青年弁護士が地下組織パーティーにメスを入れる!大映東京「黒の挑戦者」田宮二郎/久保菜穂子 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんばんは。
 
 
休み三日目の夜中です。考えてみれば早いもので明日から7月…今年もあと半年です。加齢と共に日々の経過が早く感じられる様になり、ダラダラと過ごしていると何時の間にか夕方なんて事もザラ!もっと時間を有効に・有意義にと思ってはいても俺を含めて中々そうはならないものなのでしょうね、このダラダラ感は決して嫌いではありませんし魔力でもあればこの様に過ごしなさいと天から言われているのかとも思います。こんな時間には好きな映画を鑑賞したり読書をしたりが今の俺には一番の余暇の使い方、ここに酒が有れば言う事無しです!
 
 
さて本日は此方の作品を…DVD化作品で有料動画配信は行われていません。去年の晩秋に衛星劇場でこのシリーズの特集放映が行われた際に鑑賞しました。田宮二郎は元々好きな俳優ですが、未鑑賞の作品に出逢えば出逢う程その魅力と守備範囲の広さに引き込まれてしまいます。余談ですが、籍を置く会社も違えば共演経験も皆無(もし間違いの場合はご容赦下さい)ながら何かの切欠で出逢いウマが合うと友人付き合いをしていたのは梅宮辰夫で「ジロー・タツと呼び合う仲で多忙な中でも結構な頻度で飲んでいた」とか(辰ちゃんが御逝去の日に発刊された自著より)。
 
 
「黒の挑戦者」(「黒シリーズ」第八弾)昭和39年4月4日公開・島田一男原作・松浦健郎/石松愛弘の共同脚本・村山三男監督・大映東京制作。
 
 

 

 

或る夜、窮地に追い込まれた様な女の電話を受けた青年弁護士の田宮二郎が指定された電話ボックスに出向くと、若い女性が息絶えていた上に医師からは異常妊娠していると告げられます。しかも翌日、或るホテルで「人影の無い殺人か傷害と思われる事件」に遭遇し、捜査担当刑事で田宮さんとは昵懇の山茶花究とは別の視点から前夜電話をかけてきた女性との関連を独自に調べる事としたのです、遺留品のパーティー券を手掛かりに…そして田宮さんが目にしたパーティーとは、金を持て余している富裕層が人間競馬に大金を賭ける地下組織そのものの様相!しかも女体と薬物にも塗れた市井とは掛離れた世界かつ、このパーティーに参加していた田宮さんの顔見知りの女給頭が何者かに殺害される事件も起きたのです。田宮さんは証拠を掴もうとこの時出逢った会場のホテルの女将である久保菜穂子に接近し焦臭さを感じながらも決定打が見出せなかった上に、顧問弁護士を務める会社の社長・見明凡太郎にも疑惑の目を向ける事となり…

 

 

 
 
複数存在する田宮さんが出演された代表シリーズの一つ「犬シリーズ」の主人公が拳銃を捨て身形を整えて、頭脳明瞭さを武器に市井の視点で善良な市民を容易に巻き込みかねない巨悪に闘いを挑んだ様な趣で、これは大企業の開発競争を描いた「黒の試走車(テストカー)」等々とはまた別の趣を持った見応えのある作品。映像作品、特に現在進行型や史実を描く内容となれば「現実には目の当たりにするのが難しい、市井が観たがっている題材」「教科書や報道では解り得ない事の真意や切欠」「身近に暗躍かつ巻き込まれる恐れの高い現実を注意喚起の意図で構成出来る題材」この三つの手法が最も有効なのかと思いますが、当作品は三つ目に当ります。高度経済成長・所得倍増計画等々と言われ見た目にはいい事だらけでしたが現実は富裕層と貧困層の両極端で中間層が非常に少ない現実(これは現在に至る迄全く変わらぬ…いや、悪化の一方でしょう)。その市井に「富裕層の呆れんばかりの醜態と下層達を人間とも思わぬ心根を見せる事で鬱憤を晴らさせ関わり合う事を極力回避する事」「襤褸は着ていても心は錦・清貧等々の本意と豊かさ」を同時に教えている様に感じます。
 
 
この時期「どぶ板街の現実を細部迄見せる作品群は新東宝・東映・松竹、若年層の現代感覚を時には爽やかに時には激しく見せる作品群は日活、華々しい世界の裏側の醜態を暴き出す作品群は大映」の構図だった様に私感ながら思っていますが(但し前述の通りでは無く各社が他社の得意分野に挑戦した作品も少なからず存在はしています)何方にしても戦後の日本史を知る上では観続け伝え続けるべき作品群ですし、日常で必要不可欠(又は現代だからこそ思い返し再び世に知らしめるべき)物事を沢山教えてくれる教育映像群とも言えます。