皆様、こんにちは。
休み二日目、初春らしさがが目でも身体でも解る安定した天気の秋田市内です。前職であればこの時期夏タイヤへの交換を行っていましたが、現職は峠を越えた山間部に所在している為、日中の雪解けが夜に凍結する事も多々…しかも明日からは一時的に夜勤ですので来月中旬頃迄は油断が出来ません。
さて本日は、最近発売された「警視庁物語シリーズDVD-BOX」未収録で、東映chに於いても原盤不良を理由に今月迄放映されていなかった貴重な作品を紹介します。
「警視庁物語・謎の赤電話」(「警視庁物語シリーズ」第十八弾)昭和37年6月24日公開・長谷川公之脚本・島津昇一監督・東映東京制作。
先述の通り未DVD作品で有料動画配信も行われてはいませんが、東映chに於いて今月に引き続き来月も放映されます。放映日時は4/3(日)16:00~17:30・4/22(金)13:30~15:00の二回です(字幕付きHD放映)。
一人娘を案じ過ぎて警察への通報が遅れた上に報道機関の加熱取材と報道が原因で殺害と云う最悪の結末を迎えた女児誘拐殺人事件…如何なる理由や妨害行為が在ったとしても我々の敗北・黒星には違いないと一切言い訳をせず実行犯検挙に強い意志で臨む事を肝に銘じた捜査責任者の神田隆を初めとする捜査陣の面々に飛び込んで来たのは新たな男児誘拐事件!しかも男児の両親である伊沢一郎・風見章子は愛息子の身を案じて独自の解決の目論んでいたものの、同じく実弟の身を案じて警察に任せるのが一番と考えた姉の水上竜子は秘密裏に所轄署を訪れ発覚したのです。
実行犯検挙が目的ながらも自らが被害男児と近い年齢の息子を持つ神田さんは似た立場である事を伊沢さん達に伝え、心で警察に捜査を任せて貰える様に願い出て受け入れられます。そして報道協定が結ばれ、日本電信電話公社の協力と伊沢さんの同意を得て電話の逆探知体制も整い臨む背水の陣…同時に「先の誘拐殺人事件との関連性」「何故伊沢さんの長男が誘拐されたのか」等々が並行して調べられ「学歴偏重主義に躍らされ大学卒と云う学歴に惑わされた地方出身の青年の苦悩」が実行犯像として浮かび上がって来ます。
「心で訴え心で理解し、被害男児の両親の意を汲んだ上で別な手法で捜査を続行する神田さんの人間性」が全般に染み渡っている上、高度経済成長と云う美名に隠された学歴偏重主義の弊害を誘拐事件に絡めて巧く纏め上げられているのがいい!当方の記事では何度も書いていますが、余りにも推理展開やトリックに時間をかけ過ぎる上に視聴者の感情移入をとことん迄求めようとして「被害者が悪人で実行犯が善人」と云う構図に安易に走る現代の手法には、少なくとも俺は食傷!此れ等の描写を最小限に留め、主旋律である事件発生から犯人検挙迄の道筋を地味でも淡々と見せる手法の方が単純明快かつ静かな迫力を生み出しますし「如何なる事情が存在していても悪は悪・情状酌量の余地は在っても罪は罪として裁かれる事実を淡々と演出する方」が遙かに力量を求められます。更に観る側にもじわりじわりと伝わる分印象深い作品として記憶にも留まり易いでしょうし、人生の教科書としての意味もより高い物になるだろうと…
そして当作品は「昭和35年に発生した、過熱報道が最悪の結末に至った理由の一つとなった為、後に報道協定が結ばれる切欠となった誘拐殺人事件」「昭和38年に発生した、それ迄個々の秘密の漏洩に当たると頑なに拒否をしていた当時の電電公社が人命尊重第一と考えを転換し初めて逆探知を認め実行した誘拐殺人事件」のほぼ中間の時期に制作された作品である事が興味深い…前者・後者共に作品内で描かれているのですが、後者は「後には必ずこうなる・必ずこうなって欲しいとの願いを込めた演出なのか?将又警察庁と電電公社の間で逆探知に関して何らかの話し合いが持たれている時期に、それを先取りして人命尊重第一を強く訴える為に敢えて加味した演出なのか?」と勘繰ってしまいました。