☆心中常感謝無忘☆ -11ページ目

背中越しの愛 30

アタシはその人にお辞儀をして、
動き始めた江夏さんの後をついて行った。



―――カランカラン…


「…で。家どこ?」


江夏さんが、扉を開閉する時の鈴がなり終えた後に聞いた。


「あ…この海沿いに左に進んでもらって、三つ目の角を曲がった所です」

「結構遠いのな。
ほら、乗れ」


お店の脇に止めてあったバイクにエンジンをかけて、江夏さんがヘルメットを渡す。


「え…」

「俺、バイクしかねぇし。
こっちの方が早いだろ」


江夏さんはバイクにまたがってハンドルに手をかけた。


「早く乗れよ」

「は、はいっ」


アタシはヘルメットをかぶって、後ろに乗った。

…けど、どこ持てば良いんだろ。


服?
サドル?


アタシが手をわたわたさせてると、江夏さんがフッ、と笑った。


「腰。手回してて良いから」


そう言って、前を向いた。


―――初対面の人の腰に手を回しても良いんだろうか?

いや、相手が良いって言ってるんだし…ね。

アタシは江夏さんの腰に手を回した。

背中越しの愛 ②⑨

家も近いわけだし、帰り道も解るし。

倒れてしまった面倒を見てもらったんだから…最後まで迷惑はかけれない。


アタシは丁寧に断った。



「…あのなあ?
じゃあそうですか、って帰せるワケねぇだろ?」


「いや、でも…」

本当に家は近いし―――…


「お前に拒否権無し。俺が好きで送ってくから。
ほら、来い」



そう、江夏さんはアタシに言った。

…確かにこれじゃアタシは何も言えないけど…

最初から…最後まで迷惑かけっぱなしだな…

また今度来て、お礼しなきゃ…



さかさかと歩く江夏さんの後ろを着いて行くと、一人の男性が声をかけてきた。

「体、もう大丈夫?
女の子なんだから、無理しちゃ駄目だよ、ね?」

金のふわふわの髪に、赤いピアス。

だけど、柔らかく暖かい雰囲気が出ていた。

「はい…ご迷惑かけてすみませんでした。

ありがとうございました」


「いえいえ、又店に来てくれたら許してあげるから☆

また、ね」


その人は笑顔でアタシに手を振った。

背中越しの愛 ②⑧

確かに…江夏さんは、バーテンダーとかホストをやっててもおかしくない…。


「あの…ここ、どこのバーなんでしょうか…?」


「ここか?アンタが倒れた場所のすぐ傍だよ。
知らねえ?【SEA MUSIC】って店」



【SEA MUSIC】……

そういえば、聞いた事ある。


アタシの家からは少しだけ遠いけど、

あの海や、商店街からは結構近い。


喫茶店のようなレンガづくりに、張り巡らされたツル…
そこにある、下へ続く階段からバーへ繋がっている。


【SEA MUSIC】の周りの皆の評判は良い。


アタシは行った事無かったが…雰囲気と良い、なんとなく皆が良いっていう理由が解る。


「知ってます…来た事は無いですけど、皆が良いって言ってるんで、評判はきいてます」

「え、マジか?

…まあ、剛士だろうけどな…」



剛士?
ここの人…かな?


「とりあえず、送ってくわ。家、どの辺?」

江夏さんは立ち上がって上着を着る。


「大丈夫ですよ。ありがとうございます。」