志を捨てぬ無芸大食人畜無害の若者の周囲には…日活「元祖大四畳半大物語」曽根中生/松本零士監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。
 
 
昨日21時に勤務を終え、月曜日11時の始業時迄の休みです。全国的に暖かくなった週の中盤の秋田市内も信じられぬ程の陽気で業務中は汗ばむ程でしたが、昨日からは平年通りに…しかし気の早い方が居られるもので、数日前の出勤途中に既に夏タイヤに交換されている方が!恐らく市内のみの短距離移動が主体かつ、積雪凍結時は徒歩や公共交通機関で用が為せるから可能なのだと思います、俺の様な山間部への通勤者は4月上旬迄は油断出来ません。
 
 
さて本日は此方の作品を…昨年御逝去された松本零士の原作漫画を共同の形態ながら松本先生も監督として腕を振るわれた作品です。この場を借りて松本先生のご冥福をお祈り致します。DVD化作品でAmazonプライムビデオ(NECOプラス対象作品)内に於いて有料動画配信が行われています。尚、東映chに於いて本日以降、2/23(金)17:00~19:00・3/13(水)13:00~15:00・3/24(日)11:00~12:50の三回放映されます(HD放映)。
 
 
「元祖大四畳半大物語」昭和55年8月16日公開・松本零士原作・熊谷禄朗/曽根中生の共同脚本・曽根中生/松本零士の共同監督・日活制作。主題歌は加藤登紀子。
 
 

 

 

 

 

「先ずは稼いで金を貯めて、頃合いを観て予備校に通い大学へ…」との志を描いて九州から上京した山口洋司が辿り着いたのは認知気味の若宮大佑・守銭奴の原泉夫妻が営む全室四畳半・共同便所・風呂無しの古いアパート。しかも家賃は前払いだった上に内定を受けていた会社が経営破綻・夜逃げしていた為に初っぱなから一文無しかつ食えぬ生活に転落!しかし逆境にもめげずに数々のアルバイトを熟す姿は原さんに言わせれば「何れ大物となる!」向かいの部屋に住むチンピラの前川清とその情婦である篠ひろ子・隣室に越して来たオカマのラビット関根(現・関根勤)とは騒動になる事もあるものの基本的には良好な関係、そして林ゆたかが営む電気店では解雇されながらもその妹の松本ちえこを相手に童貞喪失を遂げ、建設現場のガッツ石松は何かと目をかけ、中華料理屋の主の左古田一平は盃を交しながら失敗を恐れぬ事を教えてくれる等々、金や物には恵まれなくても人徳から飲み食い・性交・人間関係に恵まれた日々。そんな中、前川さんが山口さんに預けた或る物が前川さんの表向きの印象をガラリと変えさせる切欠となり…
 
 
 

 
 
ロマンポルノ時代の日活が繁忙期に制作していた一般映画群の一つですが、世間の底辺の視点を知り尽くしている上に全裸で心情を表現させる制作陣だからこそ、原作の世界観とは若干異なる雰囲気を持ちながらも人情が染み渡る様な一作に仕上がったのではないかと感じます。只、これは俺の現状及び過去が当作品に対する感想を押し上げているのも事実…と云うのも学生時代は下宿・過去の勤務先では社員寮に住み、現在はアパートですが隣に大家一家が居住し家賃は直接支払い・水場と収納を備えた六畳一間で風呂/便所/洗濯機共用。ですから住人同士気が合う・合わないはあっても協力・我慢・譲り合い・気遣い等々は一軒家や他の集合住宅以上に意識しなければなりません。そんな不便があってもそれを補い切れぬ程の得、例えば家賃の安さや挨拶一つから生まれる人間関係等々がこの手の住居形態にはあります。そして「女に好かれる・目をかけて貰える・見捨てられぬ等々には根拠が存在する。姿形は無関係」と、表向きだけを気にかける男の子が増え続ける現状に対し野郎らしさを教える一面もあり!
 
 
本来ならばこの世界観がもっと評価されてもいい筈なのですが、嗜好判断は各々とは云え我国は「娯楽より文芸を良しとする評論家や識者等々の評価に右へ倣えとなる方々が多い現実」しかも現在とは違い、市井の映像作品ファンが感想を述べる場所が僅かであった当時の状況では残念ながらこの良さは口コミでもそうは広がらなかったでしょう。そして余りにも個人主義が染み付いてしまった我国の現状を考えても高評価は得難いでしょう。しかし共同運命隊や向こう三軒両隣等々の感覚を実感出来る生活を数年間でも経験すれば人生経験に於いて大きな財産となる事実を当作品は身を以て教えてくれています。しかし、坂田金太郎・深見博が前川さんを付け狙うチンピラコンビとして見せた芝居は日活「嗚呼!!花の応援団シリーズ」での競演を思い起こさせる面白さがありますし、終盤で山口さんに自らの恥ずかしい写真を手渡した際「こんなモノ貰ったらおいどん夜な夜な消耗してしまう」と言われ「いいわ、どんどん死んで!あたしの為に死んでくれるんだから手でも口でも何でも貸してあげる!」と返答した「杜の都・仙台を代表する美人女優の筆頭」ひろ子さんの台詞は倅が反応する事間違い無し!脱いではいませんが下着姿とあの口元だけで淫靡さを際立させています。
 
 
尚、当作品の併映で「新進気鋭のモトクロスレーサーの成長と挫折・再挑戦」を描いた小澤啓一監督・石田純一/熊谷美由紀(現・松田美由紀)主演(主題歌はこの後当時の熊谷さんと婚姻を果たす松田優作)の「鉄騎兵、跳んだ」も出来のいい作品です。VHS化はされましたがDVD化はされておらず、此方もAmazonプライムビデオ(NECOプラス対象作品)内に於いて有料動画配信が行われています。