廃坑街に輝く前向きな若者達であったが…日活「太陽が大好き」浜田光夫/太田雅子・若杉光夫監督 | 東映バカの部屋

東映バカの部屋

東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

昨日の20時に勤務を終え、月曜日11時の始業時迄の休みです。例年の1月と比べるとかなり過ごし易く、この暖かさで少しでも融雪になる事を祈り雪寄せは休もうかと思っています。仕事始めは社内の設備移設工事の関係で非常に楽でしたが、その皺寄せは明日から一気に返って来ます。

 

 

 

さて、梶芽衣子・著「真実」には「福島県内で一ヶ月間に渡る撮影を行ったいい作品で(本日紹介の作品に関して感想等々を書かれている方々の記述を読むと、猪苗代町周辺で撮影が行われていたそうです。尚、当地を走っていたものの当作品公開の数年後に廃止された磐梯急行電鉄=日本硫黄沼尻鉄道が観られる貴重な作品であるとも)浜田光夫と共演させて貰い、完成後には粗編集したオールラッシュの試写会を地元の映画館を借りて行ったものの「我社のスターを最後に殺すとは何事か!」と堀九作・日活社長以上の影響力を持っていた名物専務の逆鱗に触れてしまい結末が撮り直しに…その結末が全く面白くないと感じたわたしはたまたまその専務と逢った機会に「浜田さん、亡くなった方がずっと余韻が残りましたよね!」と言ったら、勿論の事ではあったが「新人が誰に向かってモノを言っているんだ!」と激怒された」との記述が(KINENOTE等々に書かれている作品詳細は浜田さんが殺害された事になっています。初稿の段階での青図をそのまま掲載していたのか?)。自分の意思をはっきりと伝える性格・姿勢が自身を高め磨く上でも好転したのでしょうし、基本的に妥協しない梶さんらしい回想です。又「野良猫ロック」「銀蝶」「女囚さそり」等々のシリーズに主演し現在でも新たなファン層を獲得する程の人気を得ているのは真摯な姿勢に加えて鋼の信条を貫く梶さんでなければ成立しない役柄だったとも言えます(「さそり」はこの後数多くの女優が演じてはいますしいい芝居を見せた方も居られますがやはり梶さんは超えられませんでした。東映Vシネマ版の岡本夏生が最も梶さんの芝居を吸収していたか?)。

 

 

その作品が先月よりAmazonプライムビデオ内に於いて有料動画配信が開始されています(Amazonプライム会員特典対象)。黒澤明作品で助監督を務めた経験を持ちながらも通称「赤狩り」で大映を退社した「ガラスの中の少女(吉永小百合版)」「風立ちぬ」でお馴染みの若杉光夫監督らしさが全般に漂いますが娯楽性も豊か…後ろ向き?腰を上げない?そんな男性群を奮起させる前向きさを梶さんとその姿を温かく見守る芦川いずみが見せています。特に梶さんは「私利私欲の為なら手段を選ばぬ極悪人の様相を、明るい将来を手に入れ野郎共を奮起させる為ならば損得勘定を絡めて手段を選ばぬ定時制高校に通う学生」に変え生き生きと演じており、これが「作品全般に漂う悲壮感と左寄りの雰囲気を相当に緩和している」とも…

 

 

 

「太陽が大好き」昭和41年6月11日公開・森山啓原作・原源一脚色・若杉光夫監督・日活制作。

 

 

 

 

 

閉山反対運動の際に労働組合が分裂を起こした為に失敗してしまった鉱山街…多くの仲間達が別な炭鉱街に移住し廃れる工夫社宅に居座る続ける鈴木瑞穂・浜田光夫親子と大森義夫・垂水悟郎・太田雅子(=梶芽衣子。以下は梶さんと表記します)親子…無職のままの大森さん・垂水さんを食べさせながら将来を見据えて定時制高校に通いながら少しでも多くの収入を得ようと職を転々とする梶さんに惚れていた浜田さんは「俺は炭鉱夫しか出来ない!」と考えていたものの梶さんに「明日を信じなければ進歩も発展も無いわ!」と言われた事で奮起し、信欣三が社長を務め梶さん親子と昵懇の芦川いずみが勤務する染色工場への就職を果たします。しかしこれを面白く思っていないのは鈴木さんで、福島に浜田さんを残し別の炭鉱への出発前夜に取った行動が結末の悲劇の序章となり…

 

 

 

 

梶さん・芦川さんが「芯の強い優しさ」を貫いている上にその姿勢に影響され変わっていく男性群と云う構図の為、恋愛要素も強いものの甘ったるさは微塵も無い作品。皆様もご存じの通り、石炭に代表される安価な輸入資源に押され規模縮小・閉山が続出し高度経済成長の影で泣いていた現実に巧く若者感情を絡めているなぁと感じます。又「我国の古典的な職業概念を浜田さん、諸外国の職業概念を梶さんが受け持っている。その上で人間が食う為には固定概念が邪魔をする事も在り、時には親子離れ離れになったとしても決断を下さなければならぬ事も在る」と、確かに作品は左寄りの姿勢ではあるものの、身になる現実を教えてくれているのは美点。

 

 

そして「明るく前向きな梶さんの芝居を得て、浜田さんも非常にいい雰囲気を見せている」と…当時は吉永小百合との共演が圧倒的に多かった上に人気も絶大で二人が顔を合わせなかった日は無いと言われていたとか。しかし、和泉雅子と共演した「非行少女」でも感じましたが、吉永さんとの共演作品での役柄設定に飽き飽きしていたのではないかと思う程水を得た魚の様な感。これは加山雄三等々でも言える事ですし、多くの役者達が発言している「善良な役ばかりの時代は本当につまらなかった」と言うのは全く以て本心なのだろうなぁ。

 

 

尚「西部警察パートⅠ/パートⅡ(途中迄)」の二宮係長でお馴染み、当作品の撮影地である福島のお隣の山形出身の庄司永健も短時間ですが出演しています。