込めずに「助けて」といい、その後は『きらきら星』をハミングしている。

 そうして、飼い主の表現している感情によって、犬の「救助行動」に差ができるのかを見るのだ。


How Empathetic Is Your Dog? | ScienceTake
 

約半数の犬が助けるためにやってきた!

 実験の結果、飼い主が泣いている「実験群」では、約半数の犬がドアを開けて救助に来た。

 残りの犬は、ドアの前をウロウロしたり、助けを呼びにでも行ったのか、反対側にある、実験者のいる部屋へ向かったり。

 しかし、飼い主が鼻歌を歌っている「対照群」でも、ほぼ同じ数の犬がドアを開けて小部屋に入ってきたのである。

4

image credit: YouTube


 数だけを見れば、飼い主の精神状態による差は見受けられない。だが、「飼い主が泣いてようと歌ってようと犬にとっては関係ない」と結論付けるのは早計だ。そこにはやはり差があったのである。

 ドアを開けるまでに要した時間に注目すると、実験群の犬が泣いている飼い主を助けようとドアを開けるのは、対照群の犬がドアを開けるより3倍早かったのだ。

1

image credit: YouTube

 

助けに来なかったのは気が動転しすぎていたから

 また、実験者たちは犬に心拍計をつけ、ストレス状態を記録した。この記録から興味深い発見があったのである。

 実験群においては、ドアを開けなかった犬は、助けに行った犬より高いストレス状態を示したのだ。つまり、飼い主を気にしなかったのではなく、気が動転しすぎて救助行動を起こせなかったのではないか、と論文では述べられている。

 救助行動を起こさず、ストレスレベルも低いままの犬もいたが、これは飼い主の状態について十分な情報が得られなかったためだと考えられる。飼い主は、無意識に情報を与えないよう、手を隠し、目線は犬の目より少し上におくよう指示されていたのだ。

3

image credit: YouTube


 また、対照群においては、ドアを開けたか否かとストレスレベルに関係性は見受けられなかった。従って、ドアを開けた犬の動機は好奇心、または社会的接触への欲求だったのではないかと考察されている。

 なお、実験では、犬種と救助行動の間には何の関係も見られなかったそうだ。どのような犬が飼い主を助けに来るのか、という点についてはこの実験からはわからない。

2

image credit: YouTube

 

コリーの行動にインスパイアされた実験

 論文の主著者は、ジョンズ・ホプキンス大学の心理学・脳科学デパートメントで学ぶ、大学院生のエミリー・M・サンフォードさん。共著者として、学部時代の恩師であり、現在はリポン大学で教鞭をとるジュリア・E・マイヤーズ=マナー博士。

 この実験は、マイヤーズ=マナー博士の体験にインスパイアされたものだ。ある日、博士は子どもたちにクッションの山に埋められてしまった。助けを呼んでも夫は知らん顔だったが、飼っているコリー犬が瞬時に駆けつけ、掘り出してくれたのである。

5

image credit: YouTube

 

やはり犬は人間の親友だった

 「犬を飼っている人なら、犬は人間の感情を感じ取ることができると言うでしょう。この実験結果は、その説を補強します」とサンフォードさん。

 「また、飼い主が困難に陥っていることを察知した犬が行動を起こすであろうことも示しています。ラッシーのように」

 もっとも、ドラマ内では、井戸に落ちたのはティミー少年ではなくラッシーの方なのだそうだ。

References: Johns Hopkins University / "Timmy’s in the well: Empathy and prosocial helping in dogs" / New York Times など / written by K.Y.K. / edited by parumo
 
おまけ