謹賀新年・日蔭に廻った侠客の行く末は?東映京都「任侠列伝・男」鶴田浩二/高倉健・山下耕作監督 | 東映バカの部屋

東映バカの部屋

東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、新年明けましておめでとうございます。

 

 

昨年も多くの方々に足を運んで頂き、また多くのコメントを頂戴し有難うございました。昨年の締めの記事にも書きましたが今年は東映以外の作品の紹介を増やす予定です。しかし、嗜好性と方向性は従来のまま…今年こそ娯楽性を最優先して考える映画ファンが一挙に増える事を信じて、ボンクラ野郎好みのバイオレンス作品や大馬鹿作品、ポルノ/ピンク作品、そして時代劇等々を前面に出して紹介していく予定ですので何卒変わらぬお付き合いをお願い致します。

 

 

年末年始は親類宅への弔問の他は酒飲みで終わりました。幸いにして秋田市内・盛岡市内共に一回限りの雪寄せで済みましたし…そして昨日は箱根駅伝を横目で観戦しながら実家の主要居室の照明をLEDに交換。随分と明るくなったと両親は大喜びでした(でも金を出したのは交換したいと言い出した父親)。でも、毎年箱根駅伝を見ていると、駒澤大学の大八木監督が監督車から「男だろ!」と檄を飛ばす様子。これを聞くと毎年口開け鑑賞したくなる作品が俺には在ります。以前も紹介している作品ですが改めて記事化します。

 

 

 

「任侠列伝・男」昭和46年12月3日公開・笠原和夫脚本・山下耕作監督・東映京都制作。

 

 

未DVD化作品で、DMM.com/GYAO!ストア/ビデオマーケット/iTunes/Amazonプライムビデオ/YouTubeムービー内に於いて有料動画配信が行われています。

 

 

 

 

 

 

昭和46年7月発売の鶴田浩二が歌唱する「男」を作品化しており、大ヒット曲「傷だらけの人生」と同じ作詞・藤田まさと/作曲・吉田正の顔合わせ。しかもYouTubeに動画をアップされている方のコメントを読むとオリコンで最高位9位とのことですから相当に知られている曲です。しかし現代では「男」と聞いて思い出すのは鶴田のおやっさんよりも久宝留理子の方が多いかも、それと志賀勝。

 

 

 

 

先代親分・内田朝雄は鶴田のおやっさんを跡目に考えていたものの、内田さんの愛娘で鶴田のおやっさんが惚れていた桜町弘子を女にしたのが兄弟分の菅原謙次と知り、或る騒動の解決の為に単身敵対組織に殴り込んで服役します。更に内田さんの兄弟分の遠藤辰雄(=遠藤太津朗)は「跡目に関する遺言が無かった」と服役中の鶴田のおやっさんとの面会の際に伝えると「俺の前ではっきりと菅原さんを跡目に据えると言っていた。貴方は貫禄不十分と言うがそんな事は無い」と…数年後、鶴田のおやっさんが満期で出所すると、一見順風万端に見えるものの組織内には焦臭い雰囲気。後日、鶴田のおやっさんと昵懇だった弟分でヤクザの足を洗った藤山寛美、そして内田さんを筋を貫いた侠客と一目置いていた博徒の親分である水島道太郎の話及び、菅原さんを操り人形の様に扱うエンタツさんの様子から焦臭さは現実と解ったばかりか悪化の一途を辿り…

 

 

 

 

先述の主線に「長門裕之・藤純子(=富司純子)及び高倉健・北林早苗の兄弟愛」「鶴田のおやっさん・純子姐御及び伊吹吾郎・北林さんの相思相愛」「盃の有無を超えた鶴田のおやっさんと健さん・長門さん・水島さん等々との男の関係」が交えられますし、エンタツさんに従い組織内を内部から食い荒らす面々には天津敏・八名信夫・汐路章・曽根晴美が配され悪役好きには文句なしの顔触れ!逆に毎度善人を苦しめる印象が強い林彰太郎が善側に配されているのもボンクラ野郎に取っては嬉しい(実際には林さんは善側に配されている事も多いのですが)。

 

 

 

 

内容としては「手法を変えた博奕打ち・総長賭博の趣」となるか…しかしこの作品に関しては笠原先生は「山下将軍とはこれが最後の仕事。任侠ものの流れが浮かばなくなっていた為、もう書けない・もう降りたいと言ったものの「俺が何とかするから。こう云うのはどうだ等々と」…山下将軍の友情を感じながら何とか書き上げたがこの作品は山下将軍が作った様なもの」と自著内でお話をされています(一部を抜粋しました)。それでも(当作品公開当時は任侠作品群の勢いが落ちていたとは云え)東映任侠映画群が熟成・完遂の域に入っていた時期の作品だけあり見方によっては「総長賭博」の評価をも超えてしまうのではと思う程の大傑作に仕上がっています。特に全体の2/3を超えてから健さんが登場するのですが、そこからの流れは複雑だった人間関係や心情等々が一挙に纏まりを見せ始め、殴り込みの直前で「待ってました!」と言いたがる東映ファンの期待に存分に応える盛り上がりが用意されており、そこに鶴田のおやっさんが歌唱する「男」が見事に嵌まる!趣味嗜好等々は人夫々ではありますが、もし興味を持たれたならば課金をしてでも鑑賞して欲しい一作!その価値は十二分に在ります!

 

 

 

 

何度か書いてはいる事ですが、この様な時代だからこそ地上波や通常BS波を通じて東映任侠映画を是非共放送して欲しい物…今年の年始はBS12が本日から1/7(金)19:00より「昭和残侠伝」五作品を選り抜きで放映してくれますが他局ももっと積極的になって欲しいもの!「反社会的勢力等々を美化している作品は…」等々の意見もよく耳にしますしそれはそれでも構いません。しかし「映像作品は娯楽であり、楽しいか面白ければそれでいい。その上で何かを考えさせたり教えたりしていれば尚良し」が俺の考え方ですし「我々堅気が筋の通った侠客・極道から学び生かすべき物事は無数にある」これは周知の事実と思っています。

 

 

最後に国書刊行会から発刊された一冊を…\4.800-+消費税と少々値が張る物の、任侠映画好きにはたまらない、そしてこれから任侠映画を鑑賞しようと考えている方々にもお薦めです!