作品の元となった「大群獣ネズラ」の詳細は此方から。
太映(タイエイ。モデルは大映)のナガノ社長(モデルは永田雅一。螢雪次朗)は他社に於ける怪獣映画のヒットを受け、自社でもこの類に参入しようと決断した際「着ぐるみではなく本物の動物を使って…」との提案を受け入れ「本物のネズミを使ってミニチュアを破壊させ、或る食物により巨大化したネズミが人間社会を壊滅させる作品」を企画。しかも「実験用のネズミでは獰猛さに欠ける」と繁華街のドブネズミを捕獲するだけに留まらず、一匹50円で買い上げる為のトラックを住宅地に走らせたり…しかしいざ撮影に入るとネズミ達は望み通りの動きをしてくれぬ上に撮影所はシラミやノミとの格闘、そして管理の杜撰さから撮影所近隣に脱走したりして遂には住民運動に発展!そこで螢さんは制作中止を決断し保健所の指導に従いネズミ達を焼却処分する羽目に…
様々な事情を考えると制作中止となったのはやむを得ないですが、二番煎じを回避しようとこれ迄に無い思考と撮影技法を考察した姿勢は大いに買いますし、右へ倣えかつ視聴者側・観客側を刺激せぬ様下に下に向かう一方の現代の大多数の映像業界の関係者に対する警笛・苦言も含まれている様に感じました「世間を恐れずもっと挑戦しろ!対等なのだから」と。そしてこの思いは制作側・出演者側に加え、クラウドファンディングに参加した個人・法人も同じだってのではないかとも…又、抗議運動の先頭に立った主婦役のマッハ文朱が「今回の騒動は看過出来ぬ為に行動したが、太映は素晴らしい作品を沢山制作しているしあたしも好き。だからこれにめげずに今後も良質な作品を制作して欲しい」と非難一辺倒で終結させない良識振りは何でもかんでも非難が正義と勘違いしている連中の目を覚まさせる効果が幾分かは有りそうですし(効かない可能性も高いかもなぁ…)世論を敵に回しては商売上がったりと制作中止を決断した直後体調不良で寝込んだ螢さんが終盤でネズミ花火の特性を目にして新たな怪獣作品のヒントを得、それが「ガメラシリーズ」に繋がったと云う実話(と何処かで読み聞きした記憶がありますが…もし誤りの場合はご容赦下さい)も加えられ「ネズラに賭けた情熱は後に生きた事」がせめてもの救いです。尚「ネズミの買い取り」は当時の衛生状況や紙幣価値を考えれば案外歓迎されたでしょうし、観客目線と市民目線を同時に満たそうとした姿勢は後にも先にも前例が無いのでは?